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このまま続けることはできない――今すぐに停戦と人質解放を

今度こそ、長くはびこってきたすべての要因を包括的に解決することなくして、ガザの再建はありえない。(AFP filephoto)
今度こそ、長くはびこってきたすべての要因を包括的に解決することなくして、ガザの再建はありえない。(AFP filephoto)
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18 Jan 2024 12:01:43 GMT9
18 Jan 2024 12:01:43 GMT9

最初に2つのことを明言しておく。第一に、2023年10月7日にハマスなどが実行した攻撃は、残虐でけっして正当化されるものではなく、実行犯は厳罰に処されるべきだ。第二に、わたしはイスラエル国家の存在を国会議員として、また閣僚として一貫して支持してきたし、今も支持している。

だが、10月7日以降の経緯をこれ以上続けることはできない。そして今、英国と米国は白紙状態から考え直して、イスラエルに地上軍攻撃を終結させるよう促し、現状を変える第一歩として停戦を呼びかけるべきだと、わたしは確信している。この決断は不可避であり、また急を要する。

実利的観点からいえば、イスラエルの真の友である両国は、人質の安全な解放とハマスの解体という目的が現在の方針では実現に近づいておらず、今後も達成される見込みがほとんどないことを根拠とすべきだ。これまでに実現した人質解放は、ほとんど例外なく交渉の結果だ。現在の武力衝突がハマスの現時点での戦力を削ぐ可能性を示す証拠はあるが、代償としてハマスへの支持は拡大しており、膨大な数の将来の戦闘員候補を生み出している。そこには、ガザ地区とヨルダン川西岸地区で日々増え続けている、孤児や負傷者が含まれるだろう。

人質の安全な解放とハマスの解体という目的は達成に近づいていない

アリステア・バート

さらに視野を広げると、ガザ地区での恐るべき人道危機の惨状と無辜の人々の死は新たな次元に突入しており、この紛争の長い歴史においてさえ、前例のない先鋭化の様相を呈している。イスラエル高官の間にはこうした侵攻のリスクを訴える声もあったが、ネタニヤフ政権の強硬派は耳を傾けなかった。恐ろしいことだが、現状が果てしなく続く可能性はある。さらには高まるエスカレーションの脅威が周辺地域にまで波及するという、新章が幕を開けることさえ考えられる。

そんなことは許してはならない。この地域のほぼすべての外交官は、現状をきわめて深刻に受け止めている。ヨルダン川西岸、東エルサレム、ガザの一触即発から目を背け、偽りの安心感に浸っていた、10月6日の状態に戻ることはもはや不可能だというのが、かれらの共通認識だ。今度こそ、長くはびこってきたすべての要因を包括的に解決することなくして、ガザの再建はありえない。後戻りはできないし、このまま続けることもできない。

この現実を真摯に受け止めるなら、今求められている発想の転換を反映した行動をとるべきだ。10月7日の事件だけを見て、それ以外のすべての文脈を否定する、イスラエルにとっては困難だろう。だが、ほかに道はない。イスラエルは、武力とフェンスによって自国民に安全を保障することに失敗したのだ。

パレスチナの自治能力を削ぎ、ハマスを黙認しながら、パレスチナ人を孤立させることで問題を「管理」しようとしたイスラエルの政策も、成功には至らなかった。

加えて、イスラエルと同盟国は、占領というタブーを直視し、実態に即した表現で呼び、入植活動を口先では批判しながら一切の制裁を課さないというルーティンが、イスラエルの国益に沿わないことを認めるべきだ。

代わって直視すべきは、あまりに多くの国々がイスラエルの国際法違反に対する一切の責任追及を妨げてきたために、同国の一部の政治家たちの間に芽生えた、何をしても罪に問われないという感覚が、もはや泡沫の過激思想家だけでなく、閣僚にまで浸透していることだ。そのうえ、いまや一部のイスラエル国民はパレスチナの全領土の支配を熱狂的に支持し、かれらの対極でイスラエル国家の殲滅を主張する集団に匹敵するほど過激化している。

だが、イスラエルと同盟国がこうした現状を認めなければならないのと同様、他の国々も方針と行動を変えなければならない。イスラエルとイスラエル国民には安全を希求する権利があり、安全保障もないままに、国家やユダヤ人の殲滅を目論む集団に対する敵対行動をただやめるよう、かれらに求めることはできない。人質は今すぐ解放されなければならない。

今度こそ、長くはびこってきたすべての要因を包括的に解決することなくして、ガザの再建はありえない

アリステア・バート

すべてのアラブ諸国、それに過去にハマスを支援したあらゆる国は、ハマスとその指導者に対し、このような政治やジェノサイド思想に未来はないこと、かれらがイスラエル国家の存続を支持すること、ハマスはすべての関係諸国に対する脅威であり、戦争を終結させないかぎり抵抗と反撃を受けつづけることを伝えなくてはならない。こうした変化は、イスラエルが占領に終止符を打ち、ヨルダン川西岸、東エルサレム、ガザにおけるパレスチナ人の自治こそが今後のイスラエルの方針であると宣言し、即座に転換に着手することなくして起こり得ない。

無理難題を言っているのは承知だが、ほかに選択肢があるだろうか? ひとつの国家か、2つの国家か、恒久的戦争かなのだ。各国とその指導者は、西側諸国も中東諸国も、触れたくない不都合な事実から長年にわたり目を背けつづけてきた。その間、無数の人々が無策の代償を強いられ、いまや10月7日とそれ以降に命を落とした人々とその家族が加わった。もう終わりにしなければならない。そのためには、すべてのパレスチナ人とイスラエル人にとっての正義と安全をめぐる不可分の方程式を、過去にかれらの信に背いたわたしたち全員が認識し、そのために交渉を重ねて、かならず実現させなければならないのだ。

  • アリステア・バート氏は元英国国会議員。2010年〜2013年に政務次官として、また2017年〜2019年に中東担当閣外大臣として、外務省の要職を二度務めた。X: @AlistairBurtUK
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