Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

高まる抗議運動は、全てのイスラエル国民への警鐘である

Short Url:
11 Aug 2023 04:08:36 GMT9

米国の親イスラエル民主主義活動家たちは今週、現在イスラエルを訪問中のハキーム・ジェフリーズ下院少数党院内総務に対し、「ベンヤミン・ネタニヤフ首相の司法改革の重大性をもっと評価するため、抗議活動の指導者たちと面会してほしい」という要請を行った。

ネタニヤフ首相の行動に端を発した抗議行動は、その勢いを増している。人々は連日、首相退陣を求めて集まっている。一方で、このような抗議行動が新たな意識を呼び覚ましたようにも思われる。イスラエル国民が入植運動の危険性を認識し始めたのだ。これはもう少数派の運動だとは認識されておらず、大多数のイスラエル人は「明らかに国家と民主主義の根幹をゆるがす危険な運動」だと認識している。

抗議者たちは現在、「イスラエル国家と入植政権が争っている」と認識している。イスラエル国内で「パレスチナ占領を終わらせよう」という大規模な民衆運動が起こるのはまだ先のことだろう。しかし我々は今、その始まりを目にしているのかもしれない。故に、今こそ限界に挑戦すべき時であり、抗議活動が奨励すべき理由はここにある。抗議活動がもつ可能性は、ネタニヤフ首相や、その盟友である過激派のイタマル・ベングビールとベザレル・スモトリッチの排除だけにとどまらない。イスラエル人の心理を変化させる可能性をも秘めているのだ。

イスラエル人の多くは、入植政権が自国を乗っ取ろうとしていることに気づき始めている。入植システムをヨルダン川西岸地区にとどめることはもう不可能だ。テルアビブのような都会で近代国家生活を楽しんでいる人々も、もはやこの問題を無視することはできない。入植システム問題は、人々の家庭にまで忍び込んでいるからだ。国内はネタニヤフ派と反ネタニヤフ派に割れつつある。混乱を目の当たりにしているアメリカ人の友人によると、ネタニヤフ派の狂信者たちが反ネタニヤフ派の居住地区やキブジムの入口を閉鎖しているという。友人はこの状況を「不安定」であり「懸念している」といい、「イスラエルに住む親戚の多くがヨーロッパや米国への移住を考えている」と付け加えた。

イスラエル人は、自分たちが怪物を作り出したこと、そしてその怪物が今度は自分たちを悩ませに戻ってきたことに気づき始めた。それはもはやパレスチナ人、パレスチナ人の自由とその尊厳だけにとどまる問題ではなく、イスラエル人のアイデンティティにも影響を及ぼしている。イスラエル人は、自分たちが国際的な尊敬を失いつつあることにも気づき始めた。イスラエルのテロに関して言えば、米国は10代のパレスチナ人が殺害されたイスラエルの入植者襲撃事件を「テロ」と表現した。そしてイスラエル人が最も嫌うのが「テロ」という汚名である。

入植者たちは、イスラエルがスラム街になったところで気にもとめない。しかし、ほとんどのイスラエル人はスラムに住みたいとは思っていない。

ダニア・コレイラット・ハティブ博士

アメリカ人はイスラエルを批判し、パレスチナ人の権利を主張し始めている。アメリカ民主党の上院議員であるティム・ケインとクリス・ヴァン・ホーレン両氏は、サウジアラビアの長期にわたる要求を繰り返し、「サウジアラビアとの国交正常化は、パレスチナ人の国家権利と結びつけられるべきである」という声明を発表した。ロビー団体のAIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)も、今ではもうアメリカの議員たちに「イスラエルに関するAIPACのおとぎ話を繰り返す厳選されたパレスチナ人に会うことができ、全てが素敵な一流品で出来ているおとぎの国」を訪問させることは出来ない。アメリカ人は今や、「ベングビールやスモトリッチのような人々が、危険な目的を明言してはばからない」という醜悪な事実を目の当たりにしているからだ。

イスラエルでの抗議行動と、そこから展開した物語は、イスラエル人の考え方が変わり始めていることを示すものだ。イスラエル人は鏡を見て「自分たちは何者なのだろう」と自問し始めている。「民主主義なのか、それとも権威主義に基づく神権政治なのだろうか」と。イスラエル国民がこの警鐘に直面している今こそ、占領に関する議論を開始し、「占領下では民主主義は維持できない」という認識を高める時だ。民主主義は本質的に包括的であるため、イスラエルのユダヤ系市民だけを排除することはできない。だからこそ米国と同様に、イスラエルでも「国家の最大の脅威は、ハマスやイランではなく入植運動だ」という点を主張すべきだ。新政権が取り組んでいる活動(入植、そして東エルサレムの現状を危うくするハラーム・アル・シャリフへの挑発的訪問など)のせいで、イスラム世界との和平交渉が不可能になると主張することが重要だ。「イスラエル人はそれを望んでいるのか?イスラム世界全体と敵対したいのか?テロだと糾弾されたいのか?」こうした疑問こそ、イスラエルの公開討論において喚起されるべきなのだ。

入植者たちは、イスラエルがスラム街になったところで気にもとめない。しかし、ほとんどのイスラエル人はスラムに住みたいとは思っていない。彼らが望むのは許容と正常化だ。イスラエル国家の占領と入植者の脅威が結びつき、イスラエル人の心理を揺さぶっている。これはパレスチナ人にとっても、イスラエル・パレスチナ紛争の潜在的な解決策にとっても、非常に良い展開だ。今こそアラブ和平におけるイニシアチブを再開し、イスラエルのための解決策として提示すべきだ。そしてそれは、イスラエル人がパレスチナ人と平和に共存できるためだけでなく、全体としてイスラエル人が平和に暮らせるための計画として提示すべきである。

  • ダニア・コレイラット・ハティブ博士は、米国とアラブの関係に関する専門家であり、ロビー活動に注力している。また、トラック2協議に注力するレバノン非政府組織「協力と平和構築のための研究センター」代表でもある。
特に人気
オススメ

return to top