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イエメンの暴力と苦しみの悪循環を止める方法

タイズに対する包囲は、イエメン政府にとって最も差し迫った人道上の懸念事項のひとつである。(ロイター)
タイズに対する包囲は、イエメン政府にとって最も差し迫った人道上の懸念事項のひとつである。(ロイター)
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06 Sep 2023 03:09:57 GMT9

先週イエメンを訪れた際、イエメン政府とフーシ派反政府勢力の間における停戦の不安定さをはっきりと感じた。停戦は2022年4月以来非公式に維持されているが、フーシ側は昨年国連に対して行った約束を今のところ果たしていないため、状況は揺らいでいる。正式な停戦合意や政治的解決に向けた動きが見られないまま暴力はエスカレートしている一方で経済は崩壊し、人道危機は深まっている。

この非公式の休戦は、正式な停戦合意はおろか和平合意にも結びついておらず、フーシ派がすぐに交渉のテーブルに着く様子もない。イエメン政府は、サヌアの空港を国際直行便のために開放し、ホデイダ港を通じて燃料を含む物資の輸送を増加させるという停戦開始時の約束を履行している。

しかし、フーシ派は約束を果たしていない。フーシ派によるタイズ包囲は9年目を迎えても終わりが見えず、これらの反体制派勢力は他の州への軍事的圧力を強め続けている。

サウジとイランの外交的な進展がイエメンでの前向きな動きにつながるという以前の期待は、今回の訪問で私が会ったイエメン人によれば、ここ数週間、フーシ派がいくつかの前線で攻撃をエスカレートさせているため、これまでのところ裏切られている。ハンス・グランドブルグ・イエメン担当特使は7月の国連安保理でのブリーフィングで、停戦開始以来戦闘は全体的に減少しているものの、前線が沈黙しているわけではなく、ダレ、タイズ、ホデイダ、マアリブ、シャブワの各県で武力衝突が起きていると述べた。特使は、「大規模な戦闘に戻るという公的な脅しと並んで、こうした暴力の火種が続いていることが、恐怖と緊張を高めている」と懸念を表明した。

グランドブルグ特使が発言した7月のブリーフィング以降も、フーシ派による政府支配下の複数の地域に対する攻撃がさらに続いている。ここ数週間、フーシ派はマアリブ、ラヒジュ、ダレ、タイズの各県を再び攻撃し、民間人や家屋、国内避難民キャンプを標的にした。8月30日には、マアリブのキャンプに3回の同時ミサイル攻撃が行われた。フーシ派の狙撃兵もまた、停戦ラインに沿って攻撃を再開している。

イエメン第3の都市タイズに対する大規模な包囲は、イエメン政府と救援機関にとって最も差し迫った人道上の懸念事項のひとつである。欧州地中海人権モニターは最近、300万人の住民が食料や医薬品などの基本的必需品の不足に苦しんでおり、さらに砲撃や狙撃による死傷の危険に常にさらされていると報告した。同組織はこの包囲について、国際法上「戦争犯罪に相当する可能性のある、民間人に対する集団的懲罰の一形態」であるとしている。

フーシ派は休戦協定を履行する代わりに要求を引き上げ、フーシ派支配地域の公務員給与を支払うよう政府に圧力をかけるために武力を行使している。フーシ派はまた、政府が徴収する石油収入の一部を要求しているが、彼らの支配下で徴収する石油収入を共有する気はない。

フーシ派は、個人・法人税、関税、港湾使用料、公共事業や通信会社への課徴金など、彼らが徴収するさまざまな徴収金に関する情報を提供していない。政府は収入をプールして中央銀行に送金することを提案しているが、フーシ派は今のところ拒否している。

政府へ圧力をかけるため、フーシ派は昨年10月、石油輸出ターミナルを含む政府管理下の港湾を砲撃し、石油輸出機能を停止させた。石油収入がなければ、政府は資金不足に陥る。先月発表されたサウジアラビアからの12億ドルの緊急資金援助がなければ、政府は基本的な公約を果たすことができなかっただろう。もちろん、これは一時的なもので、長期的に維持することは不可能であるため、石油輸出を再開することは不可欠である。

また、フーシ派の砲撃により深刻な燃料不足が発生しており、サウジアラビアは家庭の照明や病院・学校の運営を維持するため、発電所に緊急燃料を供給している。

政府の能力が低下しているため、イエメン国民に基本的な生活必需品を提供する能力が制限されている。何百万人ものイエメン人が人道的危機の増大に直面しており、特に国内避難民のような脆弱なコミュニティは、マリブだけで少なくとも200万人いると推定されている。人道危機は、世界食糧計画(WFP)を含む国際援助の削減によって悪化している。

経済開発はほぼ停止状態に陥っている。政府が開発プロジェクトに資金を提供する能力は決定的に制限されている。内戦の政治的解決に向けた進展が見られないことから、多くの援助国は政治的・治安的な不確実性に落胆し、開発援助を継続せず、紛争の成り行きを見守ることを決定している。イエメンに対する伝統的な支援国のほとんどは、開発援助を凍結または大幅に縮小して、緊急援助にのみ集中するか、世界の他の地域に援助を振り向けている。

フーシ派は、政府支配地域への軍事的圧力と人道危機の深刻化を狡猾に利用して、政府と国際社会を屈服させようとしているように見える。

先週の訪問中、フーシ派に圧力をかけることなく彼らが態度を軟化させ、約束を果たし、交渉による解決に向けて動く等、近いうちに状況が改善されることを期待している人はほとんどいなかった。

サウジとイランの外交的な進展がイエメンでの前向きな動きにつながるという以前の期待は、これまでのところ裏切られている。

アブデル・アジーズ・アルウェイシグ博士

イエメンの人々は、国連が政治的な解決に向けて迅速に動き、また、湾岸協力理事会(GCC)を含む国際社会が、この危機を乗り切るために援助をしてくれることを期待している。国際的な援助の削減は、まさに最悪のタイミングで行われている。

イエメンの和平に向けた動きには、少なくとも4つの面において協調した取り組みが必要だ。第一に、国連はフーシ派の拡大する要求に惑わされることなく、政治的な進展を迅速に実現する必要がある。第二に、イエメンとそのパートナーは、政府の資金不足を補うために石油輸出を再開する方法を見つける必要がある。第三に、国際通貨基金(IMF)や世界銀行などの国際金融機関は、政府財政の改革と増強に向けた取り組みを強化する必要がある。第四に、援助機関はイエメンへの援助を拡大し、急増している困窮者のニーズに応える必要がある。

しかし、これらの目標を達成するためには、イエメンは政府派閥内の団結と援助国や友好国間の緊密な協調が必要になる。その団結と協調がなければ、フーシ派反政府勢力はイエメンの苦悩に対する効果的な解決に向けた動きを阻み続けるだろう。

  • アブデル・アジーズ・アルウェイシグ博士は湾岸協力理事会(GCC)の政治・交渉担当事務次長補であり、アラブニュースのコラムニストである。本記事で述べられている見解は個人的なものであり、必ずしもGCCの見解を代表するものではない。ツイッター: @abuhamad1
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