Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

高齢化は潜在的な危機

高齢化は21世紀における最も重大な社会の変化のひとつになろうとしている(File/AFP)
高齢化は21世紀における最も重大な社会の変化のひとつになろうとしている(File/AFP)
Short Url:
23 Feb 2024 11:02:58 GMT9
23 Feb 2024 11:02:58 GMT9

何年もの間、地球にとって最大のリスクのひとつは人口増加であると、多くの専門家が主張してきた。専門家らは、人口増加の流れは飢餓や戦争につながり、気候変動の影響とともに、地球が破滅的な出来事に向かっていることを意味するというだろう。これは決して正しくない。数十年前から現在までの国連の予測を見ると、2100年までに人口は101億人まで増加し、その後減少するという一貫した予測が示されている。しかし、人口過剰というテーマは常に取り沙汰されている。

現実として、地球は確かに破滅的な出来事に向かっているが、その理由は逆である。真のリスクは、高齢化、そして予測される世界人口の減少である。事実上、世界のすべての国で高齢者の数と割合が増加している。高齢化は、労働市場や金融市場、そして住宅、交通、社会的保護などの財とサービスに対する需要、さらに家族構成や世代間の結びつきなど、社会のほぼすべての分野に影響を及ぼし、21世紀における最も重大な社会の変化のひとつになろうとしている。

数値は明らかであり、すべての主要国を直撃している。国連の「世界人口推計」(World Population Prospects)の2022年改訂版で示された高齢化の最新動向によると、65歳以上の人口が、それ以下の年齢の人口を上回るペースで増加している。世界における65歳以上の年齢層の人口比率は、2022年の10%から、2050年には16%に上昇すると予想されている。2050年までに、世界の65歳以上の人口は、5歳以下の子供の人口の2倍になり、12歳以下の子供の人口とほぼ同じになると予測されている。

高齢化の影響を受けているのは、主に先進国であることは明らかである。先進国は、その名が示すように、世界の政治・経済の課題を主導してきた。この人口比率の変化は、生産性の低下、ダイナミズムの低下、グローバルパワーの低下と同義である。さらに、先進国は現在、いわゆる逆人口ピラミッドと呼ばれる状態に直面している。

高齢化は21世紀における最も重大な社会の変化のひとつになろうとしている。

ハーリド・アブー・ザフル

逆人口ピラミッドとは、高齢者の割合が若年者の割合よりも大きく、従来のピラミッド型の年齢分布とは逆の形の人口年齢構造を指す。このパターンは通常、出生率の低下、平均寿命の伸長、合計特殊出生率の低下と関連している。

逆人口ピラミッド化は、他の何にも優先する社会的な重要課題であり、先進国のリソースや国際的に力を行使する能力に影響を与えるだろう。こうした変化は医療費の増加にもつながっている。また、このような状況は、社会福祉政策や高齢者への年金保証によって具体化されてきた、歴史的な社会協定をも危うくしている。人口ピラミッドが逆ピラミッド型になったことで、こういった協定はもはや持続不可能となり、増加する高齢者人口に対応する各国の能力に疑問が生じている。さらに、この変化は生産性にも影響を及ぼし、潜在的な労働力不足を引き起こし、ひいては財政貯蓄を減少させる。

先進国の政府や政策立案者は、こうした人口動態の変化に取り組み、持続可能な人口増加を促進するためのアプローチを頻繁に検討している。そして、これが、現在先進国で起きている移民の波が、それを弱々しい政策で阻止しようとしながらも、高齢化がもたらす課題に対処するために政策立案者が意図的に採用した戦略と見なされている理由である。おそらくは、より計画的な移民政策とともに、より多くの出生を奨励することが望ましい解決策であるにも関わらず、実際、移民受け入れは、左派や進歩的な政党が選んだ非公式の解決策となっている。

人口比率の変化は、生産性の低下、ダイナミズムの低下、グローバルパワーの低下と同義である

ハーリド・アブー・ザフル

このような移民受け入れの形式は、人口過剰に関する欠陥だらけの分析と政策の結果に対するパニック的な反応である。さらに、右派政党は、この新しい人口層を追放しようとする悪者にされる傾向があるため、左派や進歩的な政党が、より多くの票を獲得することにもなる。

進歩的な政治家たちの門戸開放政策は、移民の尊厳を引き裂いてきた。合法的移民を最も歓迎する国のひとつであり、その寛大さの上に成り立っているアメリカでさえ、こうした移民の新しい波に屈してしまった。移民の命や、受け入れ国の国家安全保障を危険にさらすことのない合法的移民は、今や時代遅れとなっている。ヨーロッパでは、受け入れ国の国民とは異なる民族的・宗教的背景を持つ移民の流入により、すでに国内問題における緊張が高まっている。

こうした新しい波の影響は国内だけにとどまらず、グローバルな政治秩序をも逆転させている。実際、これらの国々は、ソーシャルメディアを通じて増幅される国内の混乱や無秩序に直面し、国際的に行動する能力が妨げられている。この深刻な社会的変化が現実的な影響を及ぼしており、先進国の政治情勢に見られる混乱に、直感的かつ部分的に関わっていることには疑いの余地がない。

アメリカと中国が新たな競争を繰り広げる世界を考えてみたとき、両国ともこの同じ問題に直面しているということは、興味深い事実である。65歳以上のアメリカ人の数は、2022年の5800万人から、2050年には8200万人に増加すると予測されている。そして、中国の高齢化は、現代史において、ほとんどすべての国よりも急速である。2050年には、中国の退職年齢以上の割合は、全人口の39%になると予測されている。高齢化がもたらす影響を見るならば、人間を通じて、あるいは人工知能やロボットの利用を通じて、高齢化問題を解決できる国が、おそらく主導権を握るだろう。

  • ハーリド・アブー・ザフル氏は、宇宙に特化した投資プラットフォーム「スペースクエスト・ベンチャーズ」の創設者である。ユーラビア・メディアの最高経営責任者であり、アル・ワタン・アル・アラビの編集者でもある。
topics
特に人気
オススメ

return to top