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不倒のネタニヤフ氏により、イスラエルに繰り返しの一日が訪れる

イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相の支持者の1人が、2020年2月28日にエルサレム内の市場でネタニヤフ氏の選挙運動集会が行われた後、スーパーマーケットのカートで選挙ポスターを運んでいる。(AP通信)
イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相の支持者の1人が、2020年2月28日にエルサレム内の市場でネタニヤフ氏の選挙運動集会が行われた後、スーパーマーケットのカートで選挙ポスターを運んでいる。(AP通信)
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01 Mar 2020 08:03:39 GMT9
01 Mar 2020 08:03:39 GMT9

月曜のイスラエル総選挙に向けて思うことは、三度目の正直とはほど遠い。世論調査では、今度も結局は役に立たない - つまり、2019年に行われた前2回の選挙結果と同様に、抜け目ないやり取りと不快な交渉を延々と繰り返し、組閣に失敗する - と見られている。

イスラエルでは正当な政府ができるどころか、合法性すら危ぶまれ、悪化の一途をたどる不名誉な政治的議論を交わす暫定政府が1年以上続いている。この最新の民主的運動で最も目立つ特徴は、選挙と懸案事項の重要性が大きにもかかわらず、ほとんどの政党は厄介で些細な論点でキャンペーンを張っている点だ。ベンジャミン・ネタニヤフ首相を中心に、どの政党も扇動や個人攻撃を続け、恐怖を煽るばかりだ。

最近、イスラエル訪問から戻った外国の外交官の友人からは、路傍に選挙ポスターすら掲示されていない、これはいずれにしろ選挙は国民の代表者、ひいては政府を選ぶメカニズムとして機能しないと諦めている証拠だろうかと皮肉交じりの深刻な様子で問われた。答えは明らかに「ノー」だが、世論調査が正しいとすると、イスラエルの有権者は本質的に変化を嫌い、大半の有権者は何であれこれまでの投票習慣を変えるつもりがない。

9月に行われた前回の選挙以降、主な展開は2つ - 汚職容疑に関するネタニヤフ氏の正式な起訴と、ワシントンの中東和平計画の発表 – だが、投票者の選択には最小限の影響しか見られない。ネタニヤフ氏の率いるリクード党とベニー・ガンツ氏の率いる青と白連合は、今でも世論調査の評価が五分五分で、国内を二分する政治的分裂のどちら側でも、2つの政治連合の構成は変わっていない。この結果、両連合の主要政党は、連合内のさらに小さな派閥どうしで相手を貶め、票を競い合う形で有権者に呼びかけ、非論理的で自虐的な否定的キャンペーンを繰り広げている。

青と白連合を中心に、連合内部で足を引っ張り合う状態は、最近の世論調査でリクードと「青と白」が35議席対33議席、つまり2議席の僅差になると予測され、パニックに陥ったとしか思えない反応だ。これらの世論調査の許容誤差を踏まえ、両連合ともに過半数がない状態を考慮すると、連合内部で争い合うより、対立連合の支持者を自派に引っ張る説得の方が賢明だったはずだ。この状況が変わらない場合、イスラエルの政治システム上、イスラエル・ベイテヌ党を完全に掌握し、支持した人物を連合のリーダーに据えられるアビグドール・リーバーマン氏が再び焦点となるだろう。これではイスラエルの政治家で最も危険で信念のない人物が膨大な権力を手にしてしまう。

よどんだイスラエル政治が澄みわたるかと、来週の開票結果に大きな期待を寄せる必要はない。

ヨシ・メケルバーグ

極めて非論理的なことに、ネタニヤフの正式な告発もトランプ和平協定もこの選挙キャンペーンに大きな波を巻き起こしていない。首相は収賄、詐欺、契約違反の容疑で法廷に召喚されたにもかかわらず、公の議論にほとんど影響はなく、ネタニヤフ氏の政治的ライバルが反対キャンペーンに使ったことすらないとは、信じられないことだ。首相が法廷で被告として立ちながら公職を続けてはならないとする法はないものの、実務と道徳の両方の理由から、この状況は衝撃的だ。現状はよい政治の妨げとなり、首相官邸、国内政治全般、イスラエルの国際的評判を損なう。野党がこの不条理な状況を利用できないことから、間違いなく野党は力が弱く、投票で突破口を開く力がないことも明白だ。

特に選挙キャンペーン中に、イスラエルとパレスチナの和平に関するトランプ大統領の計画について本格的な議論がないことも説明しがたい。本来、正反対の立場が真っ向から意見を戦わせて当然の話題だ。トランプ氏の計画は、ネタニヤフ氏にとっては勝利であり、ワシントンの権力者たちにネタニヤフ氏が影響力を持つ証拠だった。逆に野党にとっても、この計画を見え透いたジェスチャーとして公開し、実行可能な代替案を提起する絶好の機会だった。ところが野党は計画に協力する態で、ネタニヤフ氏と氏の率いる右翼連合にイスラエルの政治問題の最重要事項を任せてしまった。そのため、国内は従来とははっきり異なるビジョンのリーダーと政党を切望しているが、ガンツ氏はネタニヤフ氏のまがい物に過ぎないというネタニヤフ氏の意見には理がある。

ネタニヤフ氏は、汚職で裁判にかけられ、前2回の選挙で成功できず、退屈で不機嫌そうな外見をしているにもかかわらず、今でもガンツ氏より首相にふさわしいと国民から評価されている。ほかの点でも、ガンツ氏にはリーダーとして適性を自己主張し、差別化できる可能性があった。ネタニヤフ氏の3つ目の問題は、見苦しくもイスラエルのパレスチナ市民とパレスチナ系代表者を非合法化した点だ。しかしガンツ氏は、統一アラブリストの支持を取り付けた政府がユダヤ人とアラブ人の関係の分岐点になると信じる勢力を組織する代わりに、ネタニヤフ氏の罠に陥り、パレスチナ系イスラエル人の代表者を、国政を担う対等のパートナーとは見なさなかった。

よどんだイスラエル政治が澄みわたるかと、来週の開票結果に大きな期待を寄せる必要はない。それには、裁判開始後にネタニヤフ氏を事務所から解任するか、リーバーマン氏に2つの主要連合のどちらかを支持するよう圧力をかけて、4選を避ける必要があるが、これらはまだ現実化する可能性があるだけで、実現していない。

ヨシ・メケルバーグ氏はリージェンツ大学ロンドン校で国際関係学の教授として、国際関係学・社会科学課程の長を務める傍ら、チャタムハウスの中東・北アフリカプログラムでアソシエイトフェローにも任じられている。国際的な印刷メディアおよび電子メディアに定期的に寄稿している。Twitter:@YMekelberg

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