2つの要因により、非営利組織がより大きな社会的責任を負うよう促進する必要が高まっている。1つ目に、原油価格の急落で政府の収入が減少し、したがって、現在の予算水準で社会制度を維持する能力も低下している。特に、貿易戦争と保護主義がきっかけとなった世界的な経済不況の中での価格低迷も起こっている。非営利組織は、福祉支援の提供や、学校や医療施設への資金拠出により、一定の救済提供に役立つことができる。 

2つ目の要因は、健康制度に負担をかけ、人々の不意を突いた新型コロナウイルスの急速な拡散だ。ここでもまた非営利組織は、病気の予防と封じ込めにより多くの支援を提供することにより、役立ち得る。ボランティアは非医療援助の提供と、社会と医療機関との関係調整において、税のかかる医療従事者を手助けできる。

日曜日、リヤドで第7回「社会福祉事業のためのシータ王女賞」授賞式が開催され、いくつかの組織や個人がその社会貢献を表彰された。この慈善事業は、慈善協会の名誉会長でもあるサルマン国王の姉、故シータ王女にちなんで命名された。この8年前に設立された団体は、ボランティアや社会福祉事業のリーダーを表彰するだけでなく、非営利事業を推進および支援する取り組みを主導している。

この式典は、長年衰退していたサウジアラビアやその地域での非営利活動の復興を強く印象付けるものだ。石油の富により、政府は無償の教育や医療に出資し、恵まれた福祉制度を設立することができるようになった。これらの活動は、歴史的には非営利組織の領域だったものだ。9月11日の攻撃の後、世界中の政府が慈善活動の精査を開始し、一部でガバナンスが不十分であることが判明したため、非営利組織の役割はさらに縮小した。テロや暴力的過激主義に知らず知らず資金拠出したとして閉鎖された組織もある。疑惑は後を引き、非営利活動に甚大な影響を与えた。

しかし、今週のシータ女王賞授賞式で表彰された団体や個人の活動からも明らかなように、透明性と説明責任の改善、および政府機関による精密な調査により、非営利組織は再び重要な社会的役割を果たすようになった。

湾岸諸国の非営利組織の経済的貢献について手に入る情報は限られている。世界的に、非営利組織が寄与する国内総生産のシェアは、国ごとに大きく異なる。多くのランキングで、各非営利組織の経済全体への寄与度が最も高いのはカナダと米国で、それぞれ約8％と7％だ。ヨーロッパ諸国ではベルギーが6％でトップで、アジア太平洋諸国のトップは日本、ニュージーランド、オーストラリアで、それぞれ5％ほどである。

金銭的には、非営利組織は米国経済に毎年約1.4兆ドルの寄与を行っている。それに加え、ボランティア事業の価値もある。2018年米国ボランティア調査では、7,700万人以上の成人（米国人口の30％）が組織を通してボランティア活動を行っていることがわかった。全体として、アメリカ人は70億時間近くボランティアをしたことになり、それは推定1,670億ドルの経済的価値に相当する。

非営利事業は何世紀にもわたって米国社会の特色だった。19世紀半ばにアメリカを訪れたフランスの作家で外交官のアレクシ・ド・トクヴィルは、アメリカの暮らしのそうした側面を称賛した。彼は、州と営利団体が経済的および社会的生活を支配する母国フランスと比較して好意的にとらえた。

現在、ハーバード、イェール、コロンビアなどの世界的に有名な学校を含むほとんどのアメリカの大学は非営利であり、いわゆる州立大学でさえ実は非営利組織だ。ほとんどの病院と社会福祉施設も非営利施設である。 

アメリカ同様、アラブもその歴史の大半において、非営利組織が教育、健康、社会福祉の分野を支配していた。エジプト、イラク、モロッコ、チュニジアの中世にまでさかのぼる有名な大学は、すべて非営利組織であり、下級学校や病院、療養所も同様だった。さらに、旅行者の宿もほとんどが慈善団体によって資金提供されていた。故郷のモロッコから中国へと旅した14世紀の偉大な探検家イブン・バットゥータは、彼が無料で滞在した宿と地元で一番の才能に出会った場所について長々と語った。

石油事業が盛んになる以前のサウジアラビアでは、非営利組織が教育と社会福祉を支配していた。メッカとメディナの非営利施設は、当時の偉大な旅行作家たちが記録したように有名だったが、リヤドにもまた、民間の基金や寄付によって運営される学校や学生寮、そして旅行者のためのホステルなど、同様の施設があった。ある有名なホステルは街の南東部、城壁のすぐ内側にあった。

非営利事業が復興し、サウジアラビアはその伝統を取り戻そうとしている。困難な時代に、非営利組織は恵まれない人々を助けることができる。

Abdel Aziz Aluwaisheg

シータ王女賞受賞者の表彰で明らかにされたように、非営利事業が復興し、サウジアラビアはその伝統を取り戻そうとしている。困難な時代に、非営利組織は恵まれない人々を助けることができる。受賞者の1人は、非営利フードバンクを創始したNora Al-Ajmiだった。もう1つは、無償の医療を必要とする人々に提供する制度、そして3つ目は、社会福祉制度を優先している基金行政に授与された。受賞した非営利組織の中には、サウジアラビアの外で活動するものもある。

現在の原油価格の下落が続けば、一部の原油輸出業者は、非営利組織が社会サービスの提供においてより大きな役割を引き受けるよう促進する必要が出てくる。これは、政府サービスが制限されているイラクなどの国や、今回の原油価格崩壊前からすでに予算のやりくりに苦労している国の場合に特に当てはまる。

非営利組織は通常多くの人手を要するため、中程度の賃金であっても、雇用創出に役立つことができる。多くのアラブ諸国では失業率が2桁で、若者、特に女性においてはさらに高い。重要な社会サービスを提供し、政府が負担しているサービスの費用の一部を軽減する一方で、非営利組織は失業者に有意義な仕事を提供することができる。

• Abdel Aziz Aluwaishegは、湾岸協力会議（GCC）の政治問題および交渉分野の事務局長補で、アラブニュースのコラムニストです。この記事で表明された見解は個人的なものであり、必ずしもGCCの見解を表すものではありません。Twitter：@ abuhamad1