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イラクの大量破壊兵器をめぐる失敗が20年後も米情報機関に影を落とす

米大使館の向かいにあるロシア大使館の外壁に掲げられた大きな横断幕。2023年3月20日、ニコシア。(AFP/ファイル)
米大使館の向かいにあるロシア大使館の外壁に掲げられた大きな横断幕。2023年3月20日、ニコシア。(AFP/ファイル)
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24 Mar 2023 11:03:07 GMT9
24 Mar 2023 11:03:07 GMT9

ワシントン:ジェイソン・クロウ米下院議員は連邦議会議事堂のオフィスに戦争の記念品をいくつか保管している。棚に収められているのは、軍のIDタグ、使用済み迫撃砲弾の尾翼、防弾チョッキに当たった銃弾の破片などだ。

20年前、24歳だったクロウ氏は小隊長として米軍のイラク侵攻に参加していた。小隊のメンバーは、化学兵器から身を守るために軍服の上に着る装備とガスマスクを携帯していた。米軍は、イラク軍が化学兵器を使用する可能性があるという(誤った)信念を抱いていたのだ。

現在のクロウ議員は、米軍と情報機関を監督する委員会に所属している。イラクでの過ちは彼の心に今も生々しく残っている。

コロラド州選出議員である彼は、「あれは人生を変えた経験だったと言っても過言ではない。私は自分の仕事の多くを、その時に作られた人生観を通して見ている」と語った。

イラク戦争の失敗は、米国の諜報機関、そして一つの世代の諜報員や議員たちに深い影響を与えた。米国の情報活動コミュニティーの大規模な再編が促され、CIAは他の諜報機関を監督する役割を失った。そして、アナリストが情報源をより適切に評価し、結論にバイアスが含まれる可能性を問うことができるようにするための改革が行われた。

しかし、イラクの核・生物・化学兵器計画に関して最終的には誤っていた断定を下し、戦争への支持を米国内外で得るために繰り返しそれに言及したことは、米国の情報機関の信頼性に永続的なダメージを与えた。

ブラウン大学の推計によると、イラクにおける20年にわたる紛争で30万人もの民間人が死亡した。米国はイラク戦争と、それに続いたイラクとシリアにおける過激派組織ダーイシュ(米軍が2011年に最初の撤退を行った後に両国に足場を固めた)に対する作戦で、兵士4500人を失い、推定2兆ドルを費やした。

また、米国のイラクに関する断定からは、「大量破壊兵器」という、今でも敵対国と同盟国の両方によって使われているキャッチフレーズが生まれた。(米国の情報機関が正しく予測した)ロシアによるウクライナ侵攻の前にも使われたフレーズだ。

現在国家情報長官を務めるアブリル・ヘインズ氏は声明の中で、情報活動コミュニティーが分析と監視に関する新たな基準を採用したことを明らかにした。

AP通信と公共問題調査センター(NORC)が新たに実施した調査では、米国の成人のうち、政府の情報機関を非常に信頼していると回答したのはたった18%だった。「ある程度」信頼していると答えたのは49%、ほとんど信頼していないと答えたのは31%であった。

2001年9月11日の同時多発テロの直後、ジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)はアフガニスタン侵攻を指示した。同国を支配していたタリバンがアルカイダの指導者オサマ・ビン・ラディン氏を匿っており、アルカイダによる訓練キャンプ運営を許していたからだ。

間もなく、ブッシュ政権はイラクについても警告を発し始めた。同国は長年、中東における米国の利益を脅かしていると見なされていた。

イラクは1980年代に核兵器保有を目指していたことが知られていた。また、1991年の湾岸戦争終結までに化学・生物兵器開発計画を進めていた。そして、それらの計画の詳細を国際査察団(1998年に追い出されたが)から隠していると非難されていた。

2002年に再入国した査察団は兵器製造再開の兆候を発見できなかったが、ブッシュ政権は、サダム・フセイン政権がまだ開発計画について隠していると主張した。

2002年10月に米国の情報機関が発表した評価では、イラクが遠心分離機用のアルミチューブやニジェールからのウランを購入することを検討していたこと、移動式兵器製造施設を建設していること、ドローンを使用して致死性の毒物をばらまくことを計画していること、500トンもの化学兵器を備蓄していることなどが主張された。

米政府関係者の中には、イラク政府関係者がアルカイダの指導者らとつながりをもっていると示唆した者もいた。両者が深く反目し合っているという証拠があるにもかかわらずだ。

侵攻開始後数ヶ月以内に、これらの主張の大半は誤りであることが証明された。備蓄は発見されなかった。その後の検証では、これらの主張は古い情報、間違った前提、無知な情報源と全くのでっち上げの混合に基づいたものだったとされた。

ブッシュ大統領は開戦前、米情報機関による誤った情報を繰り返した。コリン・パウエル国務長官(当時)が2002年2月に国連で行った有名な演説も同様だった。

AP

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