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イスラエルはなぜジャーナリストと戦争するのか?

2023年10月15日、イスラエルによるガザ空爆の跡地を歩くパレスチナ人ジャーナリストたち。(ゲッティイメージズ)
2023年10月15日、イスラエルによるガザ空爆の跡地を歩くパレスチナ人ジャーナリストたち。(ゲッティイメージズ)
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01 Dec 2023 05:12:51 GMT9
01 Dec 2023 05:12:51 GMT9

「真実は戦争の最初の犠牲者である」という考えは、10月7日以降、これまで以上に真実味を帯びている。最低限の事実確認もなしに何度も捏造され、流布された嘘は、米国大統領でさえ何度も恥をかかされた。彼は短期間のうちに何度も騙され、彼のスタッフは重大なミスの後始末を余儀なくされた。ジョー・バイデン氏は、ハマスがイスラエルの幼児を斬首したというイスラエルの嘘や、パレスチナ人が死者や負傷者の数を誇張しているという全くの虚偽の主張、その他多くの主張を完全に信じ込んでしまった。

BBCなどの主要な世界的メディアは公式に謝罪することを余儀なくされ、他の多くのメディアは単に多くの嘘を削除するか、繰り返すのを止めた。

おそらくパレスチナ人の命に最も大きな代償を払わせた虚偽は、ハマスがガザの主要病院であるアル・シファ病院の地下に司令部全体を構えているというイスラエルの主張(写真や図解もついていた)だった。もしイスラエルが国際ジャーナリストをガザに立ち入らせていれば、この特別な嘘は容易に暴かれたであろう。もしCNNのベン・ウェデマン氏やBBCの戦争レポーターたちがアル・シファ病院に立ち入り、このイスラエルの主張がまったくの嘘であることを世界に伝えていたらと想像してみてほしい。もし国際ジャーナリストがガザへの立ち入りを許可されていたら、乳幼児を含め、どれだけのパレスチナ人が今も生きていただろう。

イスラエルはそのような入国を直接許可する必要さえなかっただろう。必要だったのは、ガザ周辺で圧倒的な権力を持つイスラエルは、エジプトがジャーナリストをガザ地区に自由に入らせることを許すだけで良かった。そうする代わりにイスラエルは、強力なメディア・マシンと自国を拠点とする膨大な数のジャーナリストを駆使して、嘘や捏造されたストーリー、人工知能が作り出した仕掛けやグラフィックで、思い通りにプロパガンダの物語を創り上げてきたのだ。

イスラエルは、エジプトがガザとの国境で主権的な行為を行うことを強引に禁止しただけでなく、ラファ検問所に入ろうとするトラックを2度も砲撃しただけでなく、パレスチナのジャーナリストやメディア関係者に対する邪悪なキャンペーンも展開した。

ニューヨークを拠点とする「ジャーナリスト保護委員会」(CPJ)は、29日の時点で、「予備調査の結果、10月7日の戦争開始以来、1万6000人以上の死亡者のうち、少なくとも57人のジャーナリストとメディア関係者が殺害された」と報告している。

カーネギー中東プログラムの『サダ』(Sada)編集長を務めるラフィア・アル・タレイ氏は今週、次のように書いている。「イスラエルによるガザ攻撃は、紛争地域を取材するジャーナリストにとって、1992年以来、最も致命的なものとなった。21世紀において、ジャーナリストにとってこれほど致命的な戦争は他にない」

ウィーンを拠点とする「国際新聞編集者協会」(IPI)は、「イスラエル・ガザ戦争の中で、ジャーナリストと市民の死者数が増え続けていることに恐怖を感じている」と述べ、イスラエルに対し、「国際人道法および人権法に従い、紛争を取材するジャーナリストの権利を守り、記者、メディア関係者、およびその家族の安全を守ること」を強く求めた。アルジャジーラで紛争を取材中に妻、娘、息子、孫を殺されたワエル・ダフドウ記者を含め、多くのジャーナリストの家族が殺されている。

赤十字国際委員会(ICRC)は、戦争法、特に第三ジュネーブ条約は武力紛争を取材するジャーナリストを対象としており、彼らは民間人として扱われなければならないと指摘している。「第79条は、武力紛争地域で危険な職業的任務に従事するジャーナリストは、第50条(1)の意味における文民であると正式に述べている。そのため、彼らは国際人道法の下で文民に与えられている保護の全範囲を享受する」

もし国際ジャーナリストがガザへの立ち入りを許可されていたら、乳幼児を含め、どれだけのパレスチナ人が今も生きていただろう。

ダオウド・クタブ

また、60を超えるパレスチナのメディア施設もイスラエルに標的にされており、これも国際赤十字委員会により、戦争犯罪であると指摘されている。「ラジオやテレビの施設は民間のものであり、一般的な保護を享受している。民間物に対する攻撃の禁止は、20世紀初頭以来、国際人道法により強固に確立されており、1977年第1追加議定書と国際刑事裁判所規程で再確認されている」

国際メディア機関は、国際刑事裁判所への提訴を目標に、ジャーナリストの殺害やメディア施設への攻撃の事例を記録していると言われている。

一方、人道的一時休戦が続く中、アラブおよび国際メディアがガザに入ることを許可され、パレスチナ人の緊迫した状況を報道することが重要である。パレスチナ人たちは制御不能なイスラエル軍と過激な政治家による復讐的な攻撃の標的であり、これらの政治家は彼らの死を権力維持の保証として利用したいと考えている。

エジプトと国際社会、特に米国やヨーロッパ、主要なメディアは、イスラエルからの拒否には納得してはならない。ラファのエジプト・ガザ検問所はアラブとアラブの国境であり、主権国家エジプトは、ガザ地区に入りたいアラブ人や国際ジャーナリストを受け入れる権利と責任を持つべきである。

  • ダオウド・クタブ氏はプリンストン大学の元教授であり、ラマッラー、アル・クッズ大学の現代メディア研究所の創設者兼前所長である。X: Daoudkuttab
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