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国外のスーダン人、母国にライフラインや援助の手を伸ばそうと努める

準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」と国軍の間の衝突のさなか、パンを手に入れようと集まる人々。2023年4月22日、スーダンのハルツーム・ノース。(ロイター/Mohamed Nureldin Abdallah)
準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」と国軍の間の衝突のさなか、パンを手に入れようと集まる人々。2023年4月22日、スーダンのハルツーム・ノース。(ロイター/Mohamed Nureldin Abdallah)
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26 Apr 2023 10:04:06 GMT9
26 Apr 2023 10:04:06 GMT9
  • イギリスに住む約5万人のスーダン人の中には、終りが見えないような状況に対する無力感の代わりに義務感を抱くようになった人々もいる

ロンドン:母国が紛争地帯となっている今、サラ・アブデルガリル医師に安息の時はなかなか訪れない。彼女は、まだスーダンに残っている連絡が取れない家族のことを心配している。母親は心配で眠れずに上の階を歩き回っている。彼女の携帯電話は四六時中鳴っている。何千マイルも離れたところから医学的アドバイスを求めるメールが来るのだ。

アブデルガリル医師はイギリスのノリッジで小児科医をしているが、スーダンは彼女の「最初の故郷」だ。彼女は、家の外で戦闘が行われる中で混乱や恐怖と共に暮らしている人々を遠距離から支援する医師ライフラインに参加している。

彼女は、「私たちは最悪の事態を想定しているので、あまり寝ていません」と話す。毎朝親族らにメールして、まだ生きているかどうかを確かめているという。「できる限りパニックを起こさないよう努めています」

イギリスに住む約5万人のスーダン人の中には、終りが見えないような状況に対する無力感の代わりに義務感を抱くようになった人々もいる。スーダンを引き裂こうとしている二つの軍隊間の市街戦から身を隠している人々を、家族や友人だけでなく他人も含めて助けようと努めている人々がいるのだ。

4月15日に始まった戦闘により、少なくとも291人の民間人を含む420人以上の命が失われ、少なくとも3700人が負傷した。

食料は不足し高価になっており、病院は爆撃され崩壊寸前で、水道は各地で止まっており、電力とインターネットの停止により人々は暗闇の中で情報を得ることも連絡を取ることもできずにいる。

イギリスのスーダン人ディアスポラコミュニティーは、3000マイル(5000キロメートル)離れたところから母国の出来事に関与してきた。2019年には、軍に長年の独裁者オマル・アル・バシール大統領(当時)を追放させた民衆蜂起をコミュニティーの多くの人が支持した。現在、彼らは障害をものともせず、できる限りのことをしようと努めている。

23日、数十人のスーダン人が自分たちの家族が直面している現状への注意を促すために、イギリス国防省の外で大声を出して賑やかにデモを行った。ロンドンマラソンのゴール前直線コースを走者たちが走り去る中、マイクを持った一人の少女と女性たちは「スーダンに平和と正義を!」と叫び、他の人たちは「スーダンの戦争を止めろ」「全ての将軍にノーを」などと書かれたカードを掲げた。

アボベイカー・アダム弁護士は、アブドゥルファッターフ・ブルハン将軍率いるスーダン国軍とモハメド・ハムダン・ダガロ将軍率いる準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の間の戦闘を止めるためにイギリスや国際社会に協力してもらいたいと語る。

「私たちがこの戦争を止めなければ、銃弾の中を生き残れた人々も食料や水の不足のせいで死んでしまうかもしれません」とアダム弁護士は言う。「危機がそこにあるのです。私たちはあらゆることをやらなければなりません」

対立軍隊間の戦闘は、交渉への復帰を望む諸外国から広く非難されている。

欧州、北米、中東、アジアの国々が外交官やその他の自国民を退避させていることは、それらの国々が状況の悪化を見込んでいることの現れだ。

遠くからできることは限られている。

通常なら国外に住む家族は母国に送金するところだが、銀行が閉鎖されているため不可能だ。店の多くも閉まっているうえ、人々は怖くて家の外に出られない状態だ。

アダム弁護士は語る。「将軍たち(ブルハン将軍とダガロ将軍)は自分たちのエゴや利益のために戦っています。彼らがやっていることはスーダン国民の最善の利益に適うことではありません」

フサム・エル・ムガマル医師は、「人権を擁護するスーダン医師団(SDFHR)」はスーダンの戦場にいる医師たちに人権侵害を認識・記録し国際社会に知らせる方法を教えようと努めていると話す。

インターネットが停止しているせいで、愛する人たちの安否を探っている国外在住のスーダン人たちは心配を募らせている。アブデルガリル医師は、送ったWhatsAppメッセージが届いたかどうか分からないと心配になる。電話で話す時も、近くで紛争が起きているという恐怖が彼らの声から伝わるという。

「爆発が聞こえるのです」。オナヒード・アフメドさんは、彼女がハルツームから脱出させようとしている姪と電話する時のことについてそう話す。「実際に家が揺れているみたいに、アパートが揺れているのが電話越しにはっきりと聞こえるのです。銃声や種榴弾の音も全て聞こえます」

エル・ムガマル医師は、兄弟姉妹、その家族、訪れていた友人が何日も家の中に閉じ込められていると話す。銃弾が窓を抜けて飛んできて無人の部屋の中を跳ね回ったこともあった。その数日後、兵士らが彼らの家の外で陣取ったが、彼の家族はそれがどちらの陣営かを確かめるために外を見る勇気がなく、地下室に避難した。

食料を手に入れようとしたり戦闘から逃れたりしようとして十字砲火の中に捕らわれた人々の話は誰もが聞いたことがあると言う。

「死んでいく市民の話が毎日伝わってきます」と言うバシル・エルナイエムさんは、スーダンにいる祖父母やいとこらといつまで連絡が取れるか分からないと話す。「私たちは、この戦争の次の犠牲者は愛する人たちのうちの誰かかもしれないと、ただただ心配しています」

アブデルガリル医師は、スーダンにいる家族や友人たちと連絡を取ることと、同国にいる他の人々を支援することをなんとか両立させようと努めている。12歳の息子を育てながら医師としてフルタイムで働きつつである。

彼女は、オンライン上の偽情報やヘイトスピーチへの対処、国連安全保障理事会に提出する平和嘆願書の回覧、アフリカに医学的アドバイスを提供するための緊急テキストメッセージの送信といった活動もしている。

23日、彼女が就寝したばかりだった真夜中頃、通知アラートが届いた。ある母親からのメッセージで、その日の夜に1歳の子供が倒れたという。いくつか質問を送る中で、その子は痛がっているが緊急の治療は必要ないということが分かった。翌朝、その母親からその子が良くなったというメッセージが来て安心したという。

アブデルガリル医師が入っているWhatsAppグループの一つで、糖尿病を患っていた9歳の少女の痛ましいケースが話題に上った。その子は、家から出るのを怖がった両親が長く待ちすぎてインスリンを手に入れることができなかったため亡くなってしまったのだ。

アブデルガリル医師は医療ネットワークを利用して、スーダンにいる親たちに最寄りの診療所や薬局を案内したり、嘔吐している子供の親たちに補水液の作り方を教えたりしている。

「『ありがとう』と言われたり、手を合わせた『ありがとう』のメッセージが届いたりすると、少なくとも何かしらのことはやれたのかなという感じがします」とアブデルガリル医師は言う。「彼らが外に出て撃たれるのをやめさせることもできたのです」

AP

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