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国連事務総長、世界的な不信の高まりと核兵器の性能向上は「破滅のレシピ」と警告

記者会見を行う国連のアントニオ・グテーレス事務総長。2023年5月3日、ケニアのナイロビのギジリにある国連施設。(ロイター)
記者会見を行う国連のアントニオ・グテーレス事務総長。2023年5月3日、ケニアのナイロビのギジリにある国連施設。(ロイター)
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30 Aug 2023 06:08:23 GMT9
30 Aug 2023 06:08:23 GMT9
  • 国際デーを記念して開かれた193加盟国のハイレベル会合において、CTBT発効要件国8ヶ国(米国、中国、エジプト、イラン、イスラエル、北朝鮮、インド、パキスタン)が批准に向けて動く兆しはなかった。

国連:国連事務総長は29日、世界的な不信や分断の憂慮すべき高まりは、核兵器の精度や破壊力の向上を目指す各国の努力と相まって「破滅のレシピ」となっていると警鐘を鳴らした。

アントニオ・グテーレス事務総長は、「核実験に反対する国際デー」に合わせて出された声明の中で、世界各地でおよそ1万3000発の核兵器が備蓄されていることを指摘したうえで、「核実験の禁止に法的拘束力を与えることは核兵器のない世界を目指す道のりにおける重要な一歩だ」と述べた。

国連加盟国196ヶ国のうち、包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名国は186ヶ国、批准国は過去18ヶ月で8ヶ国増え178ヶ国となっている。しかし、1996年の国連総会でCTBTが採択された当時に動力炉または研究炉を持っていた発効要件国のうち8ヶ国がまだ批准していないため、CTBTはまだ発効していない。

国際デーを記念して開かれた193加盟国のハイレベル会合において、この8ヶ国(米国、中国、エジプト、イラン、イスラエル、北朝鮮、インド、パキスタン)が批准に向けて動く兆しはなかった。

イランの外交官であるハイダル・アリ・バルージ氏は、同国は「核実験禁止の遅れに対する非核保有国の不満」を共有すると述べたが、CTBT批准については言及しなかった。

また、「世界から核の脅威をなくすための要」は正に核保有国にあると述べた。

国連の中満泉・軍縮担当上級代表は出席者らに対し、自分は「切迫感を持って」彼らの前に立っていると述べ、それは「世界的な核実験禁止」のための基礎を提供しているCTBTを毀損する傾向が存在しているからだと説明した。

同上級代表は、「核軍縮・不拡散における過去30年間の得難い成果が、高まる核のリスクによって飲み込まれてしまう恐れがある」として、21世紀に入ってからは北朝鮮しか実施していない「核実験に関する成果もそれに含まれる」と述べた。

CTBT機関準備委員会のロバート・フロイド事務局長は、「我々は世界的に困難で憂慮すべき時代に直面している」としつつ、「普遍性に対する機運が高まっている。最近、ソマリアと南スーダンがCTBTへの署名・批准を公約した」と述べた。

欧米諸国を中心とする28ヶ国を代表して発言したオランダのヨーカ・ブラント国連大使は、CTBTを発効させることは「死活的に重要かつ緊急」だと述べた。

また、ロシアによるウクライナ侵攻と「核兵器使用・核実験の脅しは、核軍縮・不拡散の努力を著しく毀損し、それに悪影響を与えている」と指摘した。

さらに、米国をオブザーバーとするこの28ヶ国は、北朝鮮が2006回以降6回の核実験を実施したことを「最も強い言葉で」非難し、同国が7回目の核実験の準備を進めているとの報道に対し深い懸念を表明すると、ブラント大使は述べた。

EUのシルビオ・ゴンザト臨時代理大使は、核実験実施の用意があるとするロシアの発表は同国によるCTBT批准に矛盾するものであり、「この波乱の時代におけるCTBTへの信頼を損なう恐れがある」ものだと述べた。

また、EUは北朝鮮に対し、核実験を禁止する国連安全保障理事会決議に従うことを求めるとしたうえで、同国は「核保有国となることはできず、今後もなることはない」と述べた。

「核実験に反対する国際デー」は、旧ソ連のセミパラチンスク核実験場(現在はカザフスタンの一部)が閉鎖された1991年8月29日を記念して制定された。

カザフスタンのアカン・ラクメトゥリン国連大使は出席者らに対し、1945年に原子爆弾が初めて爆発して以降、「少なくとも8ヶ国が合計2056回の核実験(そのうち約4分の1は大気圏内での実験)を実施し、人類と地球全体に対して長期的な被害と苦痛をもたらした」ことを指摘した。

また、地政学的緊張の高まり、核兵器使用の脅し、そして「さらなる核拡散と核兵器蓄積につながりかねない核共有を目指す傾向」に対してカザフスタンは「極度の不安」を抱いていると述べた。

太平洋の小さな島国キリバスのテブロロ・シト国連大使は、1950年代と1960年代に米国とイギリスが同国の珊瑚礁の島キリスィマスィ島(クリスマス島)周辺で計33回の核実験を実施したことを指摘した。

また、これらの核実験はほとんど保護を提供されなかった同島の500人の住民に「悲劇的な遺産」を残したと訴えた。

核実験の後、多くの人が治療不可能な疾患や合併症を訴え、「その結果ほとんどの人が死に至った」。がん、先天性障害、新生児の異常などが数多く報告されたという。

シト大使は米国とイギリスに対し、「被爆による身体的・医学的問題だけではなく、これらの大量破壊兵器がもたらす心的外傷や世代を超えて受け継がれる害に苦しみ続けている」キリスィマスィ島の住民らを支援するよう求めた。

AP

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