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アラブ諸国がサプライチェーンの各ステップで食品廃棄に取り組む

GCC諸国では、衝動的な買い物の決定と不十分な保存方法が、食品ロスや廃棄の2大原因となっている。しかし、解決策はある。(シャッターストック)
GCC諸国では、衝動的な買い物の決定と不十分な保存方法が、食品ロスや廃棄の2大原因となっている。しかし、解決策はある。(シャッターストック)
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27 Aug 2023 12:08:47 GMT9
27 Aug 2023 12:08:47 GMT9
  • 比較的裕福なGCC諸国では、生活水準の上昇と認識不足が衝動買いの原因となっている
  • アラブ政府は家庭、新興企業、ホスピタリティ業界と連携して食品廃棄と闘う

ジュマナ・カーミス

ドバイ:世界の食品サプライチェーンのほぼすべての段階で廃棄が発生し、コストと貴重な資源を浪費している。これらは環境を破壊し、気候変動を引き起こす温室効果ガスを不必要に大気中に何十億トンも放出している。

国連環境計画(UNEP)によれば、もし全ての食品廃棄物の原因が架空のひとつの国にあると仮定した場合、その国は中国と米国に次いで世界第3位の温室効果ガス排出国になるだろうという。

現在、世界で生産される食料の3分の1が廃棄されている。現在、世界人口の10%が「食料不安」に分類されている。この分類は、毎日十分に栄養のある食品に一貫してアクセスすることができない状況を意味する。

問題の規模をカロリーに換算すると、現在の世界の食料廃棄量は、発展途上国では1人1日あたり約400~500キロカロリー、先進国では1人あたり1500キロカロリーに相当する。

国連食糧農業機関(FAO)によれば、非効率的な収穫方法と農業技術への限られたアクセス、そして浪費的な消費習慣により、毎年約13億トンの食用食品が廃棄されているという。

ドバイを拠点とする新興企業Waste Labの共同設立者であるララ・フセイン氏は、アラブニュースに次のように語った。「廃棄される食品について考えるとき、最終消費者に届く前、つまり農家から小売店までのサプライチェーン全体で発生する食品ロスと、消費者レベルで発生する食品廃棄の両方について話す必要がある」

ドバイを拠点とする新興企業Waste Labは、食品廃棄に取り組もうとしている。(提供)

食品ロスは通常、発展途上国ではサプライチェーンにおける生産段階、つまりインフラや貯蔵施設が貧弱な農場、または大規模市場への輸送中に発生する。

これとは対照的に、先進国での問題はサプライチェーンの末端の小売で見られる。そこでは消費者が衝動買いに走ったり、不十分な保存方法を採用したりすることが多く、その結果、食品廃棄が発生する。

湾岸協力理事会(GCC)諸国では、毎年1000万トンの食品が廃棄されている。

「一般的に、GCC諸国は急速な都市化と人口増加を経験しており、その結果、食料の供給過剰と過剰生産が起こっている」とフセイン氏は言う。

「生活水準の向上、そして食品廃棄の問題や影響に対する認識が低いことも、消費者レベルでの過剰購入や浪費行動につながっている」

調査によると、豊かな国の消費者は年間約2億2200万トンの食品を廃棄しており、これはサハラ以南のアフリカの全食糧生産量(年間2億3000万トンと推定)にほぼ匹敵する。

具体的には、ヨーロッパと北米の消費者は、一人当たり年間約95~115キログラムの食品を廃棄している。サハラ以南のアフリカと南・東南アジアでは、この数値は6~11キログラムである。

GCC諸国は世界で最も食品廃棄率が高い国のひとつである。Waste Labのフセイン氏は、その原因のひとつは文化的規範にあると考えている。

「大宴会や食卓に並ぶ大量の食べ物は、そのまま良いもてなし、そして寛大さを示している」と彼女は言う。

アラブ首長国連邦(UAE)を拠点とする食料品宅配会社HeroGoの創業者ダニエル・ソロマン氏はアラブニュースに対し、GCC諸国における豊かなライフスタイルがいかに食料品の過剰購入につながっているかについて語った(Facebook/HeroGo)。

例えば、イスラム教の聖なる月であるラマダンの間、UAEでは食品廃棄量がほぼ倍増する。

アラブ首長国連邦(UAE)を拠点とする食料品宅配会社HeroGoの創業者ダニエル・ソロマン氏はアラブニュースに対し、GCCをはじめとする中東・北アフリカ諸国では、可処分所得が大きく、豊かなライフスタイルのため食料品を過剰に購入することが多く、それが食料浪費の一因になっていると語った。

「その他の要因としては、過剰生産、不十分な貯蔵、効率的な流通システムの欠如、食料資源の誤った管理などが挙げられる」

同氏は、この地域の厳しい気候も一因であると指摘した。輸入に依存するアラブ諸国では、高温と長大なサプライチェーンが食品腐敗のリスクを高める傾向にあった。

特に果物や野菜に関しての厳格な美的基準から、消費に適しているにもかかわらず、見た目が悪いという理由でスーパーマーケットが仕入れを拒否することがよくある。

ソロマン氏は、「食料品としての基準」を満たさない多くの商品は、消費者の手に届くずっと前に失われてしまうと付け加えた。

「表面的な基準のために、果物や野菜は特定の大きさでなければならず、ほとんどの農産物は小さすぎたり、大きすぎたり、見た目が悪いとされ、スーパーマーケットに届かずに無駄になってしまう」と彼は言う。

寄付されたり、割引キャンペーンで節約の対象になったりしない限り、不合格になった野菜や果物はたいてい埋立地に捨てられてしまう。

フセイン氏は、食品廃棄の量を減らすためには、スーパーマーケットと消費者が「不完全な」青果物を受け入れ、購入するよう奨励する必要があるという。そのためにも小売業者は割引を提供したり、不完全な青果物のための独立した売り場を用意したりするべきだと述べた。

空腹時の買い物客と、彼らが購入する食品の数や種類との関連を調べたいくつかの研究では、特定の買い物習慣の背後に心理的要素があることが繰り返し確認されている。

ある調査によると、空腹時の買い物客は、それほど空腹でない客よりも60%多く買い物をし、食品以外のものを多く買っているという。別の調査では、空腹時に買い物をする人々は高カロリーの食品アイテムを購入する可能性が高いことが明らかにされた。

「事前に食料品の買い物リストを作らない場合、衝動的な買い物をしがちだ。多くの場合、冷蔵庫やキャビネットの中で忘れ去られる食品を購入することになる」とWaste Labのフセイン氏は言う。

同様に、消費期限を誤解して、まだ安全に食べられるのに廃棄してしまうことも多い。

「食料品の適切な保存方法を知らないと、消費期限を延ばす機会を逃したり、時には不幸にも腐敗を早めたりしてしまう」と彼女は言う。

食品廃棄の問題は、ホスピタリティ業界に顕著に見られるという意見もある。

UAEを拠点とするHeroGoチームの活動。(フェイスブック/HeroGo)

国連環境計画の2021年食品廃棄物指数報告書によると、フードサービス部門から発生する年間の廃棄物は、世界の食品廃棄物全体の25%に達すると推定されている。

従って、食品廃棄を削減するための同部門の行動は、状況を逆転させる上で大きな影響力を持つだろう。

HeroGoのソロマン氏は、「ホスピタリティ業界は、過剰な提供、無駄になるビュッフェの料理、客の食べ残しなどにより、食品廃棄の大きな原因になっている」と語る。

これを軽減するために、企業はより適切なポーションコントロールを実施し、余剰食品を慈善団体に寄付し、過剰注文を防ぐために調達プロセスを最適化することができるだろう。

「また、リサイクルを含む持続可能な慣行について従業員を教育し、食品廃棄のパターンを追跡および分析する技術を利用することもできる」と彼は言う。

ドバイの「インターコンチネンタル ホテルズ&リゾーツ」、「ホリデイ・イン」、「ステイブリッジ アル・マクトゥーム」のクラスター・ホテル・マネージャーであるシルビア・マテイ氏は、アラブニュースに対し、ホスピタリティ業界は食品廃棄の大きな原因ではあると思われるが、ビジネス慣行はより持続可能になってきていると語った。

「ホリデイ・イン」、「ステイブリッジ スイーツ アル・マクトゥーム」のマネージャー、シルビア・マテイ氏によると、GCC地域は食のエコシステム全体で持続可能な実践を通じて気候変動に対処することに重点を置いているという。(提供)

「私たちは、私たちの施設全体にわたって厳格な廃棄物管理慣行を実施している。使用済みの油、段ボール、プラスチックを収益の流れに変えるようなリサイクルイニシアチブへの参加は、私たちの持続可能性への取り組みを示している。これは、私たちをCOP28によって設定されたグローバル基準と一致させる」と、彼女は11月にドバイで開催される国連気候変動会議に言及しながら語った。

マテイ氏は、湿った廃棄物を堆肥化(コンポジット)して農家に寄付したり、「不完全な」農産物を調達するためにサプライヤーとパートナーシップを築いたりすることも、ホスピタリティ業界が食品廃棄と闘いながら環境と地域社会の両方にプラスの影響を与える方法だと述べた。

「GCC地域はCOP28に向けて、食のエコシステム全体で持続可能な実践を通じて気候変動に対処することに重点を置いている」と彼女は語った。

食料安全保障の追求もあり、GCC諸国は水耕栽培、垂直農法、アクアポニックスなどの持続可能な農業に投資し、食料生産の地域化とカーボンフットプリントの削減に取り組んでいる。

「サウジアラビアやアラブ首長国連邦のような一部の国では、リサイクルや堆肥化施設を含む廃棄物管理インフラの改善にも取り組んでおり、食品廃棄物の埋立処分を回避している」とHeroGoのソロマン氏は述べた。

食品廃棄物削減イニシアチブの2つの例として、サウジアラビアの「Say Yes to Less(少ない、にイエスと言おう)」キャンペーンとUAEの「Food Waste Pledge(食品廃棄への誓約)」がある。

食品廃棄はUAEでの大きな問題であり、国内で準備された食品の約38%が廃棄され、これに年間35億ドルのコストがかかっている。

これを受けてUAEは、2023年までに食品ロスや廃棄を50%削減することを目標に、政府機関やさまざまな分野のステークホルダーが参加する「Ne’ma」と呼ばれる国家的な食品ロス・廃棄イニシアチブを立ち上げた。

Waste Labのフセイン氏によれば、食品廃棄に取り組む新興企業、中小企業、および大企業にインセンティブを与え、支援することも、GCC諸国がこの問題に取り組むもう一つの方法であるという。

「GCCは、国際的な気候会議や合意への参加、例えばパリ協定や、2023年にUAEがCOP28の開催国となることを含め、食品エコシステムを通じて気候変動の課題に対応するための、重要かつ実効性のある対策に取り組んでいる。」と彼女は語った。

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