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世界はハルツームを見捨てるべきではない

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29 Apr 2023 03:04:26 GMT9
29 Apr 2023 03:04:26 GMT9

イエメンを荒廃させながら今も続く戦争と、最近エチオピアを破壊した紛争に続いて、さらに新たな人道上の悲劇がスーダンに迫っている。これら3か国はほとんど隣国同士と言ってもよいが、互いに大きく異なっている。共通点は、歴史的、民族的、宗教的理由のいずれか、あるいはそれらすべての理由から、これらの国が深刻に分断されていることだ。

エジプトとイギリスによる長年の支配を経て1956年に独立したスーダンは、数多くの危機を経験してきた。1989年のクーデターの後、長く過酷なオマル・アル・バシール氏による独裁体制が続いた。ダルフールでは内戦が長引き、南部諸県は分離への動きを強め、2019年に軍の圧力によりバシール政権が崩壊した。そして、今年4月15日以来、将軍たちの権力争いによってスーダンは再び混乱状態に陥り、国民の間にはパニックと苦難が広がっている。

だが、最初に首都ハルツームから聞こえてきたニュースは、各国の大使館が閉鎖され、外国人が次々に逃げ出しているというものだった。世界中のメディアがこぞってこの話題を取り上げ、車列がハルツームを出てエジプトへ急ぐ様子が放送された。そのための手段を持つ国々は、国連の支援の下、自国民の脱出の手配をし、現地の武装勢力と交渉して施設利用や安全の保障を求めた。中でもアメリカ、イギリス、イタリアの取った行動はこのようなものであった。

フランスはというと、約400人の自国の外交官と国民がジブチに向けて退避できるよう、航空便をチャーターした。これらすべては理解できるし、完全に合法的な行動である。しかし、災厄の只中に放置される不運なスーダンの人々の気持ちを想像すると、大使たちの退避はやや品位を欠いていた。

今回の衝突はアブドゥルファッターフ・アル・ブルハン将軍率いる正規軍と、モハメド・ハムダン・ダガロ氏(別名「ヘメッディ」)をリーダーとする民兵組織「即応支援部隊(RSF)」の間で起こった。バシール氏の失脚後、軍民両方が参加する新政府樹立が試みられたが失敗に終わると、2021年に2人の将軍は文民の有力者を排除してともに権力を掌握しようと企てて手を結び、ヘメッティ氏がブルハン氏の率いる政権のナンバー2に収まった。したがってこれは軍の内紛であるが、世の常として、その代償を支払うのは文民の一般人なのだ。

これは軍の内紛であるが、世の常として、その代償を支払うのは文民の一般人なのだ。

エルヴェ・ド・シャレット

明らかに、協力関係は長くは続かなかったようだ。ヘメッティ氏は合意を破棄し、対立が始まった。衝突は暴力を伴うだけでなく、半端なものにはとどまらないだろう。最悪の事態を考えなければならない。すでに被害はかなりのものになっており、犠牲者の数も数千に達している。

スーダンは貧しい国であり、4,500万人の人口のうち3分の1近くが餓えに苦しんでいる。必要なのは国際的な人道支援であって、残虐で破壊的なものになると予想される軍と軍の衝突による内戦、スーダン人とスーダン人の争いではない。外国人の退避という事実が、内紛の行方に関する国際社会の予想をはっきり示している。

紛争が国際的なものになる懸念もある。2021年、エジプトとロシアは2人の軍事指導者による反乱を支持したが、西側諸国はこれを非難した。今回、状況はその時とは異なっている。ヘメッティ派の反乱の背後にはロシアの存在があると見られ、すでにダルフールに展開している民間軍事会社ワグネルがRSF支援のためにハルツームの戦闘に介入するという噂さえささやかれている。一方、西側諸国はエジプトとともに正規軍の司令官で比較的正統な指導者と見なされうるブルハン将軍を支持するはずである。決定的だと思われるのはスーダンに対しある程度の影響力を持ち、休戦を仲介できるであろう湾岸諸国の動向である。

したがって、今はハルツームを見捨てる時ではない。アメリカ、ヨーロッパ、アラブ諸国も、そして無論アフリカ連合も、「アフリカの角」で新たに破滅的な戦争が起きることで利益を得ることはない。しかもこの戦争は、イエメンとエチオピアで起きたものと同様に悲惨な紛争になる可能性が高い。争いがこの不幸な国で本格化するのを防ぐために、あらゆる可能な方策を取ることが急務なのだ。

  • エルヴェ・ド・シャレットは元外務大臣、住宅大臣。サン・フロラン・ル・ヴィエイユの市長、メーヌ・エ・ロワール県議員も務めた。
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