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ガザ地区での残忍な戦争の真実を隠すことができないイスラエルのプロパガンダ

イスラエルは当初からパレスチナ人の死者数に異論を唱えてきた。現在その数は2万人近くとなっており、大半が民間人だ。(AFP)
イスラエルは当初からパレスチナ人の死者数に異論を唱えてきた。現在その数は2万人近くとなっており、大半が民間人だ。(AFP)
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19 Dec 2023 08:12:31 GMT9
19 Dec 2023 08:12:31 GMT9

長年にわたり、イスラエルはプロパガンダの模範的実践者であるという、ほとんど不相応な評価を受けてきた。多くの人は、研ぎ澄まされたメッセージを伝える、巧妙に立ち回るよく訓練された報道官の姿を思い浮かべるが、10月7日以降、この国のプロパガンダはどうなっているのだろうか?

イスラエルの情報戦はガザ戦争の大きな部分を占めている。そして、情報戦やストーリーを自分たちに有利なものにすることに多大なリソースを費やしている。

イスラエルは占領国として、私たちが目にするものの多くを決定する。そして、この国で発生した10月7日の攻撃とその後に関する報道を統制することが可能であった。海外のジャーナリストは、イスラエル軍に帯同する場合にのみガザ地区への立ち入りを許可されている。先週、CNNは単独での立ち入りに成功し、基本的にパレスチナ人ジャーナリストたちが私たちに伝えてきたことを裏付けるだけの衝撃的なレポートを行った。イスラエルは、ガザ地区でインターネットをはじめとする通信を遮断している。まだ伝えられていないストーリーがあることを誰も知る由もない。瓦礫の山の下には、犯罪の可能性を示すどんな証拠が埋もれているのだろうか?

イスラエル軍は、ストーリーをないものにすることができないなら、そのメッセンジャーを殺せということを知っている。一部の報道によると、10月7日以降、イスラエルはガザ地区で少なくとも57人、おそらく最大90人ほどのパレスチナ人ジャーナリストを殺害したという。2022年のイスラエルによるアルジャジーラのシリーン・アブ・アクレ記者殺害をめぐる嘘と誤った情報は、人々の記憶に新しい。

イスラエルのプロパガンダは、訓練を受けた報道官、世界中に十分な人員を配置した大使館、プロパガンダを支援できる衛星組織によって増幅される仕組みだ。イスラエルのメディア路線に異議を唱える者は、しばしば追い回されることになる。10月7日以前のガザ地区の危機状況に言及して、あえてガザ危機の背景を説明したアントニオ・グテーレス国連事務総長さえも、この被害者となった。

通常、イスラエルのメッセージは、すべてのパレスチナ人をハマスとして描写している。大量のパレスチナ人が逮捕・拘束され、下着姿になっている様子が伝えられたとき、証拠がなくてもこれら全員が民兵であるとされていた。この主張を補強するために、ハマスはダーイシュと同一であるかのように伝えられているが、実際はそうではない。

10月7日以降、正確で信頼できる情報の流れを提供するどころか、イスラエルの公式報道は、基本的な精査さえされていないことがよくある。あるとき、首相報道官のオフィル・ゲンデルマン氏は、パレスチナ人がカメラに向けて怪我をしたふりをしているとする画像を投稿した。唯一の問題は、これが「The Reality」というレバノンのドラマの撮影のものだったことだ。すぐに削除されるかと思いきや、この画像はネット上に残されたままになっていた。ゲンデルマン氏にはパターンがある。彼は2年前、ハマスがロケット弾を発射しているとする動画を投稿したが、実際にこれはシリアからのものだった。

イスラエルの公式報道は、正確で信頼できる情報の流れを提供するどころか、基本的な精査さえされていないことがよくある。

クリス・ドイル 

イスラエルのプロパガンダでは、アラブ人を嘘つきとして描写することを好む。10月にはこんなことがあった。イスラエルの公式ソーシャルメディアアカウントは、負傷してシュラウドから抜け出せなくなった少年をパレスチナ人男性が運ぶ映像に使われていたのは、実際には人形であり、ハマスがその画像を投稿し、その後削除されたと主張した。メディアによる事実確認の結果、それは人形ではなく、実際に男の子であったことが判明した。

イスラエルは当初からパレスチナ人の死者数に異論を唱えてきた。ガザ地区のパレスチナ保健省はハマスのプロパガンダの出先機関にすぎないとの発言を含め、ホワイトハウスやほとんどの主流メディアさえもこのような考えに陥らせることに成功した。 しかし、これまでのイスラエルによるガザ地区爆撃の評価によれば、結局はパレスチナの公式発表がイスラエルの数値とほぼ一致することになる。

イスラエルのプロパガンダで最もひどいのは、人道面に関するものだ。イスラエルの駐ロンドン大使は、人道危機はまったく起こっていないとその存在を否定した。これを人道的影響を伴う政治的危機ではなく、単なる人道的危機として扱う者もいる。イスラエルがガザ地区で2万人近くのパレスチナ人(うち61%は民間人)を殺害した後でも、イスラエルの報道官は、あたかもイスラエルが学校、病院、パン屋に投下した爆弾ではないかのように、これはハマスによるものだと相変わらず主張している。犠牲になったパレスチナ人の子どもたち8,000人は、死の責めを負うべきだったのだろうか?

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、基本的にガザ地区にいる多くのパレスチナ人の命をつないでいる国連機関であるため、イスラエルのプロパガンダの格好の標的となっている。イスラエルの公式ソーシャルメディアアカウントは、「ガザ地区北部で見つかった数十発のロケット弾がUNRWAの箱の下に隠されていた」と、あたかもその箱がUNRWAによる共謀の証拠であるかのように主張した。あるイスラエル大使は、「何世代にもわたるパレスチナ人の未来」を破壊したとして、UNRWAのことを非難さえした。また、UNRWAの学校の教師が人質をとったという主張もあるが、これを投稿したイスラエル人ジャーナリストは、この主張についてUNRWAとなんら詳細を共有していない。その裏付けとなる証拠は何も提示されていない。

イスラエルが病院を標的としたことは大きな論争の的となっており、ガザ地区にある36の病院のうち現在機能しているのは8か所だけとなっている。よほどの例外的な状況を除いて、病院に対する爆撃は戦争犯罪である。イスラエルのプロパガンダ担当者は、ハマスの指揮統制センターがガザ地区最大のアル・シファ病院の地下にあったと主張した。これを裏付けるため、特殊効果部門がその様子を模したビデオを作成した。しかし、現時点でそのような指揮センターは見つかっていない。

パレスチナ人看護師のフェイクTikTok動画は、その愚かさにおいて最上級のコメディーであったが、それでも偽情報として拡散した。パレスチナ人と思しき看護師が、アル・シファ病院とされる施設の真ん中に完璧な化粧をして現れ、ハマスがその場所を運営していると主張した。アクセントは酷いものであった。背後の爆発音は偽物に聞こえた。この動画はすぐに削除された。

これらすべてが茶番である。イスラエルは病院をはじめとする多数の医療施設を爆撃した。直近はカマル・アドワン病院で、この施設は事実上破壊された。イスラエルはこれら医療施設が標的となったことを正当化する十分な証拠を提示していない。

果たして、このプロパガンダに効果があるのかは疑問だ。それは特定のストーリーを確立するのに役立っているのか?イスラエルの論点は確かに大きな注目を集めているが、おそらく紛争が続くにつれて、イスラエルの信頼性がこれまで以上に疑問視されるようになっている。

しかし、あらゆる戦争でイスラエルがパレスチナ人に対して行っているように、巧妙なプロパガンダであるかないかに関わらず、イスラエルのあらゆる努力を打ち砕き、台無しにする要素が一つある。それは、パレスチナ地域が見舞われた途方もない破壊の規模である。大量の都市の瓦礫、巨大なクレーター、ペッチャンコになった都市景観というほんの数枚の写真だけでも、中立の人々が知る必要のあるすべてが伝わる。これは標的を絞った自衛行為ではなく、捕らわれた民間人に対する長期にわたる無慈悲な大量砲撃であり、今世紀のどの攻撃よりも残忍なものだ。

  • クリス・ドイル氏はロンドンのアラブ・英国理解評議会のディレクターである。 X: @Doylech
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