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ヨルダン川西岸地区は混乱し、パレスチナ指導者への不安感が募る

イスラエルによるヨルダン川西岸地区の急襲を受け、2023年6月19日のガザでの抗議活動中に集まったパレスチナ人集団ハマスの支持者。(AFP)
イスラエルによるヨルダン川西岸地区の急襲を受け、2023年6月19日のガザでの抗議活動中に集まったパレスチナ人集団ハマスの支持者。(AFP)
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23 Jun 2023 08:06:11 GMT9
23 Jun 2023 08:06:11 GMT9
  • 30年前にパレスチナ自治政府がイスラエルと結んだ暫定和平協定の一部は、アッバース氏がその一助となり成立したものだが、パレスチナ自治政府は収賄の申し立てや能力の無さなどにより、支持を失っている。
  • 先月の国連での取り止めのないスピーチで、アッバース氏は繰り返し世界に対して「守ってくれ!」というアピールを行ったが、その様子をモノマネしてからかうミームの波がTikTokで巻き起こった。

ラマッラー:今週発生した直近の殺傷事件を受けて、イスラエルが占領するヨルダン川西岸地区には、またもや混乱がもたらされた。87歳のマフムード・アッバース・パレスチナ大統領の地位をめぐっては、ますます先行きが見えなくなっており、和平交渉の見込みは依然としてない。

19日の銃撃戦では7人のパレスチナ人が死亡し、90人以上が負傷した。その翌日には4人のイスラエル人が殺害され、イスラエル人入植者らがパレスチナ人の町で暴れ回り、またもやヨルダン川西岸地区の不安定さが浮き彫りとなった。

また、銃撃戦によって、パレスチナ自治政府がジェニンやナブルスなどの一触即発の場所で、数百人のパレスチナ人戦闘員と対峙した際の弱さがあらわになった。そして、イスラエルの占領地が拡大することで、1967年の中東戦争でイスラエルが占領した土地に、国家を設立するというパレスチナ人の夢はより一層霞んでいる。

30年前にパレスチナ自治政府がイスラエルと結んだ暫定和平協定の一部は、アッバース氏がその一助となり成立したものだが、パレスチナ自治政府は収賄の申し立てや能力の無さなどにより、支持を失っている。

先月の国連での取り止めのないスピーチで、アッバース氏は繰り返し世界に対して「守ってくれ!」というアピールを行ったが、その様子をモノマネしてからかうミームの波がTikTokで巻き起こった。

この題材は今週またソーシャルメディアで取り上げられ、限定的な自治を行使するパレスチナ自治政府は力無く傍観している。その一方で、ユダヤ人入植者はパレスチナ人の町を襲った。

アブー・マーゼンという通称のアッバース氏は、20年の統治を終わらせよ、という再三の要請を無視し続け、ますます増える辞職要求を拒否し続けている。それにもかかわらず、持続的な平和の見込みはこれまで以上に遠くにあるようだ。

アッバース氏は度々の健康不安を生き抜いたチェーンスモーカーで、およそ20年前のヤーセル・アラファート氏の死を機会にパレスチナ大統領を引き継いだ。アラファート氏はパレスチナ解放機構(PLO)の象徴的な創設者であり、その離脱はパレスチナの政治システム全体を一新させる引き金となる可能性があった。

アッバース氏はPLO議長と最大派閥ファタハの党首の地位を統合させ、正式な任期は2009年に満了したにもかかわらず、有望な後継者を指名することもなく権力の座に居座り続けた。

辞任への圧力
しかし、パレスチナ政策調査研究所(Palestinian Center for Policy and Survey Research)の世論調査によると、約80%のパレスチナ人はアッバース氏の辞任を望んでいるという。米国など世界の大国は、2014年以来凍結しているイスラエルとの和平交渉の再開を求めており、その圧力は着々と増している。

ここ数ヶ月、今後のアッバース氏に関する議論は「これまで以上のもの」となっていると、ファタハの党高官は、党内におけるこの問題の扱いづらさを理由として、匿名を条件に語った。

ファタハの党最高幹部は皆、数ヶ月にわたってその座を争っており、舞台裏の工作と、2006年以降、選挙は実施されておらず、後継を決めるための仕組みが明確になっていないという事実によって、事態はより複雑化している。

後継者の見込みがある者には、アッバース氏の盟友の1人であるフセイン・アル・シーク氏や、2000〜2006年のインティファーダ(民衆蜂起)の指導者で、多くのパレスチナ人にとって英雄であり、過去20年間イスラエルで投獄されていたマルワーン・バルグースィー氏などがいる。

多くは、イスラエルが何を受け入れるかにかかっているが、少なくともイスラエルは公式には一方を支持することを避けてきた。

「イスラエルにはパレスチナの指導者を選ぶことはできません」とイスラエル政府高官は言う。

混沌としたシナリオ
少なくとも公式には、大体のファタハ幹部は推測を軽視しようとしているが、指導者を決める議論が党内で交わされていることに気がついている。

「誇張が多いのです」とファタハの副議長で後継者候補の1人であるマフムード・アルール氏は言う。

「指導者の地位についてなど、多くの問題について議論がなされています」とアルール氏。「議論はなされていますが、一部の人間が仄めかそうとしていることとは違って、懸念はありません」と、アルール氏はヨルダン川西岸地区で起こった直近の事件の前に発言した。

しかし、アッバース氏の離脱は混乱期の引き金になるのではないかと、多くの評論家は恐れており、何らかの形で内戦に繋がったり、少なくとも、ヨルダン川西岸地区の様々な権力の中枢にいるリーダー同士が「偶像化」を行うかもしれない。

また、いかなる和平交渉にも反対する、イスラエルの大敵ハマスが、ガザにある本拠地の外へ拡大することも起こり得る。

「悪い選択肢は2つあります。1つは混沌で、もう1つはハマスがヨルダン川西岸地区で権力を握ることです。両者ともに絶対に阻止しなければなりません」とイスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は述べた。

イスラム主義のハマス自体にとっては、アッバース氏の離脱は好機となるだろうが、イスラエルとその同盟国はその好機を利用させまいと決意した、とガザにいるハマス高官のバセム・ナイム氏は言った。

「ファタハで組織をいまだに統制できるのは、もう彼だけだと思います」とナイム氏。「その他全員には、権力も、歴史も、カリスマも、組織を統制するコネも、ヨルダン川西岸地区もありません」

ハマスは、2006年のパレスチナでの選挙に勝利して、2007年の短い内戦でファタハを破って以来、イスラエルが封鎖したガザ地区を管理している。

ハマスは今や、ヨルダン川西岸地区内へと勢力を拡大しており、アッバース氏の党の本拠地でますます挑戦的になっている。ハマスは新しいパレスチナ人の指導者を選ぶ選挙に以前から賛成しており、2006年のように勝利することを確信している。

「パレスチナ人を政治的にひとつにする唯一の方法は選挙に行くことだと私たちは信じています」とナイム氏は言った。「それ以外では、パレスチナ人を代表する完全な正当性を誰も持ち得ないでしょう」

ロイター 

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