




フランチェスコ・ボンガラ
ローマ/バグダッド:3月5日(金)、教皇フランシスコが歴史的イラク訪問開始にあたり、過激主義、暴力、汚職をやめるよう訴えた。
教皇フランシスコは史上初のローマ教皇によるイラク訪問開始にあたり、まずバグダッドで政府高官らと会見、その後2010年の武装軍団によるキリスト教徒大虐殺が行われた教会へと向かった。
教皇はバグダッド国際空港でムスタファ・アル=カディミ首相に出迎えられ、伝統舞踊を披露された。
その後教皇は大統領官邸でバーハム・サリー大統領と接見し、強い語調によるスピーチを 行って、イランを衰退させつづけている諸問題について指摘した。
「武力闘争が鎮静されますように」と教皇は述べた。「暴力、過激主義、派閥闘争、不寛容はもう十分です。イラクは悲惨な戦争の影響、テロリズムという災難、派閥闘争に苦しんできました。これらは多くの場合、異なる民族グループおよび宗教グループの平和的共存を受け入れることができない原理主義に根ざすものです」
ローマ教皇は、イラクに不安定化をもたらす要因として頻繁に非難されている外部からの影響に言及し、国際社会は「イデオロギーを押し付けることなく」援助の手を差し伸べる必要があると述べ、イラクの高官らに対し、「汚職問題、権力の不正行使、法律の無視と闘う」よう強く求めた。
ローマ教皇の訪問が実現した現在、イラクは長年におよぶ派閥闘争、ダーイシュによる占領、慢性的汚職、基本業務すら提供できていない政府高官らに対する広範な国民の憤りに対して、社会の安定化に取り組もうとしている。イラクのキリスト教徒の数も、その多くが新たな生活を求めて海外へと逃れ、減少しつつある。
しかしローマ教皇は、そうした多くの問題を抱えるイラクのことを「文明の発祥地」と称え、イラクの直面するすべての危機は友愛と団結と調和に基づく社会を築くことで克服することができると信じている。
教皇は、様々な宗教・文化・民族を有するイラクは、多様性という特色が、社会の中に対立ではなく調和をもたらすということを示すことができると言う。
教皇は、2014年にダーイシュによって多数殺害されたヤジディ教徒らに視点を向け、彼らについて「愚かで残忍な暴虐による罪なき犠牲者であり、自らの宗教のために迫害され殺害されて、彼らのアイデンティティと生存そのものが危機にさらされた」と述べた。
彼は、すべての政治・社会・宗教グループが参加する形でイラクという国を築いていこうと考える人々全員のための居場所が与えられなければならないという。
さらに彼は、イラクのカトリック教会は平和のために他の宗教グループと建設的に協力していきたいと考えている、と述べた。
教皇は外国訪問で通常使用されるポープモービル(教皇専用車)ではなく、武装した黒のBMWi750で市内を移動した。車列にはオートバイに乗った数十人の警官が随行した。
この訪問を決行するかどうかに関して、イラクの治安状況が最大の脅威となっており、コロナウィルスのパンデミックによる問題も加わっていた。しかしダーイシュの潜伏工作員や、イランを後ろ盾とする武装軍団によって先日行われた米軍基地へのロケット弾攻撃も、教皇の訪問を止めることはなかった。
聖マリア教会で、ローマ教皇は2010年の過激派の襲撃で殺害された58人の人々を弔って祈りを捧げた。この事件はキリスト教徒を標的として最も多くの死傷者を出した事件の一つとなった。
「我々はこの聖マリア大聖堂に集い、主イエスキリストとその教会に対する忠誠のための究極の対価を払った我々の兄弟姉妹の血を崇めます」と教皇は述べた。
3月6日(土)、ローマ教皇はイラクのシーア派最高位聖職者である大アヤトラ・アリ・アル=シスタニとナジャフで会見し、預言者アブラハムの生誕の地ウルを訪れることになっている。