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ダーイシュはいかにしてスーダン紛争を利用し、地域の安全を脅かしているか

2019年のオマル・バシール政権崩壊前に、アメリカの諜報機関の助けを借りて制圧されたダーイシュの下部組織は、それ以降はスーダンで自由に復活を果たせるようになっている。(AP/資料写真)
2019年のオマル・バシール政権崩壊前に、アメリカの諜報機関の助けを借りて制圧されたダーイシュの下部組織は、それ以降はスーダンで自由に復活を果たせるようになっている。(AP/資料写真)
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28 Jun 2023 01:06:27 GMT9
28 Jun 2023 01:06:27 GMT9
  • スーダン軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の衝突が潜入の隠れ蓑となった
  • 治安の空白状態の中、過激派組織が地元イスラム教徒と連携し勧誘を開始した、と専門家は警告している

ロバート・ボシアガ

ジュバ(南スーダン):かつてイラクとシリアで広大な領土を征服し、現在はアフガニスタンと西アフリカの一部で深刻な脅威となっている過激派組織ダーイシュが、スーダンに姿を現し、現在進行中の紛争を利用する構えを示している。

2021年の軍事クーデターで政権の座を追われたスーダンのアブダッラー・ハムドゥーク前首相の報道官を務めるエルバガー・エルナジール氏は、アラブニュースの取材に応じ、現在スーダン領内には、地元のイスラム主義者とつながりがあるダーイシュの下部組織が複数活動していると述べた。

エルナジール氏の主張は、ダーイシュとの関係を認めており文民主導の民主主義への移行というスーダンの枠組み合意の弱体化のためダーイシュと連携したとされている「国家の法と発展のための党」のムハンマド・アリ・アル・ジャズーリ幹事長の存在が裏付けている。

特に懸念されるのは、スーダンの混乱に乗じて自らのイスラム主義の政治的目標を推進することを目的とした、ダーイシュとムスリム同胞団の協力体制が報じられていることだ。この動きは、より広範な地域の安全保障を脅かしかねないと専門家は懸念している。

エルナジール氏は、ダーイシュがスーダンに侵入する際に入り口となりうる国として、リビア、ソマリア、チャドといった近隣諸国と共にエジプトを挙げた。最近のシナイ半島でのダーイシュの攻撃は、同組織の攻撃能力を浮き彫りにしており、一層の警戒が必要である。

「彼らは政権を奪おうとしており、国民に受け入れられると確信させるような理由が現地にはたくさんあります」とエルナジール氏は語った。

4月15日に始まり、大規模な人道的緊急事態に発展したスーダン軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の間の武力衝突の拡大は、ダーイシュが侵入するのに絶好の隠れ蓑となった。

2019年のオマル・バシール政権崩壊前に、アメリカの諜報機関の助けを借りて制圧されたダーイシュの下部組織は、それ以降はスーダンで自由に復活を果たせるようになっている。

2021年、スーダンの特殊部隊は首都ハルツームでの1回の強制捜索で、5人のダーイシュ過激派を発見し、無力化した。スーダンの紛争が収まる気配がほとんど見られない今、ダーイシュの下部組織は治安部隊に邪魔されることなく自由に拠点を確保している。

スーダンでの紛争は、テレグラムで親ダーイシュ派の情報発信者たちの注目を集めており、親ダーイシュ派はこの状況を、他のジハード主義組織や地域政府を含むライバルの信用を失墜させる好機と捉えている。

ダーイシュには地元の武装勢力と同盟を組んできた歴史がある。資金源、武器、思想的な指導をもたらすことで、ダーイシュはこうした組織の能力を強化し、より頻繁に壊滅的な攻撃を実行できるようにするのである。

地域間の国境が侵入しやすいため、このような支援はスーダンの安定を脅かすだけでなく、近隣諸国にも波及する可能性を高めている。

スーダンは過激派勢力の温床となっているため、こうした層が近隣諸国に渡って攻撃をしたり、過激な思想を広めたりする危険性が非常に高い。

ダーイシュの戦術はまた、既存の宗派間の分裂を巧みに利用することも多く、それが国家の結束と安全保障をさらに弱体化させている。

「さまざまな民族や宗教グループ間の権力闘争が、ダーイシュのような過激派組織がつけ込むことができる分断を生み出してきました」と、元CIA情報分析官のキャメロン・ハドソン氏はアラブニュースに語った。

さらに、スーダンの特定の地域では実質的な統治と支配が行われていないことが、ダーイシュが国内で存在感を示し、過激派を勧誘し訓練する好機となっている。

「紛争を実質的に管理しなければ、さまざまな原理主義組織が混乱の中で不満を抱いている人々を集めるのに好都合な場所を見出すでしょう」と元スーダン駐在国連人道調整官のムケシュ・カピラ氏はアラブニュースに語った。

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