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大震災で止まった日常 列車で避難生活を送るトルコの家族たち

トルコ地震の被災者のために列車の客車が仮設シェルターとなったイスケンデルン駅で、就寝前に手に消毒液をかけるネヒル・カランさん(13)。(ロイター)
トルコ地震の被災者のために列車の客車が仮設シェルターとなったイスケンデルン駅で、就寝前に手に消毒液をかけるネヒル・カランさん(13)。(ロイター)
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03 Mar 2023 05:03:35 GMT9
03 Mar 2023 05:03:35 GMT9
  • • トゥルキエ当局は、2月の大地震で家を失った150万人以上の人々のために、宿泊施設の確保を急いでいる

アンカラ: サブリェ・カランさん(57)の亡き夫は32年間トルコ国鉄に勤務していた。娘のネヒルさんは幼い頃からよく列車に乗って育った。そして、トルコを襲った大地震で自宅が被害を受けた後、母娘は列車で暮らしている。

ここ18日間、13歳の娘と2つの寝台がある客室に寝泊まりしてきたサブリェさんは、「ここに住むことになるとは想像もしていませんでした」と話す。「普段は列車に乗るのが楽しかったです。でも、今は違います」

約5万人が死亡した2月のトゥルキエ・シリア地震の後、家を失った150万人以上の人々のために、トルコ当局は、宿泊施設の確保を急いでいる。

地震で大きな被害を受けたハタイ県の港湾都市イスケンデルンで、被災者は、テントやコンテナハウス、ホテルのリゾート施設などで避難生活を送っており、中には列車の客車に避難している者もいる。

母娘が住んでいた3階建てのアパートは、壁に亀裂が入るなど軽い被害で済んだが、二人は帰宅を躊躇している。

その後の地震や余震により、脆くなった建物の損傷が進んでおり、当局は多くの建物への立ち入りを危険だと呼びかけている。

イスケンデルン駅では列車は運行しているが、二本の線路は何百人もの被災者を乗せた列車で埋まっている。

サブリェさんやネヒルさんのように、先に入居した被災者は寝台客室を確保した。アラファト・アテスさん(63)とゼリハさん(53)夫妻のように、座席に腰掛けて寝る者もいる。

「ハタイよ、われらが美しき大地よ」と夫婦は嘆いた。「この惨状をどう乗り切ればいいのか分かりません」

別の車両には、ユスフ・クルマさん(20)とアイセル・オズセリクさん(20)が手をつないで座っていた。

婚約者どうしの二人は、最初の地震の後、お互いを探して奔走した。結婚式は延期になりそうだという。「これだけ死者が出ている状況では、とても結婚式は挙げられません」とオズセリクさんは話した。

線路沿いには、人々が客車に乗り込む足場として、脚立や小さなベンチが間隔を空けて置かれている。時折、駅員が線路を横切る被災者に、列車が近づいていることを警告している。

当初、サブリェさんとネヒルさんは、たびたび通過する列車の警笛に驚いていた。「今は親子ともに慣れました」とサブリェさんは話した。サブリェさんは、法律事務所で事務員として勤めている。

列車の窓ほどの幅しかない客室には、わずかな必需品しかないが、寒い夜にはテントより暖かい。

母娘は一日に少なくとも18時間は客室で過ごし、外出するのは、駅周辺を短時間散歩したり、支援団体が提供する朝食や夕食を受け取るのに並ぶ時だけだ。

地震で生活が一変して以来、人付き合いが希薄になり、精神的にも参っているとサブリェさんは言う。2020年に新型コロナで夫を亡くした彼女の喪失感は、震災前から対処に苦しめられていたが、地震で負った心の傷により悪化している。

「とても孤独に感じています」と彼女は言った。「人付き合いや、近所の人たちとコーヒーを飲んでいた時が恋しいです」

母娘は一日おきに2、3時間アパートに戻る。建物の中を慎重に動きつつも、シャワーを浴び、洗濯をし、食料をいくらか持ち帰る。アパートを後にする際に、サブリェさんはお祈りを唱える。

「次戻った時に、アパートが健在でいるかは分かりません」

自治体からアパートの被害は軽微で安全との判断が下された時、二人は震災前と同様に自宅で寝ようとした。しかし、再び揺れを感じると、パニックになり、逃げ出したという。

「特に夜は怖くて家に戻れません」

彼女はいつか自宅に戻れることを頑なに信じており、家財を部屋に置いたままにしている。万が一の揺れに備え、テレビは床に置き、周囲に枕を置いている。

普段は列車や人の出入りが激しい駅だが、今は母娘にとって、複雑な心境で暮らす定住の場となっている。

ロイター 

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