
ニューヨーク:アラブ諸国は、シリアの紛争と人道援助危機の政治的解決のために主導的役割を果たすことができる、と国連シリア担当特使のゲイル・ペダーセン氏が期待を示した。
28日に行われた国連安全保障理事会の特別会合で、ペダーソン特使は、最近の大地震の被害も含め、シリアには数多く課題があるにもかかわらず、前進するための好ましい兆しが見られると述べた。
同特使はまた、サウジアラビア、エジプト、ヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)等のアラブ諸国の指導者がシリアの問題に現在果たしている役割を強調した。
シリアとの外交関係を回復させ、ひいては同国をアラブ連盟に復帰させることを目指して、アラブ諸国の指導者とシリアのアサド大統領は、何度か注目される会合を行ってきている。
ペダーソン特使は、「私は、シリアの人々の苦しみを終わらせ、安定、安全、平和(への道を見つける)には、政治的解決が唯一の方法であることをこれからも強調していく」と述べた。
特使はさらに、「シリア主導」「シリア管理」による政治プロセスを引き続き推し進め、長期的な解決策を見出すためには集団的な努力が必要であると付け加えた。
「私は、国連安保理決議2254に沿い、一歩一歩報告され検証可能な方法で前進する道を支援していくつもりだ」
国連安保理決議2254は、2015年にシリアの独立と主権を確認し、紛争を終わらせ、国民の正当な願望を満たすシリア主導のプロセス実現を求めたものだ。
UAEのムハンマド・イッサ・アブ・シャハブ代表は、シリア問題の解決には「アラブ諸国による外交」が引き続き重要であることを強調した。
同代表はまた、最近開かれた湾岸協力会議(GCC)加盟各国、およびエジプト、ヨルダン、イラクの代表による協議の場でも、アラブ主導の取り組みの必要性が確認されたと指摘した。
ペダーソン国連特使は報告書の中で、政権軍とシリア北部・北西部の広範囲を支配するグループとの間で戦闘が続いていることにも言及した。また、イスラエルによるシリア国内の標的への空爆が頻繁になっているとも付け加えている。
特使は、シリアの人々は緊急の支援を必要としているとして、「大地震と12年間の戦争を経て、シリアは依然として人道的危機の状態にある」と訴えている。
国連人道問題調整事務所の資源動員担当ディレクター、リサ・ドーテン氏によると、国連はシリアの人々を助けるため緊急資金拠出アピールにより3億8400万ドル(約520億円)をすでに集めているという。
しかし、シリア人道危機対応計画では、地震前の時点で必要とされていた総額48億ドル(約6540億円)のうち、これまでに集められたのは3億6300万ドル(約490億円)に過ぎず、深刻な資金不足が続いている。このため、6月のブリュッセル会議はシリアにとって極めて重要なものになるとドーテン氏は指摘している。