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AIのスキルアップと海のグリーン革命

(シャッターストック)
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06 Mar 2023 07:03:09 GMT9

第4次産業革命の進行に伴い、技術が長足の進歩を遂げ、人工知能、デジタル化、物流を含むエネルギー部門の革命に巨額の投資が行われるようになり、労働市場は大きな変化を迎えようとしている。気候変動を遅らせ、化石燃料への依存をグリーンで再生可能な資源へと切り替える動きは、2030年までに3800万人以上の雇用を生み出すと予想されている。また、世界経済フォーラムによると、デジタル化により雇用者数が5800万人純増すると見込まれている。もちろん、これらの増加雇用は、従来と同じ仕事が増えることを意味しない。再教育やスキルアップが必要になる。問題はそれをどれだけ現実的に実施できるかだ。

AIはすでに、生産、銀行業務、管理業務、情報のスクリーニング、一部のカスタマーサービス業務などさまざまな分野で、反復的な仕事の多くに取って代わっている。だが、こうした変化により、サイバーセキュリティ分野の雇用ははるかに多く増加し、また収集したデータに文脈に応じた注釈を施し、曖昧な状況に現実に適った意味を与えることが人間に求められる。顧客関係管理やコピーライティングの仕事や、普段とは異なる状況で人間の理解力や判断、創造性が求められる仕事も創出される。

AIに取って代わられる仕事の多くは、初心者レベルの最低賃金の仕事だろう。人間はさまざまな理由でそうした仕事を担っている。勉学にいそしむ時期を乗り切り、家計の足しにし、またより創造的な活動に注力する間に生活していくために、難しくなく、ストレスが少ない仕事を希望する人もいる。また、好きだから、得意だから、最適な働き方だから、という理由で肉体労働や手作業を求める人もいる。手作業仕事の多くは、高度な技術や技能が求められ、問題解決に経験を必要とする。

すべての人が、一般の人々と直接関わる仕事や、終日に及ぶコンピューター使用を希望するわけではない。また、神経的な多様性のために机や画面の前に長時間じっと座っていることができないため、工場労働により実現されることの多い、動き回ったり、作業内容を変えたりできる肉体労働が必要な人もいる。

企業は、現在の従業員を余剰とみなし、企業が求める特定のスキルの有資格者を大学新卒者から雇用し直す可能性が高い。多くの場合、給与等級は低く、契約に含まれる従業員特典は少なく、またゼロ時間契約数が増えるだろう。現在の従業員の訓練やスキルアップに投資するのは、企業ではなく政府になる可能性が高い。そこでは、自分のスキルや能力に見合ったベストな新職種を見つけるキャリア支援が必要にある。訓練には関係なく、すべての人がすべてのスキルタイプに適しているわけではない。

政府は、人々が自分のスキルや能力に見合ったベストな新職種を見つけるキャリア支援を行う必要がある。

バシャイア・アル・マジェド博士

物流は巨大な事業分野で、貨物輸送の8割を占める海運はその主要部分を占め、過去1年間で8%増加した。しかし、海運は世界の温室効果ガス排出量の3%を占め、外洋汚染も引き起こすため、石油からグリーン水素、アンモニア、電池に移行する計画がある。そのためには、インフラを変え、これらの技術の訓練を受けたエンジニアが乗船して効率の最大化を追求し、問題発生時にはすべてを解決する必要がある。また、AIやコンピューター、排出量測定、機器、関連政策の訓練を受けた船内スタッフや港湾サイドのスタッフも必要になる。

2050年までに二酸化炭素の排出量を正味ゼロにし、地球の気温上昇を1.5℃に抑えるために、国際海事機関がすぐにでも各国に対しより厳しい二酸化炭素排出制限に合わせるよう促す可能性が高いため、これらのことがよりいっそう重要になる。労働市場の態勢が整っていないという懸念は正当なものだ。多くの国では、政策の実施が始まったばかりで、対象者向けの訓練プログラムやインフラの整備はなお先のことだ。海事公正移行タスクフォースは、今後10年間で80万人の船員に訓練を施す必要があると試算している。

このような懸念はあるが、世界有数の海運国であるフィリピンとインドネシアが、この動きを先導し、国際機関と協力して適切な政策と船員向け訓練を確立しようとしているのには勇気づけられる。また、インドネシアは、海運と国際販売の両面で、産業をグリーンエネルギー生産に集中させ、経済の改善と二酸化炭素排出量の削減に取り組んでもいる。両国が早期の導入に注力すれば、歩みの遅い他の国に助言を与えることができる。あるいは、遅れている国は、医療分野に見られるように、船員労働がより適切な訓練を受けた外国人労働者に取って代わられるかもしれない。

  • バシャイア・アル・マジェド博士は、クウェート大学法学部教授、オックスフォード大学客員研究員。
    ツイッター: @BashayerAlMajed
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