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書評:目撃証言でよみがえる広島の原爆

ダットンが公開したカバー画像: M.G.シェフトール著「最後の証言者たち」(Dutton via AP)
ダットンが公開したカバー画像: M.G.シェフトール著「最後の証言者たち」(Dutton via AP)
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10 Sep 2024 02:09:11 GMT9
10 Sep 2024 02:09:11 GMT9

原爆投下はあまりに恐ろしいため、すべての証言が真髄をついている。M.G.シェフトールの『ヒロシマ: 丁寧に調査されたオーラル・ヒストリー」はその一つだ。

語り手は技術者から女子学生までさまざまだが、そのメッセージは同じである。被爆者の一人、大岩幸平さんの言葉を借りれば、「地獄があるとすれば、それはきっとこのようなものに違いない」

1945年当時中学生だった大岩さんは、遺体を積み上げるのを手伝うように言われた。黒焦げになった肉は握り潰され、骨だけになった。作者が逐一語る中で、彼の姿は多くの死体のひとつである。

物語りは1945年8月6日まで続き、その瞬間の周囲をぐるぐると回り、その後、目撃者の証言を織り交ぜながら、その瞬間が残したものを描写する。

その体験は、巨大な悪夢を思い起こさせるに等しく、一度に読むのは難しいほど辛い。

1987年から日本に住むアメリカ人であるシェフトールは、主に日本で、台湾や韓国でも「被爆者」と呼ばれる何十人もの被爆者にインタビューを行った。全545ページのうち、50ページ以上が参考文献とメモで占められている。

「私は、原爆投下そのものだけでなく、生き残った人々が原爆投下以前に知っていた世界、そして彼らが瓦礫と灰の中から再建を手伝った新しい日本についても記述したい」と彼は謝辞に書いている。
何万人という多くの人々が一瞬のうちに亡くなったにもかかわらず、生き残った人々から何度も何度も聞かされた話なのだ。

日本のグラウンド・ゼロから2.1キロの地点にいた大岩さんは、布団の中にいた。

日本に赴任し、被爆者インタビューを数多くこなしてきた記者にとって、文化的背景を説明するための本書の一部は、少々長く、丹念に詳しく書かれているように思えた。

しかし、この記者はまた、ヒロシマの物語がいかに忘れ去られようとしているかを思い知らされた。被爆者は現在90歳を超えている。

シェフトールは、「蒸発した 」という考えを否定することに1章を割いている。リトルボーイとファットマンによる熱と破壊は、「人々に魔法の杖を振りかざし、そして瞬きの間に、痛みのないきれいな 「パッ 」と消えるのを見る」ようなものではなかった、と彼は書いている。

何人かの人の顔は文字通り消えていた。眼球が飛び出し、眼窩からぶら下がっている人もいた。黒焦げの人影が平らになった街をさまよい、「水……水……」と水を乞うていた。

放射能による病気は何年も続いた。彼らは死ななかったことへの罪悪感と羞恥心を感じていた。

彼の本は、非情な暴力と痛ましいペーソスのすべてにおいて、そして最も重要なこととして、核戦争の危険性を警告する物語として、彼らの物語を語っている。

AP

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