ハーグ:ウクライナとロシアは4日、それぞれに戦時のレトリックを展開した。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウラジミール・プーチン大統領が戦争犯罪で有罪となることを確信していると述べた。一方のロシアは、プーチン大統領暗殺の試みの背後には米国がいると主張した。
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して戦争が始まって以来、両国の首脳は複数回にわたって互いを個人的に攻撃してきた。3日にもまたそのような非難が行われた。ロシアが、ウクライナがプーチン大統領の暗殺を狙ってモスクワのクレムリンを攻撃したと主張したのだ。
ゼレンスキー大統領は、ドローン攻撃とされるものへのウクライナ軍の関与を否定した。ロシアは、「テロ」行為に対して不特定多数への報復を行うと約束した。親ロシア派らは、ウクライナ高官の暗殺を呼びかけた。
今回の攻撃とされるものについて、正確には何が起こったのかはまだ判然としない。
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は4日、このドローン攻撃とされるものには米国が関与していると主張した。ロシアは国内で戦争への支持を高めるために、米国がウクライナ支援を通してロシアを破壊しようとしているとの非難を何度も試みてきた。
同報道官は日次電話記者会見で記者団に対し、ロシアは「このような行動やテロ攻撃に関する決定はウクライナではなく米国で下されることをよく知っている」と述べた。
さらに、「ウクライナは言われた通りのことをしている」と述べたが、その主張の根拠は示さなかった。
米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は、この主張を「馬鹿げている」とはねつけた。オランダを訪問中だったゼレンスキー大統領は、ロシアの意見には「関心がない」と述べた。
ウクライナ大統領府のミハイロ・ポドリャク長官顧問は4日、ロシアはドローン攻撃と称するものを「演出した」として、ロシア国営メディアの報道が遅れたことや、午前2時30分に行われたとされる攻撃の後の様子を撮影したとみられる「様々な角度からの同時映像」に言及した。
ワシントンを拠点とするシンクタンク「戦争研究所(ISW)」も自作自演の証拠を見出した。
ISWは次のように述べた。「ロシアは、戦争を国民に身近に感じさせ、より広範囲の社会的動員を行う条件を整えるために、この攻撃を自作自演した可能性が高い」
また、最近のロシアの防衛強化の動きを考慮すると、「2機のドローンが何重もの防空網を突破して、カメラが鮮明に捉えた劇的な映像に見られるようにクレムリンの真上で爆発するか撃墜されるかした可能性は極めて低い」とした。
国際刑事裁判所(ICC)の本部があるハーグを訪問したゼレンスキー大統領は、国際社会に対しプーチン大統領の責任を問うよう求めるとともに、ICCの裁判官らに対しては、プーチン大統領は「この国際法の首都において(自らの)犯罪行為について有罪判決を受けるに値する」と述べた。
ICCは3月、ウクライナからの子供の拉致に対して個人的な責任があるとして、戦争犯罪容疑でプーチン大統領に逮捕状を出した。ICCが国連安全保障理事会の常任理事国の首脳に逮捕状を出したのはこれが初めてだ。
ゼレンスキー大統領はオランダ訪問の前日にフィンランドを訪れていた。同国がロシアの長期的な野心に対する懸念から先月NATOに加盟したことで、NATO加盟国とロシアの境界線は2倍の長さになった。
ゼレンスキー大統領は今回の一連の訪問において、ベルギーの首相とオランダの首相に対しても、ウクライナが「戦場における正義」を実現できるよう高度な戦闘機の提供を求めた。
2022年2月の戦争開始以来、ゼレンスキー大統領はウクライナの防衛への欧米からの多大な軍事的・政治的支援を集めることに成功してきた。
ゼレンスキー大統領はオランダから提供された航空機や装甲車で移動し、公の場に姿を見せる際には厳重な警備を受けた。来週にはEUの経済大国ドイツの首都ベルリンを訪問し、プーチン大統領に対抗する欧米の力をまたも見せつける予定だ。
ゼレンスキー大統領のこれまでの訪問は実を結んでいる。昨年12月のワシントン訪問と2月のロンドン・パリ・ブリュッセル訪問の後、ウクライナは重火器や戦車の提供を受けた。
しかし、プーチン大統領がハーグで裁判にかけられる可能性はほとんどない。ICCは、ジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪、侵略犯罪について個人を裁判にかけるが、逮捕状を執行するための警察力を持たない。また、ICC加盟国123ヶ国には可能な場合はプーチン大統領を逮捕する義務があるが、同大統領がそれらの国に行く可能性は低い。
戦場でも動きがあった。ウクライナ軍は、4日早朝に南部の都市オデーサを攻撃したロシアのドローン3機に「モスクワのために」「クレムリンのために」という文言が書かれていたとしたうえで、クレムリンへのドローン攻撃とされるものへの報復としてこれらのドローンが飛ばされたことを示唆しているものと思われると主張した。
ウクライナの首都キーウは4日間で3回目となる空襲の標的となった。ウクライナ空軍は様々な地区で、ロシア軍が発射したイラン製ドローン合計24機のうち18機を撃墜した。死傷者は報告されていない。
ロシアでは、同国メディアが4日に報じたところによると、ウクライナに近い南部地域の石油施設2ヶ所がドローンで攻撃された。敵陣後方の燃料貯蔵施設に対する一連の攻撃の一環とみられる。
ロシア国営通信RIAノーボスチが警察関係者の話を引用して伝えたところによると、同国が併合したクリミア半島に隣接するクラスノダール地方の製油所がドローン4機による攻撃を受けた。ロストフ地方でも別の施設が攻撃されたと報じられている。
オランダはウクライナの戦争活動を強力に支援し続けている。マルク・ルッテ首相の政府は、デンマークと共同で現代的な戦車「レオパルト2」14両を購入してウクライナに供与すると約束した。
来年に引き渡される予定だ。
オランダはまた、ドイツおよびデンマークと共同で、ウクライナのために旧式の戦車「レオパルト1」を少なくとも100両購入した。
オランダ政府は他にも、地対空ミサイルシステム「パトリオット」2基を供与し、魚雷探査艦2隻の提供を約束し、戦争犯罪調査を支援するために軍事法医学専門家をウクライナに派遣した。
AP