
エルサレム:イスラエルで22日夜、数万人のデモ隊がエルサレムに向けて行進し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相による物議を醸している司法改革を阻止するべく土壇場の示威行動を行った。一方、同国の元治安当局高官ら100人以上が、同首相に司法改革案成立を止めるよう嘆願する書簡に署名した。
摂氏33度(華氏91度)に達する焼け付くような暑さの中、デモ隊はエルサレムの主要幹線道路を青と白のイスラエル国旗の海に変えた。テルアビブからイスラエル国会に向かう4日間、70キロメートル(45マイル)に及ぶ行進の最後の行程を完了したのだ。
道中、小さな白いテントを並べて3泊しながら行進してきた彼らは、歓声を上げるデモ参加者の大群によってエルサレムに迎え入れられた。彼らは17日に予定されている採決を前に、クネセト(国会)の外で野営するつもりだ。一方、イスラエルの主要ハブである沿岸都市テルアビブでは数万人が街頭に溢れた。
ネタニヤフ首相とその極右同盟勢力は、司法改革は「選挙で選ばれたわけではない裁判官の過度な権限」を抑制するために必要なものだと主張している。しかし、彼らを批判する人々は、司法改革はイスラエルの抑制と均衡の制度を破壊し、この国を権威主義的支配への道に乗せるものだと警鐘を鳴らしている。
この司法改革案は、ビジネス界や医療界のリーダーらから厳しい批判を浴びている。また、主要部隊の予備役の間で、改革案が可決されれば兵役を拒否すると宣言する人が急増しており、国家安全保障上の利益が脅かされるのではないかとの懸念が高まっている。
22日には、元軍司令官、元警察長官、元情報機関トップを含む元治安当局高官ら100人以上も抗議の輪に加わり、イスラエル軍の名誉を傷つけているとしてネタニヤフ首相を非難するとともに改革案成立を止めるよう嘆願する書簡に署名した。
署名者には、元イスラエル首相のエフード・バラック氏と、元国防軍参謀総長・元国防相のモーシェ・ヤアロン氏も含まれている。両者はネタニヤフ首相の政治的ライバルだ。
書簡には次のように書かれている。「この法案は、イスラエル社会が共有するものを踏み潰し、国民を引き裂き、国防軍(IDF)を崩壊させ、イスラエルの安全保障に致命的な打撃を与えようとしている」
「この法案の法制化プロセスは、イスラエル政府と数千人の予備役将校・兵士との間に75年間存在してきた社会契約に違反している。民主国家イスラエルを守るために長年にわたり陸海空軍や情報部門で予備役として志願兵役に就いてきた彼らは今、断腸の思いで兵役拒否を表明している」
イスラエル史上最も持続的で激しいデモが7ヶ月連続で続いた末に、草の根の抗議運動は最高潮に達した。
国会は24日に、政府の決定を「不合理」であるという理由で無効にする権限を最高裁判所から奪うことになるこの法案の採決を予定している。
法案の提案者らは、現行の「合理性」の基準は最高裁判所に国会の決定に対する過度な権限を与えていると主張している。しかし、法案を批判する人々は、稀なケースでのみ発動するこの基準を撤廃すれば、政府が恣意的な決定を通したり、不適切な任命や解任を行ったり、汚職への扉を開いたりするのを許すことになると警鐘を鳴らしている。
24日の採決では、法案の主要部分が初めて承認されることになる。
司法改革案は他にも、国会の決定に異議を申し立てる最高裁判所の権限の制限や、裁判官の選出方法の変更など、司法の権限の抑制を目的とした全面的な修正を要求している。
イスラエル社会の幅広い層から成るデモ参加者らは司法改革を、ネタニヤフ首相とそのパートナーらの様々な個人的・政治的不満に動機付けられた権力掌握手段として見ている。同首相は汚職容疑で公判中であるし、パートナーらはヨルダン川西岸地区におけるイスラエルの支配力を深め、物議を醸しているユダヤ教超正統派の徴兵免除を永続化させたいと考えているからだ。
ネタニヤフ首相は20日の演説の中で、司法改革を推し進める意向を示し、この計画はイスラエルの民主的基盤を破壊するものだとの批判を馬鹿げていると切り捨てた。
同首相は、「それはあなた方をミスリードしようとする試みであり、現実には何の根拠もない」と述べた。
イスラエルメディアの報道によると、兵役拒否を宣言する予備役の急増に危機感を強めたイスラエルのヨアフ・ガラント国防相は、24日の採決を延期すべきだと述べた。これに賛同する人がいるかどうかは不明だ。
AP