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気候変動と生物多様性喪失の悪循環

マリのクリコロ州、サヘル地域にあるウェグニア湖周辺の干上がった土地。(Reuters/File)
マリのクリコロ州、サヘル地域にあるウェグニア湖周辺の干上がった土地。(Reuters/File)
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01 Dec 2022 12:12:51 GMT9
01 Dec 2022 12:12:51 GMT9

世界の注目が温室効果ガスの排出量と気候変動に集まる一方、人類と地球の間近に迫りつつあるもう一つの危機、すなわち生物多様性の喪失については、はるかに認知度が低い。先月世界自然保護基金が出した報告書によると、過去50年間で世界中の哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類の野生での個体数は平均して69%減少した。

2010年に開かれた国連の生物多様性に関する会合では、ある報告が世界の野生生物は毎年2.5%ものスピードで減少していると警告した。会合の最終決議は、2020年までに野生生物の生息数の減少を完全に終わらせることを求めるものになった。それから12年以上が経ち、来月モントリオールで国連生物多様性条約会議が開催されるが、報告によれば世界の野生生物生息数の減少は毎年2.5%のままである。あらゆる野生生物と生物多様性の喪失は人間の活動の結果であり、したがって人間のコントロールの及ぶ範囲にあるにもかかわらず、要するに、何一つ成し遂げられなかったということなのだ。

最近になって、同じく主として人間の活動に由来する新たなテーマが登場した。気候変動である。極端な干ばつ、大洪水、深刻な熱波と寒波が世界中で日常的に起きるようになり、単に野生生物について見た場合ではなく全体としての生物多様性の喪失のスピードは増大している。気温の上昇で、森林火災がシベリアやヒマラヤ、カナダ北部を含め世界各地で毎年夏になると起きるようになった。火災によって、もともと縮小しつつあった森林が数万キロ平方メートルも焼け落ちるだけではない。数百万の動物、様々な種類の植物の生命が失われるのだ。多くの点で、我々は毎年発生する何百もの森林火災で何が失われているのかに気づいてさえいない。

洪水と沿岸地域で進む浸食は生物多様性に対して同様の影響を与え、世界の海水温の上昇は大規模ながら大部分は目に見えず、計ることもできない破壊を海洋の厖大な生物多様性にもたらす。多くの人は、温水によるサンゴの白化現象についてほとんど耳にしたことがないかもしれないが、これはサンゴの死滅というだけの問題ではない。一つ一つのサンゴは動植物から成る巨大な生態系を抱えており、世界はそれらすべてを人間の活動のために急速に失っているのだ。

気候変動が生物多様性を破壊する一方で、動植物の生命が失われることで気候変動の影響がさらに深刻なものになっている。例えば、浸食と水温上昇(これもまた人間の欲の結果である)によって、世界に残ったわずかなマングローブは急速に失われつつある。だが、マングローブは海面上昇に対する有効な防壁として重要な役割を果たすとともに波を穏やかにして沿岸地域の浸食に歯止めをかけ、高潮や異常気象の際に洪水を防いでいるのだ。

気候変動が生物多様性を破壊する一方で、動植物の生命が失われることで気候変動の影響がさらに深刻なものになっている。

ランヒル・ナヤール

同じく、気候変動による生物多様性の喪失が気候変動の影響をさらに強める例が他にも多く存在する。例えば、極端な高温により発生した火災が二酸化炭素濃度を低下させるために必要な森を焼いてしまうような場合である。

何十もの会議、何百もの宣言にもかかわらず、世界の指導者は奇妙にも気候変動と生物多様性の喪失、いずれの問題にも対処することができていない。その結果、2つの問題は互いに強め合い、地球は破滅に向かって悪循環の下り坂を加速しながら転がっている。

究極的には、政治指導者や企業が行動を起こさない主な理由は金である。気候変動に関して言えば、裕福な国々は毎年発展途上国に対し1,000億ドルを拠出するという約束を反故にした。これが、気候変動に関わる目標を達成しようとする国々でその進捗を阻んでいる大きな問題の一つである。

生物多様性に関しても、状況はまったく同じである。すでに、生物多様性をめぐる諸問題に対応するために必要な資金の不足額は年間7,110億ドルまで増大している。一部の予測によると、この数字は2030年までに年間約1兆ドルに達するという。このように巨額の数字を目の前にして、大半の国では企業の収益性が数年連続で過去最高を記録しているにもかかわらず、裕福な国々は逃げ腰の姿勢を続けている。

国連生物多様性サミット開催時には、国連環境計画による新たな報告書が発表されるだろう。その内容はおそらく、上記の資金の不足がどの程度拡大したかを示し、裕福な国々が誓約を果たす義務を強調するものになるだろう。誇示されてきた近視眼的で現実逃避的アプローチは必ずや裕福な国々とその企業に跳ね返ってくるであろう。両者とも気候変動と生物多様性喪失の深刻な影響を免れ得ないからである。

近づきつつある会議は、おそらくは先週シャルムエルシェイクでの気候変動サミットで考え出された「損失と損害」基金の線に沿って、世界が合意に達する絶好の機会である。だが、モントリオールでも先のCOP27でも、肝心な点は裕福な国々が時間通りに、そして誠実に約束を履行するかどうかということなのだ。

•ランヒル・ナヤール氏はメディア・インディア・グループの編集長である。

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