30年前から明白だったひとつの事実を、西側諸国の指導者たちは、イスラエル首相が公言してようやく信じるようになった。イスラエルには、パレスチナ人がみずからの土地で自由に生きることを認める計画もなければ、意思もないということだ。これはハマスやガザについての話ではなく、1967年に占領されたパレスチナ人の土地の話だ。当時、国連安保理決議242号の序文には、戦争によって領土を獲得することは「許容できない」と明記された。
パレスチナ人は、イスラエルの和平の訴えが嘘であることをずっと前から知っていた。既成事実をつくり、パレスチナ人の独立国家の樹立を不可能にするという、イスラエルの行為を直接目の当たりにしてきたからだ。イスラエルは入念に戦略的拠点を選び、ユダヤ人だけが居住を許される入植地を建設し、不可分の自治権を実現するためのパレスチナ人の本格的な取り組みをことごとく頓挫させてきた。
確かに、イスラエルはたびたび和平への支持を表明してきた。そして協力姿勢の欠如、暴力の扇動、「ユダヤ人国家」の概念の拒絶に関して、パレスチナ人を繰り返し非難してきた。しかし現実には、これらは国際社会を欺くための煙幕にすぎない。
世界の主要国は入植に反対してきた。あるときは和平への障壁であると批判し、またあるときは、オバマ政権末期にあったように、法的拘束力のある国連安保理決議のなかで不法行為と明言した。だが、イスラエルが代償を支払うことは一切なく、かれらが国際社会の意思を無視することをためらう理由は存在しなかった。
イスラエルが代償を支払うことは一切なく、かれらが国際社会の意思を無視することをためらう理由は存在しなかった。
ダオウド・クタブ
10月7日のイスラエルへの攻撃と、その後の「捕虜を一切とらない」スタイルの報復は世界を震撼させ、再び国際的議論を活性化させた。自然な流れとして、政治家たちは今後の計画の議論に戻り、ガザ紛争の終結の暁には、パレスチナ人の正当な要求を実現するための政治的解決策を見つけ出さなくてはならないと(今回は少しばかり真剣に)主張するようになった。
これにより、イスラエルのベニヤミン・ネタニヤフ首相は、過去30年にわたって自身はパレスチナ国家に一貫して反対しており、自身が権力の座にあるかぎりけっして実現させるつもりはないと、認めざるを得なくなった。
国際社会はまたしても、こうした発言を批判しつつ、批判を圧力に転換し、(パレスチナ国家樹立という)目標達成に向けた不可逆的プロセスを開始することに失敗した。西側諸国はこうしたプロセスを構築するための政治的武器を手にしている。かれらは(しばしば国会決議でそうするように)自国民の要望に従い、1967年の国境に沿ったパレスチナ国家を承認することができる。こうした決断はパラダイムシフトをもたらすだろう。
オスロ合意の漸進的プロセスは機能しなかった。イスラエルは合意を盾にして、人口稠密な都市を防衛して安心を得るかたわらで、入植活動を推進してきた。ヨルダン川西岸地区の入植者人口は、ホワイトハウスの芝生の上でイツハク・ラビンとヤセル・アラファトが歴史的な握手を交わしたあとの30年で、4倍に増加した。
パレスチナ人の独立国家を拒絶するイスラエル国民の世論は、異なる形での解決を要求するまでに過激化した。イスラエルが「川と海の間の土地」をパレスチナ人と共有することを拒むなら、現実的に唯一の代替案は、歴史的パレスチナ領において、イスラエルがパレスチナ人との権力の共有を受け入れることだ。
パレスチナ人の独立国家を拒絶するイスラエル国民の世論は、異なる形での解決を要求するまでに過激化した。
ダオウド・クタブ
元ヨルダン副首相で、現在はカーネギー国際平和財団の研究部門副代表を務めるマーワン・ムアシェー氏は先月、この事実を国連安保理で明確に述べた。世界はイスラエルが全地域を支配し、アパルトヘイトや戦争犯罪を繰り返すことを認めないと、ムアシェー氏は説き、必要なのはイスラエル人とパレスチナ人の平等を実現するプロセスであると訴えたのだ。
先日、ユダヤ人入植者と対話するネタニヤフ首相の動画がリークされ、そのなかで首相は、自身がオスロ合意プロセスを反故にするために動いてきたこと、占領地を維持し、パレスチナ国家を拒絶する意図をもっていることを認めた。この問題が明るみに出た以上、選択肢はもはや火を見るより明らかだ。二国家解決案の推進には、本格的な圧力と、パレスチナを国家として、ひいては占領下にある国連加盟国として認めることを必要とする。あるいは別の選択肢として、ヨルダン川と地中海の間に暮らす全住民が等しい政治的権利をもつことを保証するための、新たなプロセスに着手しなければならない。
ガザでの戦争は最悪の形の人道災害を引き起こしており、その余波は数十年にわたって続くだろう。だが、この戦争でひとつの問題が明らかになった。イスラエルの和平主張の嘘、かれらがパレスチナ人の土地の軍事的占領を継続する言い訳だ。ネタニヤフ首相の先日の発言により、パレスチナ人の主張の正しさが裏づけられ、パレスチナとイスラエルの紛争は2023年10月7日に始まったものではないという、アントニオ・グテーレス国連事務総長の声明が脚光を浴びた。
国際社会が対峙する課題は明らかだ。二国家解決案を本気で追求するなら、パレスチナを国家承認し、イスラエルとパレスチナそれぞれの正当な代表者に、二国家の国連加盟の手順を進めるための交渉を促すべきだ。それができないならば、イスラエルに対し、支配地域のすべての住民に等しい政治的権利を与えるよう、強制力を行使することに全力を注ぐべきだ。端的に言って、イスラエルは歴史的パレスチナ領において、土地を共有するか、権力を共有するかのどちらかを選ばなくてはならない。第三の選択肢はないのだ。