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西側諸国はUNRWAに対するイスラエルの主張を信じるべきではなかった

イスラエルは少なくとも12人のUNRWA職員が昨年10月7日の襲撃に参加し、その際に国連の車両を利用したと主張している(File/AFP)
イスラエルは少なくとも12人のUNRWA職員が昨年10月7日の襲撃に参加し、その際に国連の車両を利用したと主張している(File/AFP)
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31 Jan 2024 07:01:21 GMT9
31 Jan 2024 07:01:21 GMT9

多くの西側諸国が同時に、中東における最も重要な国連機関の1つへの財政支援を停止するという決定を下したのは、決して無害な行為ではない。誠実さをもって知られているわけではないイスラエル政府は、国連難民救済事業機関(UNRWA)の1万3,000人の職員のうち、12人のパレスチナ人に対する証拠をでっち上げ、欧米の主要国政府と共有した。イスラエル政府は、この12人が10月7日のイスラエル人襲撃に参加し、その際に国連の車両を使用したと主張している。

情報の1つたりとも公表されず、独立に検証されてもいない。これはイスラエルが常に行ってきたやり方と合致している。告発し、表面的な証拠を提供するが、本格的な調査への協力は拒否するのだ。告発による害がなされて数ヵ月後には、イスラエルはこの問題が忘れ去られることを期待する。驚くべきは、ドミノ効果の起こる速さで、UNRWAが容疑をかけられた12人を解雇し、本格的調査を始めたという事実の主張や受け入れに対してはほとんど関心が払われない。

イスラエルは過去にあまりに多くの嘘をついてきた上、そのことは徹底的かつ繰り返し証明されてきたにもかかわらず、なぜ多くの尊敬すべき国々が再びその嘘に引っかかったのかには首をかしげざるを得ない。最近の事例をいくつか紹介しよう。イスラエル人たちは、昨年10月7日の襲撃で斬首された赤ん坊がいると主張し、そのニュースはアメリカ大統領にまで届いたが、イスラエル軍によって誤りであるとされ、否定さえされた。組織的なレイプがあったと唱えられ、主張されているが、いまだその証拠は示されていない。

この件でも、他のすべての場合と同様、イスラエルは国連との全面的な協力は控えるだろうが、自らに都合の良い証拠だけを提供するだろう

ダオウド・クタブ

以前、イスラエルはパレスチナの6つの人権団体をテロリスト集団だと非難し、欧米の援助国や財団に支援を止めさせようとした。しかし、資金提供者が反論の余地のない証拠を要求し、イスラエル政府がそれを提示できなかったため、この企図は失敗に終わった。実際、イスラエルはテロリストだと主張する団体の代表を逮捕する動きすら起こしていない。イスラエルはビサン研究開発センターの米国系パレスチナ人代表、ウバイ・アブーディ氏がヨルダン川西岸地区から出ることを禁止している(米国とイスラエルの合意に対する明らかな違反である)が、これまでに彼を逮捕しようとはしていないのだ。

おそらく最も露骨な証明されていない告発は、NGO「ワールド・ビジョン」の前ガザ代表、モハメド・エル・ハラビ氏に対するものだろう。イスラエルは、同氏が5,000万ドルをハマスに横流ししたと非難したが、この非難を裏付ける証拠はひとつも提出できなかった。その金額が、被占領地におけるワールド・ビジョンの全予算の10倍以上であるという事実がある。刑務所に6年間収監されているエル・ハラビ氏は、間違ったことはしていないと主張して、司法取引により自由の身になることを拒否している。

拷問と尋問の際に聴力の40%を失ったエル・ハラビ氏は、肉体的な圧力に耐えた。しかし、先週解雇された12人のUNRWA職員は拷問に耐えられず、強要されてどんな書類にでもサインするかもしれない。

このUNRWAの件でも、他のすべての場合と同様、イスラエルは国連との全面的な協力は控えるだろうが、自らに都合の良い証拠だけを提供するだろう。数ヵ月経っても、国連は調査を完全に終えることはできないだろうが、告発による被害はすでに生じてしまっているのだ。

UNRWAはイスラエルと世界に対し、パレスチナ難民問題とパレスチナ難民の帰還の権利を想起させる

ダオウド・クタブ

仮にこの規律正しい機関のごく一部の職員が犯罪に関与したことを受け入れるとしても、なぜ機関全体が罰せられるのか。さらに重要なことは、UNRWAのサービスを切実に必要としているパレスチナの人々をなぜ罰するのか、ということだ。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、国際司法裁判所の命令を遵守してパレスチナ人に援助を提供できる最も信頼できる組織なのである。

イスラエルの決断のタイミング(彼らが西側各国政府に電撃的に流した情報をいつから保持していたのか我々は知る由もない)も疑わしい。イスラエルが西側諸国政府に対して同時に行った取り組みには、明らかに別の動機があった。国連機関である国際司法裁判所は、イスラエルに対するジェノサイドの訴えに対する中間評決の際、他の国連機関の報告書を受け入れ、引用している。報復としてイスラエルが試みているのは、国連機関は信頼性を欠いていると示すことなのだ。

さらに、一般的な国連機関、特にUNRWAに対するイスラエルの立場を把握している人なら誰でも、イスラエルがそれらの機関を忌み嫌っていることを知っている。UNRWAは、パレスチナ難民問題と国連総会決議194で述べられたパレスチナ難民の帰還の権利をイスラエルと世界に想起させる存在なのだ。

問題は、イスラエルの利己的で非倫理的、さらには大量虐殺的な努力にあるだけではなく、多くの西側諸国が演じた役割にもある。西側諸国は、意識的にせよ無意識的にせよ、重要な国連機関に対するイスラエルの嘘と欺瞞に再び引っかかってしまったのだ。この機関は、イスラエルの主張が真実かどうかにかかわらず、少数のパレスチナ人の意見や行動とは何の関係も持たない。

  • ダオウド・クタブ氏は、数々の受賞歴をもつパレスチナ人ジャーナリストであり、コミュニティ・メディア・ネットワークのディレクターを務める。X: @daoudkuttab
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