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イエメンのスペシャルティコーヒーの「波」が戦火で傷ついた首都に広がる

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27 Jul 2023 04:07:46 GMT9
27 Jul 2023 04:07:46 GMT9

サヌア:砲弾に打ちのめされた建物や道端に書かれた戦士たちへの追悼文の中で、戦時には目立たなかった副産物がイエメンの首都に広がっている。最高評価のハンドドリップを提供する、スペシャルティコーヒーコーヒーハウスだ。

イランに支援されたフーシ派民兵と、国際的に承認された政府を支持する勢力との間で8年にわたる紛争に巻き込まれた、アラビア半島で最も貧しいこの国は、コーヒーと深いつながりがある。

伝説によると、イエメンの西海岸に住む「スーフィー(イスラム神秘主義者)」たちが、15世紀に初めてコーヒーを淹れたのだという。

しかし、イエメンの起業家たちは最近まで、同国最高のこれらの製品を、裕福な海外市場に輸出することに注力してきた。

その中で最も有名なのはモクタール・アルカンシャリ氏だ。戦争初期に特産のコーヒー豆を満載したコンテナを出荷するために死をも顧みなかった彼の行動は、デイヴ・エガーズによる2018年のベストセラー『The Monk of Mokha』に描かれている。

しかし、戦争中に課された港の封鎖や関連する制限により、他のイエメン人たちの目は国内に向けられた。今日、戦争で傷ついたサヌアに、ブルックリンやパリの街角を彷彿とさせるカフェシーンが生み出されている。

「人々はイエメンのコーヒーが高価だと感じ始め、買う気をなくした」と、「デュラール・コーヒー(Durar Coffee)」のラシュド・アフメド・シャゲア氏は、2015年に戦闘が勃発し、輸出市場がどのように悪化したかを振り返った。

そこで彼は、イエメンのアート、そしてイエメン製の木製家具に囲まれながら、国中のコーヒー豆を試飲できる居心地の良い店をサヌア中心部にオープンした。

「私たちは、農家を支援する別の方法を考えなければならなかったんです。」と、シャゲア氏は語る。

「誰もが、イエメンで商売するのは不可能だと言いました。人々には購買力がないと……それでも、私たちは進みました」

サヌア南部のハッダ地区では、フセイン・アーメド氏が2018年に同様の賭けに出て、100万ドルの別荘が点在する通りにカフェ「モカ・ハンターズ(Mocha Hunters)」をオープンさせた。

それは彼にとって、10年以上前に日本人の妻と東京でカフェを創業したときに始まった、長きにわたるコーヒーとの個人的な旅の集大成である。

結婚生活が終わった後、アーメド氏は輸出にも目を向けた。しかし、戦時中であることのハードルや、ドナルド・トランプ前米大統領が導入したイエメン人に対する渡航禁止令が、彼を母国でのビジネスチャンスを考えるように駆り立てた。

アーメド氏がこのカフェを始めたばかりの頃、立ち寄る客の数は片手で数えられるほどだった。

今では、イエメン人も外国人もシンプルなメニューに惹かれ、午後のパティオはほとんど満席だ。ハンドドリップコーヒーと、コーヒー豆の殻から作る伝統的な飲み物、キシュルが750イエメン・リアル(約1.5ドル)、コールドブリューが1000イエメン・リアル(約2ドル)だ。

「まるで波のようです」とアーメド氏は言い、これはコーヒー豆を「魔法の飲み物」に変えた「先駆者」の国としては当然のことだと付け加えた。

彼のスペシャルティコーヒーは、多くのイエメン人が飲み慣れている、ミルクや砂糖の入った商業グレードのコーヒーとは一線を画している、とアーメド氏は言う。

「この運動は、美味しさとは何か、を再提案するものです」と、自尊心のあるトレンドセッターに必要な高慢さを少し含めた口調で彼は言った。

「私たちは顧客に、『あなたの好みや嗜好は私たちには関係ない。私たちが美味しいと思うものを飲んでみなさい』と言うんです」

昨年4月に停戦が発表されて以来、デュラールもモカ・ハンターズも容易になった輸出ビジネスに今も大きく依存している。

イエメンのコーヒーは世界的に有名だ。ブルーボトルコーヒーの創業者であるジェームス・フリーマンは、アルカンシャリのポート・オブ・モカという製品について、「天使の歌声とはこういう味だ」と語ったことがある。

海外における売上は、祖国への郷愁にさいなまれながらも、戦闘のために帰国をためらっているイエメンのディアスポラによってさらに押し上げられている、とアーメド氏は言う。

「海外に住んでいる人たちは、その状況の困難さもあり、自分たちの祖国に対してより感情的になるんでしょう。だから故郷の製品を買うんです」と、彼は語る。

「スペシャルティコーヒーは世界的なムーブメントですが、イエメンではより感情的な理由がそこにあります」

一方、本国に話を戻せば、起業家たちは地元での消費市場に強気だ。特に、停戦状態が定着して経済が改善すればなおさらだ。

現在同国では、人口の3分の2以上が生きるための援助に頼っている。

「ここは将来、中東最大のコーヒーセンターに成長するだろう」と、昨年オープンした1000人収容可能なコーヒーハウス「ハラズ(Haraz)」のマネージャー、ガレブ・ヤヒヤ・アルハラジ氏は予測する。

「私たちには目標があります。それは、イエメンのコーヒーの栄光と文化、そして真正性を取り戻す旅に出ることです」

AFP

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