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ガザ戦争に関するICJの判決はゲームチェンジャーになるだろう

歴史上初めてイスラエルは世界最高裁判所である国際司法裁判所(ICJ)に出廷する。(ファイル/AFP=時事)
歴史上初めてイスラエルは世界最高裁判所である国際司法裁判所(ICJ)に出廷する。(ファイル/AFP=時事)
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10 Jan 2024 05:01:57 GMT9
10 Jan 2024 05:01:57 GMT9

イスラエルは、ガザでジェノサイド(大量虐殺)戦争を行った罪を犯している。それが世界中の何百万という人々の結論だ。イスラエルの罪は、国際世論の法廷においてすでに立証されている。それでもなお、こうした前例のない反発にもかかわらず、ガザでの殺戮は続いている。しかし11日、歴史上初めてイスラエルは世界最高裁判所である国際司法裁判所(ICJ)に出廷し、南アフリカが提出した、ガザでのジェノサイド行為を非難する申し立てに対して自らを弁護し、15人の裁判官からなるパネルが最終的な判断を下すまでの暫定措置、つまり裁判所による仮裁定を求めることになる。

これは歴史的な出来事だ。イスラエルは何十年もの間、ヨルダン川西岸地区とガザ地区の占領を調査する国連機関をボイコットしてきた。国連加盟国であり、国連憲章の署名国であるイスラエルには、裁判所に出廷するか、法的な結果に直面するか以外の選択肢はない。現在、その提訴を支持する国が増えつつある南アフリカが、ICJを選んだという事実は興味深い。イスラエルは「国際刑事裁判所(ICC)に関するローマ規程」に加盟しておらず、その判決を回避するために強力な主張をすることができる。ICCは、イスラエルによるパレスチナ地域の占領に関する意見を求めるパレスチナ自治政府の申請について、まだ判決を下していない。一方、すべての国連加盟国はICJの規約に加盟しており、その判決には拘束力がある。

2日間にわたるICJの審問は一般公開される。世界中の何百万という人々が、確実にこの審問を傍聴することだろう。戦争犯罪とアパルトヘイトの実体験を持つ南アフリカを代表する弁護士や専門家もいる。チリ、ボリビア、マレーシア、ヨルダンなど他の国からも数百人の専門家が提訴の支持を表明するだろう。イスラエルはイギリス人弁護士のマルコム・ショー氏を代表に選んだ。彼は国際法の世界的な専門家として知られ、毎年エルサレムのヘブライ大学でゲスト講師として講義を行っている。

イスラエルは、元高等裁判所の裁判官を15人のパネルに指名する権利を行使している。

イスラエルの同盟国も侵略停止命令を無視した場合、共犯とみなされるだろう。

オサマ・アル・シャリフ

ICCが戦争犯罪、ジェノサイド、民族浄化、人道に対する罪で個人を起訴することができるのに対し、ICJは国家間の紛争を審査する。イスラエルは、ガザにおけるイスラエルの軍事作戦を裁判所が調査する筋合いはないと主張し、時間を稼ぐかもしれない。しかし、それで事態が変わるとは思えない。イスラエルがガザで国際法を遵守していることを証明することは不可能だろう。この裁判所の判決は、裁判所自体の信頼性を試すことになる。

ICJは1945年の設立以来、数多くの訴訟を扱っていたが、ジェノサイドの事例で際立っているのは、1996年にボスニア・ヘルツェゴビナが提訴した旧ユーゴスラビア、セルビア、モンテネグロに対する裁判である。裁判所が最終判決を下すまでに11年を要し、有罪判決が下された。

ここで重要なのは、南アフリカの提訴は、現在進行中のジェノサイド事件に関するものだということだ。ICJが双方の主張を聞き、最終判決を下すまで何年もかかるかもしれない。それまで、すべてのイスラエルの軍事活動を停止するよう命令するためには圧力が必要だ。

ICJの判決が国連加盟国に拘束力を持つという事実も重要である。イスラエルは仮処分命令を無視するかもしれないが、その同盟国、特に米国は侵略停止命令を無視した場合、共犯とみなされるだろう。

ICJは間違いなく、極めて緊迫した訴訟を扱うことになる。イスラエルは10月7日のハマスの攻撃を、ガザでの「自衛」作戦を正当化する理由として提示するだろう。しかし、南アフリカチームは、国連、人権団体、その他のNGOによる中立的な証言に依拠し、イスラエル軍がガザでジェノサイドとしか定義しようのない行為を行っているという、反論の余地のない証拠を提示するだろう。ガザでは、3カ月以上にわたる侵略の結果、1万人の子どもを含む2万4千人以上が死亡し、さらに100人以上のジャーナリストが死亡、6万人以上が負傷し、30以上の病院が破壊された。少なくとも7000人が行方不明で、死亡したとみられている。そして、ガザの70%以上が破壊された。

南アフリカチームはまた、イスラエルの高官がジェノサイド、民族浄化、戦争犯罪を呼びかけている証拠も提示する。イスラエルによるガザの住宅地全体の意図的な破壊を示す何千ものビデオクリップが提示される予定だ。

この裁判の結果が前例となり、今後複数の裁判に道が開かれる可能性がある。

オサマ・アル・シャリフ

戦争を停止するための仮処分命令は不可欠である。それは、独立したオブザーバーや国際メディアが、過去3カ月間にイスラエルが何をしたかを現地で目撃することを可能にする。被害を受けた何万人もの生存者の証言は、ガザ地区で起こった、そして現在も続いている恐ろしい行為の記録を作成するだろう。仮処分命令は、人道支援、医師、医療従事者、救急車、食料、水、薬の搬入を可能にし、何万人もの命を救う可能性がある。

2日間の審問は、ガザにおけるイスラエルの残虐行為をさらに露見させることになるだろうが、イスラエルは裁判官に証拠を無視するよう圧力をかけるだろう。もしそうなれば、裁判所とその信頼性に大きな影響を与えるだろう。

一方、ICJが最終判決を下した場合、ICCには行動する責任が発生する。これまでのところ、ICCの主席検察官カリム・カーン氏は、ガザでの殺戮行為についてほとんど言及していない。彼は、10月7日の攻撃で被害を受けたイスラエルの家族を訪問する招待を受け入れながら、ガザでは同様のことを行わなかったことで、イスラエルに有利な偏見を露骨に示した。

イスラエルが欧米の政治家、国連加盟国や政府高官に多大な影響力を持っていることは間違いない。イスラエルは反ユダヤ主義を道具として使い、弱者として振る舞いながら、反ユダヤ主義に歯向かう人々を脅し、傷つけようとしているのだ。ICJでの裁判は、イスラエルが初めて世界で最も重要な裁判所の被告として立つ場面となる。この裁判の結果が前例となり、イスラエルの犠牲者のために、個人的または集団的にも、将来的に複数の裁判への道が開かれる可能性がある。さらに重要なことは、南アフリカに有利な判決が下されれば、ICCはイスラエルの兵士、将校、政治家たちが、世界の他の多くの国々がすでにジェノサイドと定義していることを扇動するために何をしたのか、あるいは何を言ったのかについて、踏み込んで調べざるを得なくなるということだ。

  • オサマ・アル・シャリフ氏はアンマンを拠点に活動するベテランジャーナリスト、政治評論家である。 X: @plato010
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