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世界政府サミットにおいて、AIは単なる議題以上の存在だった

コンピューターアーキテクチャの高度化について議論する、UAEのスルタン・アル・オラマAI大臣とNVIDIAのジェンスン・フアンCEO。(提供)
コンピューターアーキテクチャの高度化について議論する、UAEのスルタン・アル・オラマAI大臣とNVIDIAのジェンスン・フアンCEO。(提供)
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15 Feb 2024 12:02:41 GMT9
15 Feb 2024 12:02:41 GMT9

ドバイでの世界政府サミットが14日に閉幕した。およそ3日間にわたり、さまざまなフォーラムで包括的アジェンダに基づく深い議論が交わされた中で、誰もが合意することがひとつある。時代の趨勢として、開幕から閉幕までほとんどの議論の中心を占めたのが、人工知能だったという点だ。

これ自体は意外でもなんでもない。昨年以降、誰もが日々実感しているように、AIは今もこれからも、単独のトピックではない。われわれの生活のすべての側面に影響を与えるのだ。あるUAE高官が語った通り、AIは人類に、車輪の発明に匹敵する影響を与える。すでにさまざまな形での応用がなされており、この先には広大な未踏領域が広がっている。がん治療から宇宙探査、そしてヒトの脳の理解まで。最後のテーマに関しては、すでにある膨大な知見をもってしても、われわれが解明できていることはまだあまりにもわずかだ。

われわれはAIについて、旧来の「資本家vs労働者」の枠組みを脱して議論しなければならない。

ファイサル・J・アッバス

われわれはAIについて、旧来の「資本家vs労働者」の枠組みを脱して議論しなければならないと、あるテック企業幹部はわたしに語った。未来の雇用に多大な影響が及ぶことを事実として受け入れ、議論を先に進めて、AIが全人類にとって、またとりわけ中東地域にとって何を意味するのかという、大きなスケールで考えるべきだ。

現状を鑑みれば、アラブ世界、とりわけサウジアラビア、カタール、UAEなどの湾岸諸国は、AI革命の中核を担うのに絶好の立場にある。われわれには3つの優位性がある。好奇心旺盛でグローバル志向な若者中心の人口構成、投入可能な多大なリソース、AIを優先課題と位置づける政府だ。UAEは世界初のAI担当大臣を指名し、サウジアラビア政府高官はテクノロジーの最先端に立つことの重要性を繰り返し語ってきた。AIが政策上の優先課題となるのは、これを制する者が21世紀を通じて強者となるからだ。

これを裏づけるように、昨年の世界政府サミットの非公開ブリーフィングにおいて、ある政府高官は、国家間の競争と協力はもはやジオポリティクス(地政学)ではなく、テクノポリティクスの問題であると発言した。5Gをめぐる対立はその一例であり、情報戦もそうだ。

UAEは世界初のAI担当大臣を指名し、サウジアラビア政府高官はテクノロジーの最先端に立つことの重要性を繰り返し語ってきた。

ファイサル・J・アッバス

12日の開会の挨拶のなかで、UAEのムハンマド・アル・ゲルガウィ内務大臣は聴衆に向け、AIがこの1年間になしとげたことの一端を紹介した。学習能力は1000倍に増強され、その成長は指数関数的増加を続けるだろう。だが、負の側面もある。ディープフェイクコンテンツの数は1年間で3倍に増加し、昨年ソーシャルメディア上ではじつに50万件が報告された。こちらも加速する一方だ。

ジャーナリズムの世界では、従来メディアの行く末を雄弁に物語るかのように、米国の著名トークショーホストのタッカー・カールソンがロシアのウラジーミル・プーチン大統領を迎えたインタビューが、オンラインで1億5000万回以上の閲覧数を叩き出した。カールソンはもはや主要テレビネットワークに出演しておらず、インタビューは彼自身のブランド、彼自身のチャンネルでおこなわれたにもかかわらずだ。

誤解のないように言うと、質の高いプロフェッショナルなジャーナリズムの必要性は現在かつてないほど高まっていると、わたしは考えている。だが、現実を見れば、広告収入に支えられた無料コンテンツから、有料購読者だけがアクセスできるペイウォール方式、そして両者の間に位置するさまざまなバリエーションの間で、われわれはまだ未来にもっともふさわしいビジネスモデルを確立できていない。

来週、わたしはサウジメディアフォーラムのレポートを通じ、この話題をさらに深く議論していく。

  • ファイサル・J・アッバスは、アラブニュースの編集長。X: @FaisalJAbbas
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