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ベールを脱ぎつつある「カネを生む機械」サウジアラムコ

写真キャプション:サウジアラムコの企業ロゴ(ロイター)
写真キャプション:サウジアラムコの企業ロゴ(ロイター)
14 Aug 2019 02:08:04 GMT9

投資アナリスト向けに行われた電話会議のインターネット配信によって、今日の段階でサウジアラムコについては24時間前よりもかなり多くのことが明らかになっている。メディアは舞台袖で静かに見守るにとどまったものの、今回の電話会議はより透明性を高め、金融界のより幅広い層への働きかけを行う同社の動きの一端と言える。

株主参加型のこうした取り組みは、グローバルな投資の世界では一般的なものだ。インターネットを介した円卓会議という形で、投資家から経営陣に具体的な質問をする機会を設けるのだが、たいていは決算や流動資産に関連する発表に合わせて行われる。

石油産業におけるアラムコの競合他社も含め、多くの企業で普通に行われていることであっても、サウジアラビアの巨大石油企業にとってはこうしたイベントの開催は社風を一変させるほどの進歩である。

今年、120億ドルという記録的な起債額の目論見書を公表するまで、サウジアラムコは(要約しかないが)連結損益計算書やバランスシートはおろか、公式の利益額すら公表してこなかった。ここ数カ月の間に、同社はかつてない勢いでベールを脱ぎつつある。

そういうわけで、投資家向けの電話会議は情報公開を進める上で有益なステップであった。会議自体は予定されていた時間よりも早く打ち切られ、おそらく一部のアナリストの質問は、堅苦しく、あらかじめ準備されていたという印象を与えるものだっただろう。会議を取り仕切ったサウジアラムコの最高財務責任者、カリド・アル=ダッバーグは、ほぼ原稿通りの説明しかしなかったが、より上層部からの経営陣が参加しないということは予想の範囲内だった。

とはいえ、サウジアラムコとその財務状況に関しては新しい重要な情報がいくらか得られた。まず、おそらくもっとも特筆すべきことは、同社が非常に優れた「カネを生む機械」であるという点だ。もちろん目論見書からもある程度は読み取れたことだが、石油ビジネスの動向はこの春以来大きく変化している。

6か月にわたって石油価格が乱高下した後で、将来の需要動向に大きな疑問符がつく状況であっても、サウジアラムコが半年で469億ドルの純利益を上げ、史上もっとも収益の高い会社としての地位を確保したことは注目に値する。サウジアラビアはアップル社をもしのぐ、あるいは欧米の大手石油企業を全て足し合わせても届かないほどの資産をその帳簿に記録しているのだ。

一部のアナリストの質問には「サウジアラムコの凄さは実際どの程度なのか?」という雰囲気も漂っていたが、アル=ダッバーグは同社に注目する人々がしばしば忘れがちな、基本的な点を強調していた。つまりサウジアラムコは、価値のあるコモディティを低コストかつ高効率で生産し、現代の手法と物流で可能なもっともコスト効率の高い方法でそれを市場に投入する、他に類を見ない利益産出機械であるということだ。

さらに、アル=ダッバーグが熱心に強調したように、同社は環境への責任に対する高い意識を持ちながら、こうした業績を達成している。サウジアラムコの原油は、炭素濃度で見ると世界でも有数のクリーンな燃料である。

電話会議の開始から30分ほど経った時、アナリストの一人が新規株式公開(IPO)に言及し、これまで同社の経営陣が見せた中でも、おそらくはもっともはっきりとした反応を引き出した。アル=ダッバーグは「会社ではIPOの準備は整っている」とし、そのタイミングは政府の意向次第であると明らかにした。

とはいえ今回の電話会議を聞いていると、アナリストたちがある重要な部分について真剣な質問をすることを差し控えていることが感じられた。配当方針のことだ。

半年分の財務報告では、サウジアラムコは「株主」、つまりサウジアラビア王国に半年間で464億ドルを支払ったとされている。ここには、昨年度の業績が好調であったことによる特別一時金200億ドルが含まれる。

だが、もしアナリストが(IPOの価値と魅力を決める上で決定的な要素になる)将来的な配当方針について何らかのヒントを求めていたとしたら、落胆したことだろう。アル=ダッバーグは、将来の配当金支払いは持続可能で、無理のない金額で、石油業界の慣行に沿ったものにする必要がある、と呪文のように繰り返すだけだった。

それでも様々な点を考慮すると、同社が自発的には行いえない、しかし来たるIPOに向けて取り組まなければならない仕事の最初の試みとして、今回の電話会議は評価できる。もしジャーナリストによる質問が許されていたら、もっと力強いやり取りが行われ、電話会議全体がさらに興味深いものになったことだろう。サウジアラムコの変化はまだ始まったばかりだ。

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