• ● 一連の交戦では機関銃や携行式ロケット弾が使用され、ファタハのメンバー1人が死亡し、他に7人が負傷した

ナジャ・フーサリ

ベイルート：2日、レバノン最大のパレスチナ難民キャンプであるアイン・アル・ヒルウェに不穏な静けさが戻った。前の夜、ファタハ運動とその対抗組織アスバト・アル・アンサールの間で激しい武装衝突が発生していた。

一連の交戦では機関銃や携行式ロケット弾が使用され、ファタハのメンバー1人が死亡し、他に7人が負傷した。

このキャンプに隣接する沿岸都市シドンでも銃声が聞こえた。

アイン・アル・ヒルウェのパレスチナ治安当局者であるガッサン・アユーブ氏はアラブニュースに対し次のように語った。「最初は単発の喧嘩だったが、突然衝突に発展したため、キャンプ内のパレスチナ部隊が封じ込めに動いている」

キャンプ内が一触即発の緊張状態であるため、犠牲者はまだ埋葬されていないという。

治安当局によると、衝突が発生したのは1日夜、いくつかある地区の一つにおいてファタハのメンバーらの間で口論が起こり負傷者が出た後のことだった。

負傷者をキャンプ内の病院に搬送していたファタハのメンバーらが、アル・サフサフ（アスバト・アル・アンサールが支配する地区）の入り口にあるアル・シュハダ・モスクの前を通った。

このモスクの守衛が彼らに発砲し、ファタハのメンバー1人が負傷した。同組織のメンバーらも応戦し、衝突は夜を通してエスカレートした。

負傷したマフムード・ズバイダット氏は2日早朝に死亡した。彼の死が発表されると彼の兄弟が空に向かって発砲し、それをきっかけにパレスチナ部隊が平穏回復のための行動を開始した。

2日、キャンプ内にある国連パレスチナ難民救済事業機関（UNRWA）が運営する学校は生徒を守るために閉鎖された。衝突は車などにも物的損害を与えた。

キャンプ内にあるニダア・アル・インサン病院は声明の中で、中程度から重度の負傷者7人を治療したと発表した。うち1人は手術が必要だったという。
 
独立系議員のアブドゥル・ラフマン・アル・ビズリ氏は、今回の武装衝突は「住民・市民の安全・安心を脅かし、パレスチナの大義を傷つけた」と非難した。

続けて次のように述べた。「地域における市民の平和と安定を害するこのような衝突が再び起こることを防ぐために真剣に取り組むべきだ。レバノンは現在直面している危機的かつ例外的な状況を乗り越えるために平和と平穏を必要としているのだからなおさらだ」

また、敵対する各組織に対し、「責任を引き受ける」よう呼びかけた。

さらに、事態を収拾するための会合が開かれているほか、「調査委員会が設置され、責任の所在が明らかにされるとともに状況沈静化に必要な措置が講じられる予定だ」と付け加えた。

アユーブ氏は、レバノンのパレスチナ難民キャンプから傭兵が徴募されウクライナで戦うロシア軍に加わっていると主張する米国のウェブサイト「ザ・メディア・ライン」による報道と、今回の暴力との関連性を否定した。

パレスチナ外務省も、「根拠のないニュース」だとしてこの疑惑を否定した。

同省は次のように付け加えた。「パレスチナの人々には自分たち自身の大義や戦うべき戦いがあり、それ以外の世界の戦争や紛争には関与していない」

レバノンの情報筋は「ザ・メディア・ライン」に対し、「在レバノン・パレスチナ大使館の職員はヒズボラと協力して、ファタハ政治運動内の活動家と連絡を取り、彼らが数百ドルを受け取って徴募されるよう取り計らっている」と話している。

さらに次のように言っている。「レバノンに住んでいるパレスチナ人は、ロシアの組織から350ドルという金額を提示され、ロシアのためにウクライナ紛争に参加する契約に署名している」

「ザ・メディア・ライン」は、「ウクライナの前線に派遣されているパレスチナ人の大多数はアイン・アル・ヒルウェから来ている」と主張したうえで、「徴募されているのはファタハ政治運動やパレスチナ解放人民戦線などの組織のメンバーだ」としている。

2017年にレバノン中央統計局とパレスチナ中央統計局が発表した報告書によると、レバノンのパレスチナ難民キャンプには17万4000人以上のパレスチナ人が住んでいる。

UNRWAによると、シリア内戦勃発後に同国からレバノンに避難したパレスチナ人は2万人に上る。