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新政権の行動がイスラエルとアラブ諸国との関係を危うくする 専門家が指摘

2023年3月12日、週次閣議で議長を務めるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(AFP)
2023年3月12日、週次閣議で議長を務めるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(AFP)
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31 Mar 2023 07:03:12 GMT9
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  • 中東研究所主催の討論会の参加者は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が率いる極右政権の最初の3ヶ月は「混沌」としており、その政策は「人種差別的」であると述べた。
  • 連立与党はパレスチナ人の抗議行動を暴力的に弾圧しており、ヨルダン川西岸地区ではイスラエル軍や入植者の襲撃が激化し、100人近くのパレスチナ人が死亡している。

レイ・ハナニア

シカゴ:イスラエルのジャーナリスト、元外交官、政府閣僚らは30日、ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる新連立政権の下でパレスチナ人に向けられた暴力が激化し、イスラエルと近隣のアラブ諸国、特にアブラハム合意に署名した国や署名を検討している国との関係が損なわれているとの見方で一致した。

中東研究所主催の討論会で、パネリストたちは極右政権の最初の3ヶ月は「混沌」としており、その政策は「人種差別的」で「現実から切り離されている 」と述べた。

12月の政権発足以来、連立与党はパレスチナ人の抗議行動を暴力的に弾圧してきた。ヨルダン川西岸一帯で活動家を狙ったイスラエル軍や入植者の襲撃が激化し、100人近くのパレスチナ人が死亡した。

最も暴力的な事件の一つは、2月27日にパレスチナのフワラ村で起きた襲撃事件で、あるイスラエルのパネリストはこれを「ポグロム」(特定の民族を組織的に虐殺することを表す言葉)と表現した。

武装した入植者たちが、前日のパレスチナ人によるイスラエル人への攻撃の報復だと主張し、ヨルダン川西岸北部の同村で深夜に激しく暴れまわり、パレスチナ人1人を殺害、100人以上を負傷させた。

イスラエル軍はパレスチナ人による襲撃に関連した緊張の高まりには迅速に対応してきたが、この件には一切介入しなかった。

イスラエルのメディアで中東・外交のベテラン記者として活躍するバラク・ラヴィド氏は、次のように語った。「この政権は最初の3ヶ月で完全に機能不全に陥り、混乱状態に陥っています。政府が取るほとんどすべての措置は自発的なものではなく、何かが起こってから対応しているにすぎないのです」

「これはまた、イスラエルの歴史の中で最も極右的な政府であり、人種差別主義者やユダヤ人至上主義者の要素がその中に、国家安全保障大臣のイタマル・ベングビール氏や財務大臣の(ベザレル)スモトリッチ氏のように外交や国家安全に大きな影響力を持つ重要ポジションに存在しています」

ラヴィド氏は続けて語った。「ネタニヤフ首相は就任した際、いくつかのことを述べました。第一に、国家安全保障と外交政策に関しては自らが舵を取ると言いました。この政権が発足して3カ月、それが事実でないことは誰の目にも明らかだと思います。首相は何も動かしておらず、すべてが混沌としています」

「そして第二に、首相はかなり野心的な外交政策を打ち出し、イランに焦点を当て、その核開発計画に対抗することをまず強調しました。そして次には、アブラハム合意を拡大し、サウジアラビアとの平和条約を締結することを目指すと言いました。この3カ月間、彼は何もしていません。第一、第二の外交政策目標ともに、何もしていないのです」

ラヴィド氏は、イスラエル全土で抗議が広がり国際的な関心も集めている、政府の司法制度改革案という無関係の問題が、「政府の議題を乗っ取った 」ために問題を助長していると指摘した。

ヨルダン川西岸地区での暴力は、パレスチナ人とイスラエル人の殺害を急増させ、モロッコ、バーレーン、アラブ首長国連邦とのアブラハム合意のような正常化協定にブレーキをかけ、特にサウジアラビアとの協定という希望を打ち砕いたという見解に、パネリストたちは同意した。

イスラエルの元ディアスポラ担当大臣であるナックマン・シャイ氏は、ネタニヤフ首相の連立政権は「アラブ世界との関係を害していることはよく分かっているが、気にしていない」と語った。

「ベングビール大臣を神殿の丘(アル・アクサ・モスク)に行かせたこと、あるいは連立メンバーや政府閣僚によってなされた発言等を、知らないとは言わせません。彼らはアラブ世界との関係を害していることをよく知っているが、気にも留めないのです」

シャイ氏は「フワラのポグロム」を「恐ろしい出来事であり、米国、ユダヤ人社会、世界との関係、特にアラブ世界との関係を引き裂いた悲劇」と表現した。

同氏によると、新政権の政策は、イスラエルの安全保障と民主主義を強く支持してきたジョー・バイデン米大統領の政権から怒りを買っているという。

エルサレム・ヘブライ大学で中東研究の教授を務めるエリ・ポデ教授は、連立政権による行為の最大の影響は、「ネタニヤフ首相の外交政策の主なターゲット」であるサウジアラビアとイスラエルの関係正常化の可能性が損なわれることだと指摘した。

「特にエルサレムが関係する場合、イスラエルとパレスチナの間で何らかの緊張が起これば、インティファーダなどの重大な出来事の場合は確実にですが、イスラエルとサウジアラビアの間の発展は妨げられ、傷つくことになります」とポデ氏は述べた。「そのため、少なくとも現在は、そのような兆しはありません」

イスラエル地域外交政策研究所(Mitvim)のイスラエル・ヨーロッパ関係プログラムのディレクターであるマヤ・シオン・ツィドキヤフ氏は、ネタニヤフ政権の最初の100日間の混乱は、EU諸国の指導者のイスラエルへの支持を損ねただけでなく、アラブ首長国連邦との関係正常化も阻害したと述べた。

同氏は、ネタニヤフ政権はアラブ世界との関係改善の努力にダメージを与えていることを認識していないと述べた。

討論会の司会は、中東研究所イスラエル問題担当シニアフェローのニムロッド・ゴレン氏が務めた。

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