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日本の女性にとって、職場とは戦場が姿を変えたようなもの

世界経済フォーラムの別の報告書によると、日本では2020年の12月から4月までの間に、達成不可能な期待を押し付けられたことを理由に、100万人という数の女性が仕事を離れている。(Shutterstock)
世界経済フォーラムの別の報告書によると、日本では2020年の12月から4月までの間に、達成不可能な期待を押し付けられたことを理由に、100万人という数の女性が仕事を離れている。(Shutterstock)
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08 Mar 2021 07:03:42 GMT9
08 Mar 2021 07:03:42 GMT9

シャムス・エル・ムットワリ、カーラ・チャフルール、ドバイ

女性の社会的功績を称える世界的な日である「国際女性デー」を祝う中でも、日本の女性が直面している社会的・経済的な苦境、特に企業内での困難を理解することは非常に重要である。

日本において職場は、社会における性差別や性差別イデオロギーに非常に縛られており、女性のヒエラルキー内での地位や評価を定義する上で基本的な役割を果たしている。

統計的には、2020年には、上級職やリーダー職に占める女性の割合は15%となっている。同年、世界経済フォーラムの報告書によると、日本の男女平等に関する世界ランキングは153カ国中121位に低下した。

同報告書では、「男女の経済格差の理由の一つとして、日本の女性が男性の4倍以上の時間を無給の家事労働に費やしていることが挙げられ、そもそも有給労働に従事する時間や労働する時間も短くなり、女性がキャリアを積んだり、出世したりする機会を妨げている可能性がある」と説明されている。

マンチェスター大学の社会学研究者であるデボラ・グイスティーニとシェフィールド大学の日本研究の上級講師で研究・イノベーション担当ディレクターのピーター・マタンルが発行したニュースレターでは、2019年にこの問題を調査している。

ニュースレターでは、「管理職へ上り詰める職歴を歩みには、要件として組織の労働慣行や文化への強いコミットメントを求められる」ことを概説し、こうした慣行があることで、多くの場合、性別を与件として将来のキャリアが決定されている。つまり、女性は「出産と子育てを見越して」、そもそもパートタイムの職務を選択する傾向がある。

世界経済フォーラムの別の報告書によると、日本では2020年の4月から12月の間に100万人の女性が労働の現場から離脱しているが、それは彼女たちに課せられた達成が非常に難しい期待に影響されていることが判明している。

こうした状況は、安倍晋三前首相が経済や政治の現場で女性の活躍を促し、労働力の確保を促進するために始めた「ウーマノミクス」の基本的な目的に反する。

「ウーマノミクス」では、当初2020年までにリーダー職に占める女性の割合を30%に引き上げることを目指していたが、その目標は2030年に先送りされている。

日本のジェンダー問題の解決に向けて努力しているにもかかわらず、女性は社会からの反発を受けながらも、自分の役割を積極的に主張し、最も困難な戦いを続けている。     

日本の労働力の男女格差の背景にあるもう一つの理由は、伝統的に男性優位の職場に女性が入り込むために不可欠な高等教育の機会が不均等であることが挙げられる。1980年代は、多くの女性が、同世代の男性に好まれていた4年制大学ではなく、2年制の「短期大学」に進学していた。

この高等教育の不均衡は、企業がリーダーを選ぶ年齢層の世代の中に、そもそも資格を持つ女性の数が相対的に少ないとことを意味する。

1990 年代後半になってようやく進学先が短大から四年制大学へのシフトが進み、女性の高等教育のパラダイムに変化がもたらされたが、このパラダイムシフトには、1985年に制定され、1986年4月に施行された男女雇用機会均等法で、募集、採用、昇進、訓練、配属に関する男女差別が禁止されたことも一因とされる。法律によって女性が登用される機会が増えたことで、その恩恵を主に受ける高等教育を受けることを志望する女性が増加し、1985年以降の数年間で4年制大学への女性の入学者数に顕著なシフトが見られた。

総務省統計局が1975年から1990年までの4年制大学への男女別入学者数を調べたところ、1985年から1990年の間に女性の入学者数が加速していることが判明している。この事は、男女雇用機会均等法の制定が、女性の高等教育への入学者数の増加に大きく寄与したことを示唆している。つまり、同法によって女性の将来の労働への期待が変化し、女性に教育への投資に対して、より大きなインセンティブが提供されたからである。

その後、法改正に伴い女性の地位は徐々に改善したが、平等な雇用の実現にはまだ遠い状況にある。女性のキャリアは、育児や高齢者の介護など、家庭での高優先事項が生じる度に途切れがちとなる。こうした状況の下、仕事よりも家庭を優先することを選んだ女性たちは、労働市場での機会が限られ、パートタイム契約を受け入れざるを得なくなる。更に税制上の問題から労働時間も限られることを受け入れざるを得なくなっている。

2018年以前は、年収103万円以下の個人は所得税の支払いが免除され、配偶者の確定申告で扶養家族とすることができた。そうすることで、所得の高い方の配偶者が38万円の配偶者控除(38万円の所得控除)を追加で受けることができた。昨年、この所得控除の上限が年収150万円まで引き上げられたのは、女性が更に長い時間働くことを可能とするためである。

さらに、家父長制の下での性別の役割期待が未だ現存する結果として、日本の女性のキャリアは一般的に男性に比べて評価されない傾向がある。性別による役割期待の違いというイデオロギーがまだ根強く残ることで、組織に雇用され、企業内訓練を受けることを妨げ、そのため女性が生涯を通じて受けられる資本投資が低く抑制される傾向があり、それが要因で組織階層の最下層に位置する仕事にしか就けない状況を作り出している。

こうした要因が、労働者の中で女性が組織的に過小評価され、世代を超えたジェンダーギャップの悪循環を生み出している。

科学、技術、工学、数学(STEM)の分野では、さらに格差が広がっている。STEMの分野で活躍する女性の割合が低いことは、STEMがそもそも男性中心主義で、女性が同分野でキャリアを追求することを躊躇させる教育にも根ざしている。

例えば、日本の文部科学省(MEXT)が2017年に実施した調査によると、理学部に在籍する女子学生は学部生全体の27.2%を占めるのに対し、工学部に在籍する女子学生は学部生全体の14.5%にとどまっている。

日本が技術先進国として世界的に認知されているのは、戦後の復興期にSTEM分野の強化を進めてきたことに起因するものであることを考えると、STEM分野における男女格差の存在は、この分野の持続可能性と、将来にわたって必要な役割を十分に果たしていくための現在の体制のあり方に大きな疑問を投げかけざるを得ない。

国連によると、日本の人口は2050年までに1億490万人に減少すると予測されている。また、日本の生産年齢人口(15~64歳)も2020年の7,450万人から2050年には5,710万人に減少すると予測されており、現在の男性労働力への依存は将来的に持続不可能であることを示している。

2019年の日本の女性求職者数は262万人にのぼる。将来の生産年齢人口の減少が予測される中で、労働市場に貢献し、ギャップを埋めるのに役立つと考えられる未利用の潜在能力がこれだけ存在していることを示している。

「竹の天井」とは、「ガラスの天井」というお馴染みの言葉のバリエーションで、アジアの国々に多く見られる、個人が指導的地位に就くことを阻む、目に見えない平等への壁を表現するために一般的に使われているが、日本が迫り来る人口減少の脅威に直面し、管理職に就くための十分な訓練を受けた経験豊富な男性が不足するため、女性を訓練し、管理職として活躍する場をつくる必要に迫られていることから、今後その「竹の天井」から光が漏れだしてくることが期待されている。

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