


ロンドン:6ヶ月前に瓦礫の下から救出されたヒバちゃんは、まだ6歳にもなっていないが、2月にシリアを襲った大地震によって家族全員と自分の足の一部を失った。定期的な治療を必要としている彼女は今、過密な避難民キャンプで遠い親戚と共に暮らしている。
ヒバちゃん(個人の特定を避けるために名前は変えてある)は、2月6日にトルコ南部とシリア北部を襲った2回の地震によって親を失った何千人もの子供たちのうちの一人だ。ユニセフによると、地震によって生活を破壊された子供の数はシリアだけで少なくとも250万人に上るという。
朝の早い時間にトルコとシリアの国境近くで発生したマグニチュード7.8の地震に続き、ほぼ同規模の2回目の地震が発生した。その結果、この地域を襲ったものとしては近年で最大級の人道的災害が起こった。
数万人の死者と、さらに多くの負傷者が出た。住宅、学校、病院を含む無数の建物が倒壊し、住民の大部分が厳しい冬の寒さに晒された。
地震で家族の中の大人を全員失った子供たちは、遠い親戚(彼らの多くも震災から避難した)のもとに身を寄せるか、自力で生きていかなければならなかった。
シリア北西部におけるこの自然災害と人道災害の余波は、地域に大人の親戚がいない孤児たちに対して特に害を及ぼしている。彼らは様々な形態の虐待、人身売買、精神障害に対して無防備になっているのだ。
子供に注力する国際慈善団体「ワールドビジョン」のアドボカシー&コミュニケーションマネージャーであるハムザ・バルハメイェ氏は、親と離れ離れになったり親を亡くしたりしたシリア北西部の子供たちが耐えている苦しみの規模は「極めて大きく、多面的であり深く憂慮すべきもの」であると語る。
「ただでさえ内戦で悲惨な状況だったが、地震は子供たちが直面する苦難に拍車をかけ、彼らの福祉や発達の様々な面に悪影響を与えている」
バルハメイェ氏によると、その苦難には「トラウマや心身医学的問題」のほか、「身体的な負傷・障害、不十分な健康支援、教育の中断」などが含まれるという。
それらに加え、児童結婚や児童労働のリスクが高まっていることも懸念される。内戦で荒廃した地域において武装組織に徴募されるリスクについては言うまでもない。
バルハメイェ氏はアラブニュースに対し、「(男の子は)親と離れ離れになったり、同伴者がいなくなったり、路上生活に行き着いたりするリスクが高い」と語る。「思春期の少年は、武装組織に徴募されるという大きな危険に直面している」
「児童労働や暴力行為、薬物乱用の増加、警察との揉め事などの傾向も目立っている。こういった経験は圧倒的に男の子に多い」
地元の非政府組織(NGO)「スリアナ」の創設者であるダイアナ・アル・アリ氏は、避難民キャンプで子供たちに会うと駆け寄って来て彼女の手を取る子供たちがたくさんいると話す。慰めと安心が欲しいのだ。
孤児でない子供たちも親から殴られることに耐えているケースが多いようだという。親たち自身も大きなストレスを抱えているのだ。
アル・アリ氏はアラブニュースに対し、トラウマに関連した精神疾患の治療を受けられず自殺を図る若者たちに言及しながら、「多くの子供たちが感情的な支えを緊急に必要としている」と指摘する。
同氏が定期的に支援している子供たちの中に、地面に足をつけたがらず、蟻を怖がる女の子がいるという。子供向けの漫画のように、地面を這う蟻たちが動くと地面が揺れると思い込んでいるのだ。
定期的な投薬と通院を必要としているヒバちゃんも同じように、壁と天井を怖がっている。地震の際にあまりにも深刻なショックを受けた彼女は、今でも話しかけに反応しない。
アル・アリ氏の慈善団体は子供たちとその保護者に現金、食品、医薬品、おむつ、さらには娯楽活動まで提供しているという。しかし、被災地の満たされていない人道ニーズはものすごく大きいと同氏は言う。
国連安全保障理事会は7月、バブ・アル・ハワ検問所経由で反体制派支配下のシリア北西部へ国連の人道援助物資を届ける活動に対する承認を更新しなかったため、援助に依存する400万人以上の人々の命に関わるライフラインが断たれた。
決議第2672号が失効した翌日の7月11日、国連の援助物資をトルコから届ける活動の継続を可能にする2つの競合する決議が、一方はロシアにより、もう一方は米国、イギリス、フランスにより拒否された。
シリア北西部における苦境に拍車をかけているのが、夏の焼け付くような猛暑だ。気温が摂氏40度を越えることもあり、国連人道問題調整事務所(OHCA)の報告によるとイドリブ県やアレッポ県北部の避難民キャンプでは火災が発生している。
アル・アリ氏は、ほとんどの人が依然としてメンタルヘルス支援を受けられずにいると指摘したうえで、テントで暮らしながらてんかんと闘っている子供の窮状について話す。「彼は毎月の高額な投薬を必要としています。彼の父親は内戦で殺されました」
テントの多くはとても狭いため横になるスペースが無く、同じ場所に長時間座っていなければならないという。
アル・アリ氏は、「地震が起こった時、この地域で活動する団体はメンタルヘルス支援を提供しなかった」としたうえで、アザーズとジンディレスの2都市に人道支援が集中したということは他の地域に十分な注意が向けられなかったということだと指摘する。
「地震が起こった時、ここで(活動する)団体は多くなかったので、私たちは個人の努力に頼っていました。それに加え、『バイオレット』と『シャファク』というNGOがパンを提供してくれました」
「子供の福祉に割り当てられる資金は十分にありません。私たちは子供たちのための娯楽活動やメンタルヘルス支援セッションを提供している唯一の団体です」
「未成年者に安心感を得てもらうことや、全ての子供を評価してそれぞれのニーズを把握することに特化したプログラムを実施しています」
ワールドビジョンのバルハメイェ氏によると、親を失ったり親と離れ離れになったりした子供たちの保護を妨げている多くの要因のうちの一つとして、内戦と震災の最中に市民に関する文書が紛失したことがあるという。
同氏は、状況は「非常に複雑かつ困難」であり、これらの子供たちが通常の生活を送れるようにするうえで文書の欠如が「大きな障害」となっていると指摘する。
バルハメイェ氏はこの問題について詳しく説明する中で、人身売買などの脅威からの保護を提供しているNGOは存在するものの、「これらのサービスは地元の自治体と十分に統合されておらず、協力もあまり行われていない」うえ、「正式な児童保護メカニズムの不在」も妨げになっていると指摘する。
また、法的身分証明の欠如は子供たちの「権利行使能力」を「著しく妨げている」としたうえで、「自身にも適切な文書がない」親のもとに避難先で生まれる子供が増える中、文書をめぐる問題は「世代を越えた」ものになりつつあると警告する。
「様々な当局が独自の文書を発行することで文書が増殖しているため、さらなる複雑さが加わっています」
バルハメイェ氏によると、文書を発行する当局が統治する地域では文書保持者に短期的なメリットがあるかもしれないが、長期的には深刻な治安上の問題を引き起こす可能性があるという。「特にシリア北西部以外の地域では、シリア政府による恣意的な逮捕や拘留の恐れがあります」
児童保護に割り当てられる資金が限られているうえ、利用可能なリソースを大きく上回るリスクがあるため、数百万人の子供たちが無防備な状態になっているだけでなく、政治・官僚制度的に未決定の状態となっている。
この地域で活動するNGOや慈善団体の間では、児童保護の取り組みが強化されない限り、子供たちを待っているのは暗く不確実な運命だということで広く意見が一致している。