
ベイルート:レバノンの最高位のキリスト教マロン派聖職者は18日、先週の大統領選出の試みが失敗に終わったことで同国の憲法と民主主義制度が「平然と」侵害されたとしたうえで、国内の分断が広がっていると警鐘を鳴らした。
ビシャーラ・ブトロス・アル・ライ総主教によるこの発言は、主要キリスト教政党を含む諸派閥による国際通貨基金(IMF)高官を大統領に選出しようとする試みが、イランの支援を受けるシーア派組織ヒズボラとその緊密な同盟勢力によって阻止されて以来初めての説教の中でなされたものだ。
議会では14日、大統領選出の試みが12回目の失敗に終わった。レバノンの宗派制度においては大統領の地位はキリスト教マロン派の人物が就くものとされているが、ヒズボラの同盟者ミシェル・アウン前大統領の任期が昨年10月に終了して以来、空位となっている。
重武装組織ヒズボラを批判し、大統領の空位を埋めるよう繰り返し呼びかけてきたライ総主教は、14日の議会を「茶番」と呼んだ。
同総主教はこれまでにもヒズボラに対し批判の声を上げてきた。2021年に同組織がイスラエルに向けてロケット弾を発射した時もそうだった。
大統領選出をめぐる膠着状態は、IMF中東局長で元財務相のジハド・アズール氏を支持するキリスト教諸政党と、同氏に反対するヒズボラやアマルなどのシーア派勢力という、宗派間の対立として現れている。
ライ総主教は、2019年以来経済危機に見舞われているこの国において結束が必要な時に分断の「傷」が広がっていると述べた。
議会で侵害が行われたという発言がどういう意味なのかは説明しなかった。アズール氏の得票数は128議席中59票で、第1回投票での勝利に必要な86票に届かなかった。ヒズボラが支持するキリスト教徒スレイマン・フランジェ氏は51票だった。
ヒズボラとその同盟勢力の議員らが退出したことで第2回投票のための定足数を割り込んだため、ヒズボラの同盟者であるナビーフ・ビッリー議会議長は閉会を宣言した。第2回投票で勝利するには65票が必要となる。
1票が紛失したことが判明したため、アズール氏を支持する議員らの一部が再集計または再投票を要求したが、ビッリー議長は結果が変わることはないととして却下した。
ヒズボラとその同盟勢力は、対立を引き起こす候補であるとしてアズール氏を攻撃した。レバノンのシーア派のムフティーも、名指しはしなかったものの、同氏はイスラエルに支援されていると非難した。
ロイター