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イスラエルの武器禁輸は避けられるか?

イスラエルとガザ地区の国境に近い陸軍キャンプで、戦車の整備をするイスラエル軍兵士(AFP=時事通信)
イスラエルとガザ地区の国境に近い陸軍キャンプで、戦車の整備をするイスラエル軍兵士(AFP=時事通信)
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10 Apr 2024 10:04:14 GMT9
10 Apr 2024 10:04:14 GMT9

ガザでの戦争が始まって半年が経過し、オランダ、日本、スペイン、ベルギーを含む多くの国々が、イスラエルの作戦遂行方法に苛立ち、イスラエルへの武器輸出を停止するという異例の措置を取った。

英国や、最近では米国でも、この選択肢が真剣に検討されている。すでに、ガザのパレスチナ人に非情な死と破壊を与えているが、武器輸出が停止された場合、民間人に対する殺傷力のある兵器の無差別使用を止める、画期的な選択肢となりうる。

将来の歴史家は、1,200人以上が死亡し、数百人が人質に取られるという凄惨な攻撃を受けた後、被害を受けた国に対する、国際的な支持と同情が、これほど短期間に、しかもこれほど大規模に崩壊したことを、説明するのに苦心するだろう。10月7日当時は、国際社会はイスラエルに同情し、恐怖、痛み、そして懸念が渦巻いていた。しかし、イスラエルによる「ハマス殲滅」のための戦争が始まって6ヵ月が経過し、同国による非常に不均衡で無差別な報復により、国際社会の支持は泡と消えた。国際司法裁判所は、イスラエルの行為がジェノサイド(大量虐殺)に相当するという危険性さえ認めた。その結果、さらなる武器供給の禁輸は避けられないようだ。

先週、デイル・アル・バラでワールド・セントラル・キッチンの援助職員7人がイスラエル軍の空爆によって死亡した悲劇は、世界を憤慨させ、英国がイスラエルとの軍事関係を見直すきっかけとなり、アメリカでさえ同調した。

言うまでもなく、イスラエルに影響を持つ主要国家は、この恐ろしい事件のずっと前に、もっと確信を持って、少なくともパレスチナ人と人質の命を救うことができる人道的停戦を実現するために行動すべきだった。

特に先月、即時停戦と人質交換を求めた国連安全保障理事会決議を最終的に可決する前に、国際社会が緊急性を欠いていた。ガザ戦争を取り巻く現況は、外交問題に対する痛烈な評決である。停戦の必要性はきわめて切実であり、多くの人命とさらなる苦しみを救う為だけではなく、イスラエルを亡国へと導き、地域の安定を脅かしているイスラエル自身をも救う必要がある。

英国では、リシ・スナック首相とその政府に対して、ワールド・セントラル・キッチンの援助職員7人(うち3人は英国人)が殺害される以前から、イスラエルへの武器輸出を停止するよう圧力がかかっていた。まず、130人以上の国会議員がデービッド・キャメロン外務大臣宛に署名した書簡が出され、英国製の武器がガザで使用され、ガザの悲惨な状況の継続に寄与しているとして、武器輸出は「通常通り」であり、「まったく容認できない」と主張した。

さらに、政府の弁護士が、イスラエルはガザで国際人道法に違反しており、そのような違法行為に加担したくないのであれば、政府はイスラエルへの武器輸出を再考すべきだと述べたと報じられた。この発言は今週、3人の元最高裁判所判事を含む600人の弁護士、学者、そして引退した上級裁判官によって支持され、政府はイスラエルの武装に加担を続けることで、国際法に違反しており、UNRWAへの援助を停止することも、国際法に違反していると警告した。

国際社会が緊急性を欠いた行動をとったことは、外交問題に対する痛烈な評決である。

ヨッシ・メケルベルグ

イスラエルへの武器輸出という壮大な計画から見れば、英国の貢献は年間約4200万ポンド(5300万ドル)と、いささか微々たるものだと言わざるを得ない。ストックホルム国際平和研究所の武器移転データベースによれば、2013年から2022年にかけてイスラエルが輸入した武器の68%はアメリカから、28%はドイツから供給されたものである。

つまり、現実的には、それ以外の国による武器輸出の停止は、最小限の影響しか与えないということだ。しかし、その象徴性はより大きな影響を与え、イスラエルと同盟国との間に外交的亀裂が生じつつあることを示す可能性がある。さらに、このような動きは、国際人道法に違反しているイスラエルに武器を供給し続けることで、米国がますます孤立してゆくことを示すものでもある。

先週木曜日に行われたジョー・バイデン大統領とベンヤミン・ネタニヤフ首相との電話会談は、緊密な同盟関係にある両首脳の歴史上、最も厳しいものだった。この電話会談でバイデンは、民間人の犠牲とガザの人道危機への対処方法を変えることを条件に、軍事援助を含む今後のイスラエルに対する米国の支援を盾に、事実上脅した。

当然のことながら、この緊迫した電話会談の直後、イスラエルの戦争内閣は、ガザ地区の民間人への人道支援を強化する「即時措置」をとると決定した。しかし、私たちの多くは当惑した。 なぜこのような会談が、数カ月前とは言わないまでも、数週間前に行われなかったのだろうか?

ガザ戦争から得た教訓のひとつは、合理的な意思決定は当然のことではないということだ。

ヨッシ・メケルベルグ

イスラエルに全面的な武器禁輸を課すという現実的な提案はありえない。同盟国は、イランやその武装勢力を含む、敵からの脅威にさらされるイスラエルを放置したくはないだろうから。さらに、イスラエルの政治的・社会的・安全保障的な言説が正気を取り戻したとき、同国は地域の安定を確保する上で重要な役割を果たすこともできる。

しかし、ガザでの戦争から得た教訓のひとつは、合理的な意思決定が当然視されるものではないということであり、そのため、特定の兵器システムや弾薬の使用に条件を設けなければならないということだ。わかりやすい例としては、マーク84という2000ポンド爆弾がある。この爆弾は、人口の多い地域では決して使用されるべきではないが、イスラエル空軍はガザで使用しているようだ。

つい最近まで、イスラエルの同盟国の多くが、ガザでのひどい人道的大惨事を食い止めるために言っていたことと、実際にどう行動したかということに、大きな食い違いがあった。今、言動と行動は、非常にゆっくりとしたペースではあるが、徐々に一致してきている。そしてイスラエルは、特にアメリカから強力なメッセージが発信されたときに、最初の兆候を示している。これは、この恐ろしい戦争を止めるための分岐点となるかもしれない。

・ヨッシ・メケルベルグ氏は国際関係学教授であり、国際問題シンクタンク、チャタムハウスの中東・北アフリカプログラムの特別研究員である。X: YMekelberg

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