
ベイルート:サウジアラビアの駐レバノン大使は、水曜日、数々の危機に見舞われているレバノンの安定を守るためには同国の政治指導者たちが可及的速やかに新大統領を選出することが必須だと述べた。
レバノンのナビーフ・ビッリー議会議長との会談後、サウジアラビアのワリド・アルブハリ大使は、「レバノン国民の期待に応える大統領選の前倒し」を行う必要性を強調した。
アルブハリ大使は、「サウジアラビアはレバノン国民の安定と結束を脅かす大統領不在の現状を容認できません」と付け加えた。
サウジアラビアでの休暇からレバノンに戻ったアルブハリ大使は、水曜日、数人のレバノン政府関係者と会談した。
レバノンの大ムフティーであるシャイフ・アブドゥル・ラティフ・ダリアン師とダル・アルファトワで行った会談の後、アルブハリ大使は、「今回の会談は、レバノンの最新情勢、特に大統領選とその重要性についてであり、加えて相互に関心のある事柄についても話し合う機会になりました」と、ツイート投稿した。
ダリアン師の事務所の発表によると、サウジアラビア大使は「レバノンとその人々の調和を担保する宗教的そして国家的原点であるダル・アルファトワと継続的なコミュニケーション」の重要性に言及したという。
アルブハリ大使は、レバノンの政治制度とイスラムとキリストの共存に対するサウジアラビアの支援を強調し、レバノンが「安定と有望な未来を実現すること」を希望した。
ダリアン師は、「サウジアラビアの役割は、アラブ世界や国際社会におけるその役割と同様、レバノンにおいても不可欠です」と述べた。
「大統領を選出し、レバノンを安定化し、また、その繁栄と発展を図ることは、何よりもまずレバノン人の負った責任であり、そして、レバノンを支援し援助を提供するアラブの兄弟国や友好国の負った責任でもあるのです」
「大統領選に関連した合意は、地方であれ外部であれ、すべての面においてレバノンの制度と主権の尊重の回復を目指すために為されるものでなければなりません」
レバノンにおける大統領不在期間は、国会議員たちが投票を12回試みたものの定足数に足りず、7か月目に入った。
ヒズボラ並びにその協力者たちと、野党と改革派の間の政治的分断は、大統領不在という現況からの脱却を阻み続けている。
レバノンを襲っている経済危機は、レバノン通貨の暴落を引き起こし、国民の半数以上を貧困に追い込んでいる。
「ダル・アルファトワは、一般市民が経済的、社会的に、また、生活と安全の面で、高い代償を払わされているレバノンの悲劇を終結させる内外のあらゆる取り組みを歓迎します」
「レバノンとその国民は、サウジアラビアとその指導者たちと兄弟愛に基づく協力を強く望んでいます。サウジアラビアは、この中東地域で、レバノンとそのアラブ国民と文化的役割を守り、世界中でアラブ人とイスラム教徒たちの問題を解決するために全力を尽くしています」と、ダリアン師は付け加えた。
米国務省も火曜日に声明で、「不正が無く、国家全体を統合可能な」大統領選出のための「国際社会からではなく、レバノン国内からの解決への行動」を強く要請した。
米国務省のマシュー・ミラー広報官は、「米国はレバノンの政治指導者に対して、国家を統合し、経済危機から脱するのに必要な改革を速やかに行うために、大統領の選出に向けて即座に行動を起こすことを要請します」と述べた。
「レバノンの政治指導者たちが、個人的な利益や野心を自国や自国民の利益よりも優先することがあってはいけません」
「レバノンは、汚職とは無縁の、レバノンを統合し得る、国際通貨基金とのプログラムの合意の成立に必要な根本的な経済改革を実施可能な大統領を必要としています」と、ミラー広報官は付け加えた。
これらとは別に、イランのモジタバ・アマニ駐レバノン大使が自由愛国運動のゲブラン・バシル党首と会談した。
アマニ大使の広報担当オフィスによると、同大使は「バシル党首にイランとサウジアラビアの交渉の過程と合意点を伝えた」という。さらに、同大使は、「レバノンの内政問題に対して干渉せずレバノン国民が合意したことであれば何であれ支援するというイランの姿勢」を繰り返し強調したという。
政治勢力間で、妥協に至ろうとする内部での試みは失敗した。
現在、ヒズボラとアマル運動の支持を受けたスレイマン・フランジェ氏が唯一の大統領候補だが、レバノン内のキリスト教勢力と改革派の大半は同氏を支持していない。
レバノン国民議会のエリヤース・ブー・サアブ副議長は、議会協議を行うために、ここ数日、政治指導者との会談を重ねている。ファランヘ党のサミ・ジェマイエル党首との会談後、サアブ副議長は、「基本的なことから始める必要があります。つまり、具体的な人物を挙げる前に、大統領の役割を定義しなければなりません」と述べた。
「時機を失しないことが重要です。そして、私たちは、解決を永遠に待つわけにもいかないのです。私は、これに留意して会談を行っています」
ファランヘ党のジェマイエル党首は、「私たちは、国家の主権、国内での意思決定プロセスの自由、強力な経済の確立に向かう新たな段階へとレバノンを導き得るどのような解決策に対しても耳を傾ける意思があります」と、語った。
「しかし、レバノンを現状のままに留め置くような解決策には、私たちは反対です。問題は、常に決定をレバノン国民に押しつけ、前進の可能性を阻む政党にあるのです」
「ズガルタ自由党のスレイマン・フランジェ党首を大統領に選出することは、これまでの6年間を今後も継続するだけのことです。フランジェ党首の政治姿勢が問題なのです。そして、それは、レバノンの崩壊とレバノンの若者たちの海外移住を招くことになるでしょう。私たちは種々の実行可能な手段を用いてこの選択肢に反対していきます」
ブー・サアブ国民議会副議長は、マロン派のビシャーラ・アル・ライ総主教を訪問し、また、野党側の大統領候補ミシェル・ムアワード氏を擁するタジャドッド議員連盟とも会談した。ブー・サアブ副議長は、レバノン軍団のサミール・ジャアジャア代表とも会談した。
レバノン軍団のガッサン・ハスバニ議員は、「現在、ヒズボラにとっては、スレイマン・フランジェ氏か大統領不在の継続のどちらか」であるとして、対話の意義について疑義を呈している。
マロン派の大司教評議委員会は、レバノンの代議士らに対して、「大統領選出の困難さに起因して生活を悲惨なものにしている一連の破滅的な危機を克服するレバノン国民の希望を踏みにじるようなことは何であれ避け、新大統領選出に向けた地域的、国際的な機運の高まりを活かすべき」だと呼びかけた。