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米、イスラエル閣僚の「扇動的発言」を糾弾「全ての人種差別的レトリック」を非難

米国務省は、イスラエルのイタマル・ベングビール国家安全保障相の発言を強く糾弾し、「扇動的発言」「完全に人種差別的なレトリック」であるとした。(ロイター/ファイル)
米国務省は、イスラエルのイタマル・ベングビール国家安全保障相の発言を強く糾弾し、「扇動的発言」「完全に人種差別的なレトリック」であるとした。(ロイター/ファイル)
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26 Aug 2023 12:08:13 GMT9
26 Aug 2023 12:08:13 GMT9
  • イタマル・ベングビール国家安全保障相はテレビ番組で、ヨルダン川西岸地区における自身の権利はパレスチナ人の権利より重要だと発言し、抗議の嵐を呼んだ
  • イスラエルの野党イエシュ・アティドのカリン・エルハラル議員は、同大臣は「史上最も人種差別的・メシア主義的・カハネ主義的な政府の正真正銘の代表」であると述べた

アラブニュース

ドバイ:米国務省は、イスラエルのイタマル・ベングビール国家安全保障相のパレスチナ人に関する「扇動的発言」を強く糾弾するとともに、「全ての人種差別的レトリック」を非難すると述べた。

ベングビール大臣は23日、イスラエルのテレビ番組でのインタビューの際、ヨルダン川西岸地区における自身の権利はパレスチナ人の権利より重要だと発言した。BBCの25日の報道によると、この発言はネット上で抗議の嵐を呼び、発言の動画がソーシャルメディアで拡散された。

同大臣はテレビスタジオでのインタビューの際、アラブ系イスラエル人ジャーナリストのモハメド・マガドリ氏に対し次のように語った。「私と妻と子供たちがユダヤ・サマリアの道路を歩き回る権利は、アラブ人の移動の権利よりも重要だ」

「モハメド、あなたには悪いが、それが現実、それが真実だ。私の生きる権利は彼らの移動の権利より優先される」

この発言の背景には暴力のエスカレートがあった。パレスチナ人によるそれぞれ別の攻撃でイスラエル人3人が射殺されたのだ。そのうち1件はベングビール大臣が暮らすユダヤ人入植地があるヘブロンの近郊で起こった。イスラエル当局は殺害犯を捜索しつつ、数千人のパレスチナ人の移動にさらなる制限を課した。

ベングビール大臣の発言は炎上し、パレスチナ人およびイスラエル人の反体制派からの反発を招いた。同大臣はこの騒動を「フェイクニュース」と断じ、「極左」は同大臣の発言を「正確に引用していない」と非難した。

パレスチナ系米国人モデルのベラ・ハディッド氏は、ネット上で同大臣の発言の動画をシェアした一人だ。彼女は約6000万人のフォロワーがいるインスタグラムへの投稿で次のように書いた。「どんな場所でも、どんな時代でも(…)誰かの命が他の誰かの命よりも価値があるなんてことがあってはならない」

これに対し、ベングビール大臣は25日、X(旧ツイッター)にメッセージを投稿し、ハディッド氏は「イスラエル嫌い」であり、同大臣を「人種差別主義者で邪悪」な人物として印象付けようとしていると非難した。

同大臣は人種差別的・反アラブ的政策を打ち出している極右超国家主義政党「オツマ・イェフディット(ユダヤの力)」の党首であり、人種差別扇動とテロ組織支援で有罪判決を受けたことがある。

ベンヤミン・ネタニヤフ首相は12月に連立政権を発足させた際、東エルサレムおよびヨルダン川西岸地区で活動するイスラエルの軍隊化された国境警察を統括する閣僚ポストにベングビール氏を据えた。

パレスチナ自治政府は、「イスラエルのファシスト閣僚イタマル・ベングビール氏による人種差別的で悪質な発言を最も強い言葉で」非難するとしたうえで、「今回の発言はイスラエルのユダヤ人至上主義的アパルトヘイト体制やパレスチナ人に対する人種的テロを裏付けるものだ」と述べた。

イスラエルの野党イエシュ・アティドのカリン・エルハラル議員は、同大臣は「史上最も人種差別的・メシア主義的・カハネ主義的な政府の正真正銘の代表」であると述べた。

ベングビール大臣の政治的背景のルーツはカハネ主義にある。パレスチナ人を彼らの土地から追放することを支持する過激主義的で暴力的な人種差別イデオロギーである。

米国務省の報道官は24日夜、イスラエル人ジャーナリストからベングビール大臣の発言についてのコメントを求められた際、次のように述べた。「我々は、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ系住民の移動の自由に関するイスラエルのベングビール大臣の扇動的発言を強く糾弾する」

「我々は全ての人種差別的レトリックを非難する。そういったメッセージは、指導的地位にある人々によって増幅されると特に有害であるうえ、全ての人の人権の尊重を推進することと相容れないものだからだ」

EUも25日、ベングビール大臣のコメントを「強く糾弾」し、「民主主義の価値観と人権尊重は、パレスチナの領土において占領下で暮らす人々に関するものも含め、EUとイスラエルのパートナーシップの中心にあるものだ」と述べた。

BBCの報道によると、アラブ系イスラエル人、イスラエル領内のパレスチナ人、イスラエルの反占領団体を代表する諸政党もベングビール大臣の発言を非難したが、同大臣の発言はヨルダン川西岸地区におけるパレスチナ人の生活の長年の現実を反映したものに過ぎないと指摘する声も多かった。

占領下で暮らすパレスチナ人に支援を提供しているイスラエルの人権NGO「ベツェレム」は次のように述べた。「これは我々が50年間毎日、現地で目の当たりにしている現実だ。ユダヤ人の権利はアラブ人の権利より重要 — アパルトヘイトとはこのようなものだ」

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