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イスラエルがサウジアラビアとイランの和解にどのように影響を受けるか

中国が選ばれたのは純粋に北京がイランに影響力を持っているからと、ファイサル・J・アッバスは書いている。(AFP)
中国が選ばれたのは純粋に北京がイランに影響力を持っているからと、ファイサル・J・アッバスは書いている。(AFP)
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16 Mar 2023 05:03:54 GMT9
16 Mar 2023 05:03:54 GMT9

先週金曜日からサウジ関連のニュースが相次いで報じられているが、イスラエルとの関係を正常化するためにサウジアラビアが何らかの「代償」を提供したとする、米国メディアの奇妙な「独占報道」は注目されなかった。当然のことながら、この「ニュース」——私はこの言葉を大雑把に使っている——は、中国が仲介した画期的なサウジとイランの協定の影に隠れてしまったのである。

このいわゆる「代償」には、目新しい情報が含まれないためニュースにはならない。これは、より正確には、ドナルド・トランプ政権時代から議論されてきたイスラエル・パレスチナ紛争の解決に向けた取り組みを指している。この取り組みは、トランプ大統領の上級顧問であり、娘婿でもあるジャレッド・クシュナー氏が主導していた。アラブ・ニュースが取材したところ、サウジの高官は最新のリーク情報は自国から発信されたものではないことを認めた。つまり、情報源はおそらくイスラエルと関係のある米国の上級顧問か国家安全保障に関わる者である可能性がある。

私自身、昨年の上層部による会議でサウジの「条件」のいくつかを聞いた。だが、そこで明らかになったのは、サウジにとって常に第一条件であるパレスチナ人の権利に関する解決策が見つかった後でなければ、「条件」について議論できないということだった。

この背景には、サウジが権利や特権に関して、イスラエルと平和条約を結んでいるいくつかの国と同様に扱われることを求めているということがある。ウランの平和利用の権利、NATOへの何らかの形での加盟、米国の戦略的同盟国としての指名などの問題は、すべてパレスチナの解決策が見出された後にようやく議論される可能性が出てくる。

これを「ニュース」として報じた2つの米国の新聞は、もう少し調べていれば、その「スクープ」がすでに昨年12月にイスラエルのi24、今年1月にはエルサレム・ポストで掲載されていることがわかったはずだ。

ファイサル・J・アッバス

さらに、これを「ニュース」として報じたウォール・ストリート・ジャーナル紙やニューヨーク・タイムズ紙の記者は、もう少し調べていれば、その「スクープ」がすでに昨年12月にイスラエルのi24今年1月にはエルサレム・ポストで掲載されていることがわかったはずだ。

当然ながら、イスラエルのメディアにとって、これらの記事はタイムリーなものだった。ベンヤミン・ネタニヤフ首相にいたっては、サウジとの関係性の正常化を優先課題として選挙戦を展開し、再選を果たしたばかりだ。 もちろん、ネタニヤフ首相が用いた美辞麗句は、当時サウジアラビアの高官が私に語ったように、イスラエル国内のキャンペーンと消費のためのものだった。ネタニヤフ首相は昨年12月、サウジアラビアのメディア「アル・アラビア」とのインタビューでもこの問題を取り上げた。この出演は、ネタニヤフ首相の一部の熱狂的なファンによって、初めてのことだと宣伝された(これは間違いで、8月にも「アル・アラビア」のインタビューに答えている)。

では、何も新しい情報がないというのなら、なぜ私はこの記事を書いているのだろうか。それには二つ理由がある。第一に、イランとの協定が(テヘランの政権がそれを守ることを前提に)サウジとイスラエルの関係に新たな意義を与えているからであり、第二に、サウジの条件そのものを議論する必要があるからである。ここでは、この二つの理由が絡み合っている。

イランとの取引は、サウジがイスラエルとの関係を正常化する可能性に対し有害であり、バイデン政権がサウジを疎外した罪は中国を仲介役として選ぶほど大きいと指摘されている。この指摘は部分的には正しいが、完全に正しいとは言えない。前回のコラムで述べたように、中国が選ばれたのは純粋に北京がイランに影響力を持っているからであり、アメリカとの関係は無関係である。しかも、ホワイトハウスはこの話し合いを知っていたと言い、アントニー・ブリンケン国務長官もこの合意を歓迎している。

もちろん、テヘランが今後自らを律するようになれば、イスラエルは「敵の敵は味方」という重要なカードを失うことになると主張することもできる。しかし、このカードは決して持続可能なものではなく、あまりにも多くの変数に依存するものだと私は主張する。

しかし、持続可能なものがあるとすれば、サウジアラビアが長年提唱してきた、パレスチナ人の苦境に対する公平で公正な解決策ではないか。この国は何十年も前から、イスラエルとパレスチナの紛争をイデオロギー戦争ではなく、土地紛争と見なしていると主張してきた。イランやその代理人とは異なり、私たちはユダヤ人を海に投げ捨てたり、イスラエルという国家を廃止したりすることは望んでいない。公正な解決のためには、大胆で有能なパレスチナのリーダーシップと、チャンスを逃さないという定評のある彼らの存在を認めることが必要であることは明らかだ。

持続可能なものがあるとすれば、サウジアラビアが長年提唱してきた、パレスチナ人の苦境に対する公平で公正な解決策ではないか

ファイサル・J・アッバス

一方、ネタニヤフ首相の極右新政権は、パレスチナ人を抑圧し、威圧する姿勢があまりにも過剰になってしまった。イスラエルの最も親密な同盟であるワシントンやアメリカのユダヤ人コミュニティ、さらにはイスラエル国民からも非難の声が上がり、彼らは抗議のために街頭に立つようになった。イスラエルの行動は、アブラハム協定の署名国にも恥をかかせるほどで(UAEは、アル・アクサ・モスクとジェニン難民キャンプに対するイスラエルの侵略を非難している)、他の国々にとってはイスラエルとの同調路線を考えることさえ難しくなっている。

他のサウジアラビアの条件については、私の見解では、イスラエルとの関係を正常化するためには当然の結果といえる。結局のところ、サウジがウラン資源を開発しても誰も恐れることはない。NATOへの加盟については、もっと大きな問題で、アメリカの方針が頻繁に変わることに関係しているのではないか。一方では、アメリカの高官たちは、サウジアラビアの安全保障にコミットしていると口先では繰り返しているが、それを文書や正式な枠組みで示すことはしない。

サウジ市民が攻撃を受けている間に、フーシ派のテロリスト指定を解除し、パトリオットミサイルの砲台を引き揚げたことは、今でもサウジアラビアにとって後味の悪い出来事だ。

バイデン氏が率いるホワイトハウスがサウジアラビアの自衛手段を否定するだけでなく、その安全を書面で保証することも拒否し(それが自国の利益になることを十分承知しているのにもかかわらず)、イランとの交渉では自国の同盟国の安全について話し合わないとするなら、リヤドが中国の仲介の申し出を受け入れるなど、自国の人々を守るための代替手段を取ることを非難されるいわれはないだろう。

一方、イスラエルは、サウジアラビアの米国との関係悪化による被害と、パレスチナ人に対する扱いによる自業自得の損害に苦しんでいる。しかし、イランとの合意にもかかわらず、イスラエルがサウジアラビアと関係を正常化できる可能性があることは朗報だ。しかし、イスラエルはまず旧約聖書に従い、「汝、隣人を己の如く愛すべし」とするべきではなかろうか。

  • ファイサル・J・アッバス氏はアラブニュースの編集長

Twitter: @FaisalJAbbas

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