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恒久的な停戦の可能性はあるのか?

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04 Dec 2023 03:12:31 GMT9
04 Dec 2023 03:12:31 GMT9

7週間近くにわたり血の惨劇、恐怖、戦慄をまき散らし続けるイスラエルとハマスの戦争は、緊急の必要性により4日間の一時停戦が決まり、その後数日間延長された。

たった1週間とはいえ、爆撃、ロケット弾の発射、銃撃が止み、皆が安堵した。一時的な休戦協定により、ハマスが拘束していたイスラエル人の人質と、イスラエルが収監していたパレスチナ人の一部が解放され、切実に求められる人道支援がガザ地区に入ることも可能となった。

イスラエルとパレスチナの長きにわたる紛争の中でも最悪に近い状況下で、ここ数日間の平穏は初めて一筋の希望の光をもたらした。しかし戦闘行為が全面的に再開した今、一時停戦は今後数日・数週間にわたる戦争の軌跡にとってどのような意味を持つのだろうか?

戦闘休止によって、恒久的な停戦やさらなる人道的な休戦が近いうちに実現するという保証はなかった。しかしイスラエルは当初、ハマスを―どのような意味であれ―壊滅させると宣言し、目標を達成するまでは軍事作戦を一時的であっても停止する気はなかったのだ。今回の停戦は、イスラエル側にも、できるだけ多くの人質を解放するために優先順位を変更する覚悟があったことを示している。たとえハマスに再編成の機会を与えることになったとしてもだ。第三者による仲介を経て、このようなパターンが再度起こる可能性もあり得なくはないだろう。

さらに今回の休戦では以下も指摘される。10月7日の攻撃は、パレスチナのイスラム主義組織指導者の歪んだ判断が、極端な形で具現化した結果だった。それでも人質、特に最も弱い立場の人々を解放することが、彼ら自身の最善策であるという認識はハマスにも浸透していたということだ。

ここ1週間の戦闘休止は、両陣営に政治的利益をもたらした。ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いるイスラエル政府は、当然ながら、人質の解放を優先すべしという計り知れない重圧にさらされていた。数十人の人質が解放され帰宅する喜ばしい光景が、その重圧を多少なりとも和らげた。

同時にハマス側も、パレスチナ社会の中で力ある存在として称賛される地位を手に入れた。収監されていたパレスチナ人を解放して、家族と再会させるほどの影響力を持っていると認められたのだ。このことは、少なくとも一時的にパレスチナ自治政府に対するハマスの立場を強化すると共に、イスラエルの監獄からパレスチナ人を解放する唯一の方法はイスラエル市民を人質に取ることだというハマスの主張に説得力を持たせるだろう。

カタール、エジプト、および米国の仲介と支援による停戦協定は、この悲劇的な戦争の転換点となり得るが、戦争の終結はまだまだ遠く、停戦協定が近い将来再び締結されるかどうかも不明である。

当然のことながら、この1週間はイスラエル人の人質と収監されたパレスチナ人の解放に多くの注目が集まっていた。しかし同様に重要なのは、戦闘行為の中断によって、ガザの人々が一時的に戦争の恐怖から逃れてひと息つき、食料、水、緊急医療用品、冬用衣料品などの人道的支援を得られたという事実だ。自宅が破壊されたり、ガザ地区北部から南部に強制的に避難させられたりした何十万人もの人々にとっては、文字通りの「ライフセービング(人命救助)」だった。

人道支援の仕組みは、戦闘が再開されても機能し続けなければならない。このような支援が、あらゆる年代の市民の生存に不可欠なのだ。

一時停戦により、ガザ地区の住民たちは戦争の恐怖の中、つかの間の休息を与えられた。

ヨシ・メケルバーグ

だが、残ったイスラエル人の人質解放に向けた交渉は、ますます複雑になるだろう。ハマスはイスラエルの監獄に収監されている重要人物たちの釈放を目指しているが、子どもや高齢者など最も弱い立場の人質を拘束し続けている限りは実現しないことを知っている。そのような人質の中には深刻な健康状態を抱えている者もいると報告されている。

ハマスが最も興味を持っているのは、長期刑に服しているパレスチナ人の釈放だ。その中にはイスラエルが「血塗られた手」と称し、釈放を拒んでいる者たちも含まれる。

カタールのシェイク・ムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニー首相、CIAのウィリアム・バーンズ長官、イスラエル諜報特務庁のデイビッド・バルネア長官、エジプト総合情報庁のアッバス・カメル長官による先週の会合で、今後のイスラエル人人質の解放に向けて、交渉者は人質を以下5つのカテゴリにまとめたという。兵役に就けない高齢男性、女性兵士、男性予備役兵士、現役の男性兵士、そして捕虜になる前またはその間に亡くなった者の遺体だ。

これは今後の交渉が長引き、はるかに困難で複雑になる可能性を示唆している。ここ1週間で行われた人質と被収容者の解放につながる段階的な協議とは比べ物にならないだろう。特に、イスラエルの軍事作戦が完全に再開された状況ではなおさらだ。

両陣営とも互いに相反する目標がある。それらの目標が交渉を複雑にし、戦闘行為を再開させる大方の要因になっているのだろう。イスラエルの指導部は、ハマスが人質解放に同意したのは軍が圧力をかけたおかげだと主張している。確かに事実かもしれないが、イスラエルはハマスの壊滅を主目標に掲げているため、恒久的な停戦が合意されない限り、相手は残された主要な資産である人質を放棄しようとはしないだろう。

一方で、イスラエルが、収監しているパレスチナ人を大々的に釈放することに同意すれば、ハマスはガザ地区のみならず、ヨルダン川西岸地区やさらに広範にわたるディアスポラで政治的立場を強める可能性がある。

イスラエル当局は、せめて人質と被収容者の包括的な交換の可能性を上げるため、ハマスの指導者を排除するという言辞を控えるべきだった。あるいは、イスラエル外務省のある高官が声明に出したように、カタールがハマスを支持しているという現時点では理屈に合わない憶測を理由に、戦争が終わったらカタールに報復するなどと息巻くべきではなかったのだ。

戦争が再び激化している今、パレスチナ人の大量虐殺とガザの壊滅を顧みずにこのまま軍事作戦を継続することは許されないと、国際社会がイスラエルを説得できるかどうかは未知数だ。ガザ地区南部は、北部から避難してきた多くの人々で溢れかえり、今後何が起こるか非常に懸念される。

今後イスラエルが戦争目標を達成する方法を再考し、より長期的な視野を持つ可能性があるかもしれない―それがただの希望的観測でないことを祈る。軍事力だけがハマスに対処する唯一の方法ではなく、目標を達成するためにはまず政治的・外交的努力が必要だと気づくかもしれない。そうすれば、この紛争に関与するすべての人々と次世代の人々に、安全、権利、繁栄の面で平等を享受できるより良い未来を保証できるだろう。

今はわずかな可能性のように感じられても、決して実現不可能な夢物語ではない。

  • ヨシ・メケルバーグ氏は国際関係学の教授で、チャタムハウスの中東・北アフリカプログラムでアソシエイトフェローを務めている。X@YMekelberg
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