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ジェニンでの軍事作戦によりパレスチナ人に対する集団的懲罰の咎に問われるイスラエル

イスラエルが大規模な軍事作戦をヨルダン川西岸地区で開始したことで発生したジェニンでの衝突は、21年前に実行された同様の攻撃を想起させる。(ロイター通信)
イスラエルが大規模な軍事作戦をヨルダン川西岸地区で開始したことで発生したジェニンでの衝突は、21年前に実行された同様の攻撃を想起させる。(ロイター通信)
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04 Jul 2023 11:07:35 GMT9
04 Jul 2023 11:07:35 GMT9
  • イスラエル軍の1,000人の兵士やヘリコプター、ドローンによる地上攻撃は、2002年の「ジェニンの戦い」の記憶を蘇らせる
  • ヨルダン川西岸地区とガザ地区の占領に対するパレスチナ人グループによる抵抗運動はこの21年間衰えを見せていない

アラブニュース

ドバイ:イスラエルがヨルダン川西岸地区北部の人口が密集したパレスチナ人難民キャンプに攻撃を加える様は、パレスチナの抵抗の象徴となった「ジェニンの戦い」の契機である2002年の襲撃と衝突を記憶している人々に強い既視感を与える。

両軍事作戦間で21年間が経過したもののパレスチナの占領地域の状況に大きな変化は無い。それどころか、2002年当時に在った中東紛争の平和的解決への微かな希望すらイスラエルの極右政権の政治的台頭によって潰えてしまった。

ジェニンは、月曜朝から、イスラエル軍による激しい空爆と地上攻撃に見舞われている。エリート特殊部隊や装甲兵員輸送車、ブルドーザー、ヘリコプター、ドローンがこの攻撃に投入されている。今回の攻撃は、難民キャンプの中心部にあるアパートへのドローン攻撃から開始された。

イスラエル軍は、このアパートが、主にハマスとイスラム聖戦のメンバーを構成員とする過激派グループの1部隊であるジェニン旅団の「共同作戦司令部」だったと述べた。標的となったアパートから半径500m以内に1万人以上のパレスチナ人が居住していると考えられている。

イスラエルが大規模な軍事作戦をヨルダン川西岸地区で開始したことで発生したジェニンでの衝突は、21年前に実行された同様の攻撃を想起させる。(ロイター通信)

ジェニンは、1950年代に設置された難民キャンプを起源としている。1948年のナクバ(イスラエルを建国しようとするシオニスト民兵によるパレスチナの民族浄化という大惨事)で、本来の居住地から追放された22,000人のパレスチナ人がジェニンで暮らしている。

パレスチナ人にとって、この飛び地は、ヨルダン川西岸地区とガザ地区の占領に対する武力抵抗を具現化したものだ。イスラエル人にとって、ジェニンは、ハマスやイスラム聖戦からファタハに至るまで多様な思想信条を横断する組織や集団に属する過激派の温床なのである。

ジェニン県のマンスール・アルサディ副知事は、イスラエル軍はブルドーザーで全ての入口に土塁を築いて難民キャンプを都市部から隔離したとアラブニュースに語った。「軍事作戦がさあに長期間続けば、ジェニンキャンプの状況は人道的大惨事となるでしょう」と、アルサディ副知事は述べた。

レバノンの難民キャンプで暮らすパレスチナ人のアブドラ・アマウィ氏は、「親戚が何人かジェニンで暮らしています。直接電話をかけられないので、ソーシャルメディアを通して連絡を取り合っています。ソーシャルメディアへの投稿で私が目にするのは、煙や火災、負傷した住民たちばかりです。私には祈ることしか出来ません。彼らの生命や安全、頭上に屋根のある生活を彼らがずっと送れること、そして究極的には自由を得られることに祈りを捧げています」とアラブニュースに語った。

国連のリン・ヘイスティングス常駐人道問題調整官は、イスラエルによる攻撃への警戒感を、「人口密度の高い難民キャンプで空爆が実行されました。死者と重傷者が数名出ています。全ての負傷者への救急経路を確保する必要があります」と、ツイッターで表明した。

イスラエルが大規模な軍事作戦をヨルダン川西岸地区で開始したことで発生したジェニンでの衝突は、21年前に実行された同様の攻撃を想起させる。(AFP)

パレスチナのマフムード・アッバース大統領の広報官は、イスラエルの攻撃を「私たちの無防備な市民に対する新たな戦争犯罪」であるとして非難し、「私たちパレスチナ人は跪くことも降伏することも白旗を掲げることもしません。パレスチナ人は、自らの土地に断固として留まり、この残忍な攻撃に対峙し続けます」と付け加えた。

アラブ連盟のアフマド・アブルゲイト事務総長は、月曜日、「航空機による都市やキャンプへの爆撃、家屋や道路のブルドーザーによる破壊は集団的懲罰であり、報復です。それは、事態を連鎖的に悪化させるだけです」と、ツイッターへの投稿でコメントした。

イスラエル軍の報道官であるリチャード・ヘクト中佐は、空爆は地上展開する兵士たちが受ける「抵抗の最小限化」を意図したものだと述べた。この作戦はイスラエル人に対する攻撃の疑いのある19人が潜伏していると考えられる難民キャンプが「安全な避難所であるかのような思い込み」を終わらせるためのものなのだと、ヘクト中佐は付け加えた。

過去24時間で、イスラエルはさらなる空爆を行い、数千人の兵士がジェニンに駐留し武器の押収を試みている。パレスチナ保健省の当局者によると、現在までに8人のパレスチナ人が死亡し、50人が負傷したという。

ベンヤミン・ネタニヤフ首相の率いるイスラエル政府は、今回の攻撃は「ジェニンのテロリストたちに大打撃を与えている」と主張している。イスラエル軍はこの作戦がいつ終結するのかについてはまだ声明を発表していない。他方、イスラエル軍のラジオは、1,000人の兵士と数十機のドローンが投入されており、数日間継続し得ると述べている。

イスラエル部隊とパレスチナ人戦闘員との間での銃撃戦が激化する中、ジェニン旅団は、「私たちは最後の1呼吸、最後の1発まで占領軍と戦います。私たちは様々な派閥や軍組織出身で、団結し、力を合わせています」との声明を発表した。

イスラエル軍の攻撃に先立って、ジェニン地域からイスラエル側にロケット弾が発射されていたが、ビデオ映像によれば、このロケット団は発射直後に爆発していた。

6月19日にイスラエルがジェニンで行った軍事作戦で銃撃戦が発生し、死亡したパレスチナ人5人の内1人が15歳のパレスチナ人少女であったため、この地域では緊張が高まっていた。パレスチナ保健省の当局者らによると、死亡者以外に数十人が負傷したという。

ジェニンとナーブルスは、1年以上前に開始されたイスラエルの「防波堤作戦」の2大主要標的である。この作戦ではイスラエル軍により夜間の襲撃が行われ、インティファーダと呼ばれるパレスチナ人蜂起以来、占領地区において最大級に激しい衝突がいくつか発生している。

イスラエルが大規模な軍事作戦をヨルダン川西岸地区で開始したことで発生したジェニンでの衝突は、21年前に実行された同様の攻撃を想起させる。(AFP)

現在進行しているイスラエル軍の攻撃は、2002年に1週間あまりで50人のパレスチナ市民と戦闘員そして23人のイスラエル軍兵士が死亡した「ジェニンの戦い」以来最も熾烈なものだ。当時死亡したイスラエル軍兵士の内13人は、爆発物が仕掛けられた難民キャンプ内の街路を通り抜けようとした所を待ち伏せに合い殺害されたのだった。

2002年4月9日に始まった攻撃では、ジェット戦闘機により支援された150台以上の重装甲戦車を用いて難民キャンプに侵攻した。この攻撃は、ユダヤ教の祝日である過越祭の大規模な集まりでパレスチナ人が自爆テロを行った数日後に開始された。

「ジェニンの戦い」では、パレスチナ人武装勢力とイスラエル軍の衝突が10日間以上継続し、ジェニンの町の大部分が破壊され、3,000人のパレスチナ人が住居を失うに至った。イスラエル軍による違法な殺害の疑惑も浮上しており、最終的な死者数については未だに議論が決着していない。

当時のイスラエル政府は、イスラエル国内で合計56人の命を奪い数百人を負傷させた自爆テロへの対処と防衛措置として、1967年以来最大規模の軍事動員による「防衛の盾」作戦を行ったのだった。

イスラエル軍が月曜日に開始したジェニンへの攻撃により発生した負傷者を病院に搬送するパレスチナの医療従事者たち。(AFP)

両軍事作戦のインターバルとなる期間、歴代のイスラエル政権は、パレスチナ自治政府を安全保障上のパートナーとして扱うどころか弱体化工作の対象としてきた。それと同時に、イスラエル国内では、二国家解決を支持する政党を踏み潰すように、極右的な入植者グループが政治的勢力を拡大し台頭してきた。

その結果、パレスチナ人の間ではアッバース政権の政策への幻滅が高まり、ジェニンやナーブルスなどの都市では武装グループの人気が高まっている。

この1年間で140人以上のパレスチナ人が死亡し、最近10年間の死者数としては最多となった。そのほとんどが衝突に巻き込まれたための、または、衝突を傍観していた際の死だった。同期間で死亡したイスラエル人は30人だった。

今回のジェニンでの軍事作戦は、現在の所、イスラエル国民からは広範な支持を集めており、中道派のヤイール・ラピード議員ですら支持の声を上げている。「これは、正確で高い質の情報に基づいた、テロのインフラに対する正当な対処です」と、ラピード議員はツイッターで述べた。

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