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米国はイスラエルに対し停戦の受け入れを強制すべき

米国はガザにおける停戦の要請に対し拒否権を行使することで、大きなリスクを負った。(AFP)
米国はガザにおける停戦の要請に対し拒否権を行使することで、大きなリスクを負った。(AFP)
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14 Dec 2023 11:12:03 GMT9

勇気あるアントニオ・グテーレス国連事務総長は先週、国連憲章の第99条に基づき、世界の平和と安全を守るためにガザでの停戦を要請した。第99条に基づく要請は、50年以上行われていなかった。米国は、国連安全保障理事会においてこの要請に対し単独で拒否権を行使した。

米国は停戦の要請に対し拒否権を行使したことで、大きなリスクを負った。12日の国連総会では、圧倒的多数の賛成で停戦を求める決議案が採択された。グテーレス氏の懸念が現実のものとなり、ガザの人道体制が崩壊したり、地域戦争にまでエスカレートしたりすれば、誰もがアメリカを非難することになるだろう。米国はこの紛争において、イスラエルとともに深みに落ちつつある。イスラエルもその反対をいかずに、中東におけるアメリカの政策を推進する国という印象を与えている。バイデン政権がイスラエルに送る武器が増えるのに合わせて、この大量虐殺における米政権への非難が高まっている。バイデン大統領は9日、議会の審査を経ずに、緊急時の大統領権限を行使して、イスラエルへの戦車砲弾の供与を承認した。

アメリカがイスラエルに来年1月までに軍事作戦を終結させるように伝えたとか、密室で行われている論争の主張とか、ネタニヤフ政権が民間人の死亡者を最小限に抑えるために十分なことをしていないというアメリカの控えめな批判とか、メディアがさまざまに報道しているにもかかわらず、今日私たちが目にしているのは、イスラエルのタガが外れた振る舞いを、アメリカは揺るぎない姿勢で支持している様子である。出口戦略も政治的構想も何もないまま、紛争が続いているのである。イスラエルはハマスの完全敗北以外、一切受け入れないというが、これは非現実的だ。ハマスの戦闘員は追い詰められれば死ぬまで戦うだろうが、これは誰の利益にもならない。

時間はイスラエルではなく、ハマスの味方だ。イスラエルが殺害する無実の民間人が増えれば増えるほど、世界の世論はますますイスラエルを敵視するようになるだろう。棺に入れられて祖国に帰還するイスラエル兵が増えれば増えるほど、イスラエル国民の怒りは増すだろう。イスラエル政府が人質救出に失敗し、救出できない日々が長引けば長引くほど、イスラエル国民の怒りはたまり続け、国家に対する不信感は高まり続けるだろう。そして、ハマスが持ちこたえる日々が続けば続くほど、その強さと粘り強さが証明されることになるだろう。

現在、フーシ派がイスラエルの港に向かうあらゆる船舶を攻撃し始めている。これらの攻撃は当初、すべて迎撃されていたが、11日にはノルウェーのタンカーがミサイル攻撃を受けており、今後何か判断ミスがあれば、事態は収拾がつかなくなる可能性がある。北部の前線でも同様のことが言える。実際には、イスラエルもヒズボラも対立を抑えた状態にしたいと考えているにもかかわらず、エスカレートする可能性がある。停戦はすべての人にとって最善の利益となる。とはいえ、いかなる停戦も、停戦後翌日からの計画が伴っているべきである。

米国は断固として、ガザの停戦と停戦後の計画を進めるよう迫るべきである。停戦後のシナリオが実現不可能になる前に、今すぐ停戦を迫るべきだ。イスラエルはガザを第二のスターリングラードにしつつある。爆撃により、ガザ地区は人が暮らすことができない場所になりつつある。ガザからエジプトへ大量の住民が流出する懸念が高まっており、問題をさらに複雑にするおそれがある。イスラエルの一部の政治家がしつこく唱えている構想である、パレスチナ人のシナイ半島への強制移住は、エジプト政府に多大なる悪影響をもたらすだろう。エジプトの不安定化、ひいては戦争につながりかねない。したがって、米国は事実上の集団移動が起こる前に行動すべきである。

停戦はすべての人にとって最善の利益となる。とはいえ、いかなる停戦も、停戦後翌日からの計画が伴っていなければならない

ダニア・コレイラト・ハティブ博士

米政権は停戦を実行するために、実利を重んじて、過激主義的な目標を諦めるようイスラエルに対して圧力をかけるべきである。バイデン氏は12日、イスラエルは世界からの支持を失いつつあると警告したが、それだけでは十分ではない。イスラエル政府に対し、現実を受け入れさせるべきである。たとえイスラエルが勝利を収めることになっても、その勝利は決して割に合わない、「ピュロスの勝利」となるだろう。米国は唯々諾々とイスラエルの要求に従うのではなく、ハマスを軍事的に打ち負かすことはできないと分からせるべきである。歴史を通じて、他の多くの武装した抵抗勢力の場合のように、ハマスも政治的解決によって退場させることができる可能性がある。

停戦時には、ハマスの指導者の退場と戦闘員への恩赦の合意がハマスとの間で成立していなければならない。カタールおよびイランとの間でも、合意をとりつけなければならない。カタール政府は仲介を行い、場合によってはハマスの指導者に避難先を提供しなければならないかもしれない。イラン政府には、ハマスの軍事部門であるカッサム旅団への軍事支援から手を引くための見返りが必要となるだろう。この合意には、新たな暫定政府樹立に向けて18カ月以内に選挙を実施するという約束と引き換えに、カッサム旅団の完全な活動停止が含まれる可能性がある。その後、この暫定政府がパレスチナ国家の最終的地位に関する諸問題について交渉することになるだろう。

その間、ガザ地区は国連傘下のアラブ・イスラムの抑止部隊によって管理され、ガザ地区の統治体制の構築にも取り組むことになるだろう。ガザ地区の管理を引き継ぐ部隊が、ガザ住民の間で正当性を認められることが極めて重要である。もし認められなければ、住民の抵抗に直面することになるだろう。ここでも、米国はイスラエルの思いつきに応じるべきではない。アメリカ政府はイスラエルに対して、ガザ地区をどこが統治するのか選ぶのはイスラエルではないということ、イスラエルは勝手にガザを出入りする権利もないということを明確にすべきである。

ヨルダン川西岸地区でも同様のことを強制すべきである。イスラエル軍は徐々に撤退し、多国軍と交代すべきである。第一段階として入植地の建設を中止し、その後第二段階として入植地を解体し、主権と独立したパレスチナ国家を認めるべきである。

イスラエルは間違いなくこのシナリオを気に入ることはないし、米国内のロビー活動を利用して、圧力をかけにくるだろう。しかし、米政府はこのような国内の圧力に立ち向かうべきである。もし地域戦争に発展すれば、米国の国益を損ない、バイデン氏の再選の見込みも消えてしまうだろう。

イスラエルは現在、他国も窮地へと追い詰めている。イスラエルはレバノンのヒズボラに対して警告を発したばかりだ。もしイスラエルがこの警告に基づき攻撃した場合、イランは沈黙を守り続けるのだろうか。イランは黙っていないだろう。イスラエルがアラビア湾岸地域におけるアメリカの利益を標的にする可能性はあるのだろうか。もちろん、可能性がある。今こそ米国は決断し、イスラエルに停戦を受け入れるよう強制する時だ。さもなければ、手遅れになり、その結果を引き受けるのは米国と米国の一般市民になるだろう。

ダニア・コレイラット・ハティブ博士は、ロビー活動に重点を置く米国とアラブ諸国関係の専門家。トラックII 外交に注力するレバノンの非政府組織「協力・平和構築研究センター」の共同創設者。

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