
テルアビブ:イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、レバノンとシリアからのロケット弾発射や月曜日にはさらに2人が死亡した事を初めとする最近の暴力行為の激化と急増を受け、「全領域」の治安を回復すると誓った。
ネタニヤフ首相は、また、先月解任を発表した国防大臣を復職させた。
激しい暴力的な衝突や銃撃、ロケット弾攻撃、自動車による体当たり攻撃が、イスラム教の聖なるラマダーン月とユダヤ教の過越祭、キリスト教の復活祭が重なるこの時季に発生した。
直近の犠牲者は、パレスチナ人のティーンエイジャーと英国系イスラエル人の母親である。この母親は、ヨルダン川西岸地区での銃撃事件で2人の娘を亡くし、自身もその際の負傷により月曜日に死亡した。
イスラエル警察が水曜日にエルサレムにあるイスラム教第3の聖地であるアル・アクサモスクの礼拝堂を急襲した翌日、レバノン国内から30発のロケット弾がイスラエルに向けて発射された。
イスラエル軍は、このロケット弾攻撃はパレスチナの武装勢力であるハマスによって実行された可能性が非常に高いと述べた。
イスラエル政府は、その後、ハマスの施設と断定した「テロリストのインフラ拠点を標的として」ガザ地区とレバノン南部を爆撃した。
ネタニヤフ首相は、月曜日の記者会見で、「イスラエル政府はテロリストのハマスがレバノンに根付いてしまうことを容認しません」と語り、そのために「全領域」で行動すると述べた。
イスラエルとパレスチナの間の暴力的な衝突は、ネタニヤフ首相の新政権が12月に誕生して以来既に激化していた。この新政権は極右主義者と超正統派ユダヤ教徒から成る連立政権である。
今回の暴力行為の激化と急増は、ネタニヤフ首相が司法改革法案に関する協議の「一時停止」を発表した事から、国民が分断され、政権内の分裂が発生した後、先月末から続いている。
政治的な犠牲者の中には、ヨアフ・ガラント氏も含まれている。ガラント氏は、国家安全保障関連の懸念と予備役兵による軍務拒否の脅迫に言及し、立法プロセスの停止を求めたことから、3月26日にネタニヤフ首相に国防相を解任された。
ネタニヤフ首相にとって国内での支持が低迷していることが大きな足枷となっている。最近の調査は、選挙が現時点で行われればネタニヤフ首相は負ける可能性が高いことを示している。
記者会見で、ネタニヤフ首相は、ガラント氏とは「困難な論争」があったものの、それは水に流すことに決めたと述べた。
「ガラント氏は国防相のポストに留まります。私たちは、イスラエル市民の安全のために協力し続けます」と、ネタニヤフ首相は付け加えた。
テルアビブで数百人の抗議行動参加者が街頭で政府を糾弾し首相の演説を非難する様子をイスラエルのテレビ局が放映した。
月曜日早くには、占領下のヨルダン川西岸地区北部において厳重な警備下で行われたユダヤ人入植者による抗議の行進に数人の政府閣僚が参加した。
イスラエル軍は、ヨルダン川西岸地区での直近の銃撃で、パレスチナ人のモハメド・ファイズ・バルハン氏(15歳)を殺害し他に2人を負傷させた。「テロ行為の容疑者」を逮捕するための強制捜索とイスラエル軍が呼ぶ急襲作戦の過程での出来事だったとパレスチナ保健省は述べた。
イスラエル軍は、昨年死者を出した強制捜索の実施場所でエリコ近郊に在るアカバット・ジャーベルの難民キャンプ付近で、兵士たちが「テロ行為の容疑者の逮捕」のために展開していたことを認めた。
イスラエル軍によれば、兵士たちは、「容疑者らが(兵士たちに向かって)銃撃を開始し、爆発物や火炎瓶を投げつけてきた」事への対応として実弾を撃ったという。
容疑者1人が治安部隊により連行されたと、イスラエル軍は付け加えた。
パレスチナの通信社WAFAによると、イスラエル軍が難民キャンプに侵入しいくつかの住居を包囲した時に衝突が発生したという。この強制捜索では5人が逮捕されたと、パレスチナの治安当局者がAFPに語った。
ハマスは、「若年の殉教者」を追悼し、「この傲慢な敵に対峙する」人々を賞賛した。
ヨルダン川西岸地区での金曜日の銃撃事件で負傷した英国系イスラエル人女性のルーシー(リア)・ディー氏の死亡をエルサレムの病院が確認したため、この強制捜索が行われた。この銃撃事件では、ディー氏の16歳と20歳の2人の娘が既に殺害されていた。
ヨルダン川西岸地区内にあるユダヤ人入植地のエフラトの住民の家族の自動車が、エリコも位置するヨルダン渓谷で銃火を浴びた。
英国のジェームズ・クリバリー外務大臣は、「不合理な暴力」の「正当化は不可能」だとツイートした。
イスラエルはヨルダン川西岸地区を1967年の6日戦争以来占領している。そして、数十万人のユダヤ人入植者がイスラエル政府が承認した入植地で生活しているがこれは、国際法違反と考えられている。
月曜日、数百人のイスラエル人が、入植前哨地の政府承認を求めて、ヨルダン川西岸地区北部で抗議の行進を行った。
極右主義者のイタマル・ベングビール国家安全保障相を含む数人の政府閣僚が、入植前哨地のエビアタルへの行進に姿を見せた。当局の審査を受け、エビアタルの住民は2021年に退去に同意している。
行進の参加者を前に、ベングビール国家安全保障相は、「(入植地の)建設こそがテロ行為への対応になるのです」と述べた。
アル・アクサモスクの礼拝堂内部に立て籠もった「違法行為を犯した若者たちと覆面の扇動者たち」を排除するためにイスラエル警察が未明の急襲を行って以来、暴力的な衝突が再燃している。
テルアビブでは、金曜日遅く、自動車を用いた体当たり攻撃により、イタリア人観光客1人が殺害され、他に7人が負傷した。
イスラエル軍は、また、シリアから発射されたロケット弾がイスラエル占領下のゴラン高原に着弾したため、シリア国内の発射元の地点を標的とした報復攻撃を日曜日に行ったと述べた。
公式の情報源に基づくAFPの集計によれば、イスラエル・パレスチナ間の紛争により、今年、少なくとも94人のパレスチナ人、19人のイスラエル人、1人のウクライナ人、1人のイタリア人が死亡したという。
この死者数の内訳を確認してみると、パレスチナ側の死者が未成年を含む戦闘員と民間人で、イスラエル側は未成年と3人のアラブ系の少数派を含む民間人が大多数となっている。
AFP