エルサレム:イスラエルの高位のラビ(ユダヤ教の指導者)が、イスラエル占領下の東エルサレムにあるアル・アクサモスク周辺で、ユダヤ教の過越の祭に際してユダヤ人活動家がいけにえを捧げるのを防止する動きに出た。
この措置を取ったのは、アルアクサ・モスク近くにあるユダヤ教の聖地、嘆きの壁のラビを務めるシュムエル・ラビノビッツ師だ。ユダヤ教の過越の祭とイスラム教の聖なる月ラマダンが重なることから、聖地エルサレムで暴力事件が起こることを懸念する声が上がっているためだ。ラマダンには数万人のイスラム教徒がアル・アクサで祈りを捧げる。
「過越の祭のいけにえを神殿の丘に運び込む動きがあると伝えられているが、嘆きの壁のラビはムグラビ地区への動物の持ち込みを認めない」と、嘆きの壁遺産財団は声明を出した。
嘆きの壁はユダヤ教最大の聖地で、祈りを捧げる信者が多く集まる。問題はここが、ユダヤ教徒の言う「神殿の丘」つまりアル・アクサモスクの敷地のすぐ下にあるということだ。
ユダヤ教の過越の祭は5日に始まるが、その前夜にはヒツジやヤギをいけにえとして捧げる伝統がある。
これまでもユダヤ人活動家が、聖書に書かれたいけにえの事績を再現しようと、モスクの敷地に動物を持ち込もうとした例がある。
また嘆きの壁遺産財団は声明で「嘆きの壁および聖地のラビであるシュムエル・ラビノビッツ師の指示により、(モスク敷地の入り口にあたり、非イスラム教徒にも利用されている)ムグラビ坂地区への動物の持ち込みを防止する措置を取る」と述べた。
「丘への帰還」というユダヤ人過激派グループは、いけにえを運び込むという「聖なる使命」をなし遂げた者には2万シェケル(約5570ドル)を贈るとしている。ちなみにアル・アクサモスクはイスラム教で3番目の聖地だ。
イスラエル警察によれば、この団体の責任者は3日、予防的措置として身柄を拘束された。
イスラエルのセファルディ・チーフ・ラビのイツハク・ヨセフ師は4日、「ユダヤ法の重大な違反」であるとしてアル・アクサモスクの敷地をユダヤ教徒が訪れることを禁じる通達を出した。
ガザ地区を実効支配するイスラム主義組織ハマスは3日、ユダヤ教徒がいけにえを持ち込むことを許せば「すでに一発触発の状況にさらに油を注ぐことになる。その責任はすべて、イスラエルの占領政府にある」と警告した。
AFP