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ガザ紛争と麻痺状態の国連安保理

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13 Jan 2024 11:01:01 GMT9
13 Jan 2024 11:01:01 GMT9

昨年9月の国連総会期間中のテレビインタビューで、アントニオ・グテーレス事務総長は、権力、特に安全保障理事会のそれは、自分の手中にではなく、理事会を構成する国々にある、と述べた。グテーレス事務総長にあるのは発言力、そして招集権だ。

当時、ウクライナでの戦争に注目が集まっていたが、グテーレス事務総長はそれを止めさせようとして介入する力が自分にはないことについて語っていた。彼は安保理の状況を「政治的決断力の麻痺」と表現した。地政学的な分裂が、行動を起こす能力を麻痺させていたのだ。

民間人を保護し、戦争や残虐行為を防ぐために安保理が行動できなかったのはこれが初めてではなかったが、数週間後に勃発したガザでの戦争は、この麻痺がより深刻なものであることをはっきりと示した。安保理が国際社会の平和と安全を維持するという主要な責務を果たしていないことが明白になったのだ。安保理メンバーの国々はそれぞれ、特に常任理事国5か国は力を持ってはいるが、自国の利益になる場合にしか介入しない。たとえ罪のない人々が殺され、騒乱に巻き込まれ、苦しんでいても。

それで、疑問が生じる。安保理の目的は何なのか?

インタビュー当時、グテーレス事務総長は国連の人道部門の活動に誇りを持っていた。イスラエルはすでに16年間もガザを封鎖してきたにもかかわらず、人道支援が同地区に届くのを許さず、そうした活動さえも非効率的で不十分なものとなっている。国連の職員や施設までもが標的にされ、わずか数か月の間に、ジャーナリストはもちろん、他のどの紛争の場合よりも多くの国連職員が死亡した。一方、ガザのパレスチナ人は殺され、強制的に立ち退かされ、移住させられて家もなく、飢え、渇き、病気、寒さに苦しむままにされている。ガザ全体が瓦礫と化し、居住不可能となった。世界中が、そして安保理が、見守る目の前で。

この国際社会システムにいくらかの希望を抱き、信じていた多くの人々の、失望と幻滅は大きい。すでに弱く、権利を奪われ、無力だった人々は今や、絶望し、見捨てられたと感じている。

しかし、復讐心に燃える、凶暴で、非人道的なガザへの侵略を止めさせ、加害者を裁く手段はまだある。南アフリカは、イスラエルが1948年のジェノサイド条約に違反しているとして、ハーグの国際司法裁判所に提訴した。これは国連の主要な司法機関であり、国際法に沿って、国々から提出された法的紛争を解決し、国連の機関および組織によって提起された法的問題に勧告的意見を述べる役割を持っている。

2日間にわたる審理を経た今、世界は、国際司法裁判所が実際にどれほどの権限を持っているかを見ようとしている。南アフリカは要請の中で、「ジェノサイド条約に基づき、パレスチナの人々の権利に対する深刻かつ回復不可能なさらなる被害から彼らを保護する」ため、また「ジェノサイド条約に基づいてイスラエルが確実に、ジェノサイドに関与せず、ジェノサイドを防止し、処罰する義務を遵守するようにする」ための、暫定措置を求めた。

南アフリカは、イスラエルが1948年のジェノサイド条約に違反しているとして、ハーグの国際司法裁判所に提訴した。

マハ・アキール

政治と権力はこの裁判の進展に影響を与えるのだろうか?何が予想されるか?誰がどちらの側に立つのか?そして、裁判所の判決を誰が施行するのか?

ガザの戦争は多くのことを明らかにした。西側諸国のダブルスタンダード、偽善、支配、覇権主義。人権と国際法は、特定の人々にしか適用されないようだ。表現や報道の自由は、それを定義して境界を定める人々の都合に合う場合にのみ、最重要なものとなる。

西側諸国、特にアメリカは、信頼性と倫理的指導力を大いに損なった。おそらく、この戦争で明らかになった主要な点のひとつは、イスラエルのロビー団体がアメリカの政治や社会にどれほどの権力や影響力を行使しているかということだろう。政治家として長く成功したければ、ハリウッドで仕事を続けたければ、メディアの仕事や学問的地位を維持したければ、「あの方」のお気に入りでいなければ。さもなければ、反ユダヤ主義のレッテルを貼られて信用を失い、破滅するか、何か別の深刻な非難に巻き込まれることになる。

幸運にも、安保理の常任理事国5か国のいずれかの保護下に入ることができた国は、迫害を免れ、堂々と行動する自由を保証される。そうでなければ、国際法や義務に対する違反の責任を問われることになる。

おそらくこれが、外交的・平和的手段を封じられた武装した非国家プレイヤーが行動範囲を広げている理由だろう。彼らは主導権を握り、現状を破壊し、それに挑戦している。

これは平和と安全にとって良い兆候ではない。

テレビインタビューでグテーレス事務総長は、平和を作り、維持する国連の活動に対する信頼を損ねる、安保理メンバー間の分裂と予測不能性の高さに対する不満を表明した。時代遅れで機能不全の安保理のせいで、人々は危機や災害に対してより脆弱になり、全世界で暴力や人道的惨状が悪化するリスクが生じている。

今こそ、安保理の構造、特権、役割を改革すべき時だ。現状をほおっておくことは平和と安全につながらない。権力者の支配と覇権主義を破壊し、それに挑戦する手段を持つプレイヤーがさらに台頭し、新たな可能性、環境、関わり合いが生まれ、それがさらなる危機、戦争、苦しみをもたらすかもしれないのだから。

・マハ・アキール氏はサウジアラビアのコミュニケーション、社会開発、国際関係の専門家である。国連のシニア・ウーマン・タレント・パイプラインのメンバー。X: MahaAkeel1

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