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米国、ロシアに対する制裁コンプライアンスをめぐりトルコをけん制

ロシアとウクライナの紛争に対するアンカラの明らかな中立性は米国との緊張を継続させる原因となっており、トルコとロシアの関係は再び注目を集めている。(ロイター/資料写真)
ロシアとウクライナの紛争に対するアンカラの明らかな中立性は米国との緊張を継続させる原因となっており、トルコとロシアの関係は再び注目を集めている。(ロイター/資料写真)
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10 Apr 2023 10:04:55 GMT9
10 Apr 2023 10:04:55 GMT9
  • 5月の選挙がトルコの対モスクワ戦略に影響を与える可能性は低い、とアナリストはアラブニュースに語る

メネクセ・トキャイ

アンカラ:トルコは、制裁コンプライアンスをめぐる米国務省の直近の警告の後、欧米製品のロシアへの再輸出禁止を約束した。

しかし、5月14日に総選挙と議会選挙を実施する予定のこの北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、今後も国産品のロシアへの輸出を予定している。

ロシアとウクライナの紛争に対するアンカラの明らかな中立性は米国との緊張を継続させる原因となっており、トルコとロシアの関係は再び注目を集めている。

ロイター通信によると、米国務省制裁調整室のジェームズ・オブライエン室長は、制裁対象である欧米製品のロシアへの再輸出について、トルコ当局者の姿勢は「極めて明確」であると述べた。

3月20日、イスタンブール鉄・非鉄金属輸出業者協会は、ロシアへの輸出を禁止されている外国製品の一覧をトルコ政府が企業に配布したと発表した。

この発表があったのは、米国のアントニー・ブリンケン国務長官がアンカラを訪問した直後である。

同様に、アンカラは欧州委員会に対し、3月1日以降に制裁対象品をロシアへ送らないと口頭で保証したことが伝えられている。

ところが、トルコで製造される商品にはこの制約が適用されない。それらの商品は他の国々からの部品を含んでおり、制限なくロシアへ輸出することができるのだ。

ワシントンは依然として慎重なまま、3月と4月のトルコの対ロシア貿易データの監視に取り組んでいる。

昨年12月の記者会見で、オブライエン室長は制裁コンプライアンスについてアンカラに警告を発し、違反があった場合にはトルコに二次的な制限を課す可能性があると述べた。

一方でウクライナ侵攻以来、数人の米国高官が、銀行を含むトルコの民間部門に米国の対ロシア制裁への準拠を要請するためトルコを訪問している。

ロシア軍がマイクロチップや化学物質などの兵器システムに輸入した製品を再利用するのを防ぐため、欧米数カ国が大規模な制裁を実施した後、トルコはロシアにとって重要な供給ルートとして機能した。

ワシントン研究所でトルコプログラムのディレクターを務めるソナー・カガプタイ氏は、西側の制裁にもかかわらず、侵略開始以来トルコがロシアとの貿易関係を維持してきたことは「公然の秘密」であると述べている。

「すべての貿易指標が年間基準で2倍以上になっています。これは、アンカラの親ウクライナ中立政策の一環です」とカガプタイ氏はアラブニュースに述べた。

なおトルコは、黒海での安全保障環境のバランスを取るためにウクライナを軍事的にも支援している、とディレクターは述べた。

「アンカラは、ロシアとの経済的関係も維持しました。それは投資の流れから恩恵を受けました。ロシアからの貿易が増加し、ロシアのオリガルヒがトルコに資金を持ち込んで住宅を購入することを奨励したのです」と彼は付け加えた。

米国政府は「このような取り組みに反対しています。そしてロシアと取引しないこと、ロシアのクレジットカードを使用しないことを企業に警告することで、コンプライアンスのチャネルを経由しています。それが功を奏し、トルコ企業を取り込むことに成功しています」とカガプタイ氏は述べた。

ウクライナ侵略以来、何千人もの裕福なロシア人がトルコに移り住み、不動産を購入し、現金貯蓄を持ち込んでいる。そして制裁を回避するために何百もの事業を立ち上げ、トルコをロシア人にとっての金融避難所にしようとしている。トルコは今でも、ロシアの最大の貿易相手国のひとつなのだ。

カガプタイ氏は、5月14日の選挙後も現政権が権力を維持するならば、アンカラは西側の制裁をある程度遵守しながらキーウを軍事的に支援し続け、モスクワとの経済関係を解放したままにするだろうと述べた。

「野党が勝利した場合でも、トルコがロシアから経済的に完全に離れる可能性は低いのです。エネルギーから食料品、観光に至るまで、彼らは幅広い分野でロシアと深くつながっているからです」と彼は付け加えた。

「野党が勝てば、ロシアとの経済的関係の一部をゆっくりと解除していく方へ向かいながら、ウクライナへの政治的支援を強化するようになるでしょう」とカガプタイ氏は述べた。

米国が2024年の選挙に向けて準備を進める中、専門家は、ジョー・バイデン米大統領がロシアをさらに孤立させるための新たな制裁措置を講じ、ビジネス上のコンプライアンスチャネルに加えてさらなる要求をトルコに対し行うだろうと述べている。

カガプタイ氏は、アンカラをロシアからのさらなる離脱へと追い込むために、米国は政府間の接触を利用するだろうと述べた。

その一方で4月7日、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相をトルコに迎えた。

ロシア外相の訪問は、トルコのフルシ・アカル国防相が米国のロイド・オースティン国防長官と行った電話会談と時期が重なった。電話会談では、フィンランドとのNATO拡大や、トルコが新しいF-16ジェット機と近代化キットを米国に要求した件が議論された。

米国のドイツ・マーシャル基金アンカラ事務所長を務めるオズグル・ウンルヒサルシクリ氏は、トルコが対ロシア制裁を回避していることと、ヨーロッパからの制裁製品の再輸出を通じてロシアの制裁回避を手助けしていることには違いがあると指摘した。

ウンルヒサルシクリ事務所長は米国国務省の最新の声明に言及して、「トルコが制限するのは後者であり、ロシアとの通常貿易ではありません」とアラブニュースに語った。

ウンルヒサルシクリ事務所長は、民間でも軍事でも使用できる二重用途の物品に対して米国は特に注意を払うと付け加えた。

「トルコの決定は、ロシアにとって喜ばしいものではありません。ですが、トルコのような国を完全に失うことは得策ではないため、強い反応を示すことはないでしょう」と彼は語った。

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