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ガザと私たち:言動と行動のはざまで

2024年1月9日、イスラエルの爆撃により、ガザ地区南部のハーン・ユーニス上空に煙が立ち上っている(File/AFP)
2024年1月9日、イスラエルの爆撃により、ガザ地区南部のハーン・ユーニス上空に煙が立ち上っている(File/AFP)
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11 Jan 2024 02:01:01 GMT9
11 Jan 2024 02:01:01 GMT9

地域で何が起きているか真実を知ることは、私たちの利益になるのだろうか。それとも、私たちはあまりに世間知らずであるゆえその辛さに耐えられないだろうか?

個人的には、間違っていることを願いながらも、私たちは2024年に到来するさまざまな試練に立ち向かうにはあまりにも無知で無力だと感じている。特に過去数ヶ月間に多くの人々の意図やアプローチが露呈した後ではなおさらだ。

中近東地域は、我々の目の前で地理的にも人口統計学的にも変化しつつある。その中で、さまざまな訪問や地域ツアーに気を取られながら、米国や一部の西欧諸国政府が絶え間なく繰り返している外交声明を信じるよう期待されている。しかし一方で、アラブ世界やその周辺でミスリードされる人々や「ミスリーダー」の中には、空虚な脅しや中身のない過激な言動に慰めを得るものもいる。

ヒズボラの拠点であるベイルート南郊のダヒーヤで、イスラエルがハマスの有名な指導者サレハ・アル・アルーリ氏と側近たちを暗殺したとき、レバノン・ヒズボラの書記長ハッサン・ナスララ氏が何を話すのか多くの人が関心を寄せていた。しかしナスララ氏は、新しいことは何も言わなかった。

さらに、ヒズボラはそもそもイランの戦略の一部である。イラン革命防衛隊の指導者たちは、「イスラエルの殲滅」は間もなくだと長らく繰り返し脅してきたが、約束した「目標達成」にはまだまだ時間をかけている。これまでの3か月間でイスラエルの機械がガザ地区に恐ろしい人道危機的状況を招き、何万人もの無辜の市民が命を落としているにもかかわらずだ。

イラン政府は小競り合いや立場表明の責務を代理のアラブ諸国に委任している

エヤド・アブ・シャクラ

相変わらず、イラン政府は小競り合いや立場表明の責務を代理のアラブ諸国に委任している。イランは地域での影響力を強めるために、他者の身体を利用し彼らの国や社会の廃墟を踏み台にして「レジスタンス」と称される戦いを今までもこれからも続けているのだ。

もちろん、イラン政府は見返りを期待している。何十年もそうだったように、西側諸国が中近東の残存部をひとつひとつ銀の皿に載せてイランに手渡し、その後無理やり合意や解決を押し付けることを期待しているのだ。

イラクでは、イラン政府がガザの復讐を口実に民兵を使って現地で「代理戦争」を展開している。しかし、米国政府やイスラエルは特に懸念を示していないようだ… イラク国家、イラクのアイデンティティ、そしてイラクの主権はすべて過去のものとなってしまった。

シリアでは、かつて米国のバラク・オバマ元大統領が提示した「レッドライン(越えてはならない一線)」がシリア政権を救ったが、イランの支配力もまたシリアの首都と「中央地帯」にまで強化された。「中央地帯」とは、東部のイラク国境からかつてレバノン共和国のあった西部まで広がる地域を指す。現在シリアの領土は、勢力圏、麻薬工場、武器密輸ルート、そして近隣の国々に対立と不安をもたらす地域に分断されている。

レバノンでは、ヒズボラを通じて金融および安全保障の覇権を握っていたイランが「戦争と平和の決定」を下し、国の性質や状況が変わった。イランが地域支配のために仕組んでいる「レジスタンス」という名目がなければ実現できなかったことである。この「レジスタンス」の名の下で、ヒズボラは他のすべてのレバノンの政党や勢力と異なり、武装を維持している。武力を用いてヒズボラは小競り合いを繰り広げ、上手く立ち回って強権を振るっているのだ。

イエメンのフーシ派はイランの「扇動の戦争」において、紅海で新たな役割を果たしている。

エヤド・アブ・シャクラ

現在、レバノンはイスラエルとの海上国境線の画定を承認した後、陸上国境線に関してさらなる交渉と取り決めを行うため、米国の特使で国際エネルギー問題担当のアモス・ホッホシュタイン氏の到着を待っている。ナスララ氏は最新の演説で、「もしイスラエルがガザでの作戦を中止すれば」緊張緩和の選択肢も除外はしないと述べた。言動が過激化するにつれ、ロケット弾や砲撃の応酬も国境越しに続いている。なお、標的となったイスラエルの施設の多くはしばらく前から避難が完了していることから、いわゆる「交戦規則」の範囲内であることは念頭に置いておきたい。

上記に基づくと、イエメンのフーシ派はイランの「扇動の戦争」において、紅海やバブ・アル・マンデブ海峡周辺で新たな役割を果たしている。

この新勢力が原因で、海上貿易を保護するため国際的な介入の重要性が増している。また、イランの「サービス」の必要性も高まっており、この地域が分割された際にイラン政府が分け前を手に入れることになるだろう。特に「イスラエル破壊」の意図がないことが確認された後、必要性が増している。反対に、イラン政府の長年にわたる脅威は、イスラエルの拡張主義右派の台頭と、イスラエルに対する米国の政治的・軍事的支援強化を後押しした。

数日前、親イスラエルのインターネット活動家がXで私を攻撃し、イスラエル政府とイラン政府の利害の「交点」について議論することは馬鹿げていると非難した。しかし、私は言動よりも行動が重要だと確信している。

バイデン政権は、イランがイスラエルを攻撃する意図がないことを十分に認識している。イランは、ガザの人々を追放して地域紛争に拡大させることに反対した。その理由は、第一に、パレスチナ問題を解決する必要性についてイスラエルと同意見だからである。そして第二に、中東におけるイランの地域的役割を維持したいと考えているからだ。

未だ疑念を拭えないならば、アラブ・レバント地域でイランの支配下にあるエリアの状況を考え、「イラン人は自殺志願者ではない」というオバマ氏の言葉を思い出してみると良いだろう。

  • エヤド・アブ・シャクラ氏はアシャルク・アル・アウサトの編集長。X: @eyad1949
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