• イスラエルは現地時間午後11時直前に、アサド氏の事件について告訴をしないという決定を発表した。バージニア州で暮らすオマル氏の兄弟ナワフ・アサド氏は、このニュースに驚かなかった

エルサレム：イスラエル軍は13日に、昨年、即席の検問所で止められたのちに車から引きずり出され、縛られ、目隠しをされた78歳のパレスチナ系米国人が死亡した事件に関わった兵士らを、刑事告訴しないと発表した。

軍の調査官らが兵士らの行動と米国人のオマル・アサド氏の死亡に直接的なつながりを見いだせなかったため、兵士らは起訴されないと、軍が発表した。兵士らは懲戒処分だけを受けるという。

軍によると、指揮官2名は解任され、2年間は軍の上級職に就くことを禁じられるという。指揮官のうち1名は「叱責」を受けるとのことだが、その詳細は明かされていない。

人権団体は、イスラエルがパレスチナ人の死について兵士に責任を取らせることはめったになく、軍の調査は多くの場合、不処罰というパターンを示すと、長年にわたって主張している。主要なイスラエルの人権監視団体「ベツェレム（B’Tselem）」は、この体制に対する不満を募らせた末に、2016年にうわべだけのものだとして調査を退け、数十年にわたって続けてきた調査への支援を止めるに至った。

極めてショッキングなケースや、動画におさめられたケースにおいても、兵士らは比較的軽い刑を受けるだけだ。昨年のジェニン難民キャンプにおける著名なパレスチナ系米国人ジャーナリストであったシリン・アブアクラ氏の殺害のような、米国人の死亡事件は際立って大きな注目を集めてきた。複数の独立調査がアブアクラ氏はイスラエル側の発砲によって死亡したようだと結論づけた。イスラエル当局は最終的に、イスラエル兵が同氏を殺害した可能性が高いと認めたが、同氏の死亡についての犯罪捜査の可能性は除外した。

アブアクラ氏やアサド氏の場合のような注目を集める事件は、占領下のヨルダン川西岸地区における生活の危険性に対する怒りを巻き起こしてきた。軍の占領下で組織的虐待に苦しんでいると、パレスチナの人々はいう。

イスラエルは現地時間午後11時直前に、アサド氏の事件について告訴をしないという決定を発表した。バージニア州で暮らすオマル氏の兄弟ナワフ・アサド氏は、このニュースに驚かなかった。

「イスラエルはどうにかして思うままに罪を逃れる」と、同氏は述べた。「それでも、私たちから見れば兵士たちが犯罪的な行為をしたことは明らかだ」

アサド氏は2022年1月に、イスラエル兵らによって縛られ、一時的に猿ぐつわをさせられ、目隠しされ、冷たい地面の上に放置されたのち、死亡した。イスラエル軍の調査によると、アサド氏は深夜に車で帰宅する際に検問所で止められた時、イスラエル兵に身分証を見せることを拒否したという。

調査官らは、アサド氏による「激しい抵抗」のせいで、兵士たちは同氏を拘束せざるをえなかったとした。アサド氏の家族は病弱な78歳のふるまいがそのようなひどい扱いを正当化し得るかについて疑問を呈している。

軍の調査によると、イスラエル兵らはアサド氏の両手を縛っていたケーブルを切った時、同氏が眠っていると思い込んだという。兵士らは反応を示さないアサド氏を見ても医療処置を行わず、生きているかどうか確認することなく立ち去った。検死によると、アサド氏の死因は心臓発作だった。

昨年、イスラエル軍は、現場にいた兵士らは「道徳上の怠慢と不適切な意思決定」という罪を犯したと発表した。珍しく過ちを認めたのだ。

13日に、軍は再び兵士らの職権乱用を認め、彼らの行為はイスラエル軍に「求められること、期待されることに一致するものではなかった」と述べた。

しかし軍は、「アサド氏の死が明確に兵士らの行為によって引き起こされたと断定するのは不可能」だと主張した。加えて、部隊はアサド氏の健康状態について知り得なかったと述べた。

ナワフ・アサド氏は、家族が次の対応を決めるには時間を要すると述べた。「私は今でも、どうにかして正義が実現されることを求めています」と、同氏は語った。

AP