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COVID-19~世界を変えた100日

サウジアラビア政府は、マディーナとマッカという2つの聖地に24時間の外出禁止令を発令した。上の写真では、今や人気がなくなった広場がマッカのグランドモスクのカーバ神殿を囲んでいる。(AFP)
サウジアラビア政府は、マディーナとマッカという2つの聖地に24時間の外出禁止令を発令した。上の写真では、今や人気がなくなった広場がマッカのグランドモスクのカーバ神殿を囲んでいる。(AFP)
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10 Apr 2020 12:04:09 GMT9
10 Apr 2020 12:04:09 GMT9

中国の武漢市で原因不明の肺炎の症例が発生したとの報告を世界保健機関(WHO)が受けてから、火曜日で100日が経過したことになる。みんながクリスマスに乾杯したり花火を見ながら新年のカウントダウンをしていたときには、肉眼では見えないほんの小さなものによって世界が止まり、我々の暮らしが根底から覆されてしまうことになるなどとは、誰にも想像できなかった。

この「もの」は、WHOが2月12日に「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2」(別名「SARS-CoV-2」)と定義するまで、名前すら持っていなかった。

この最初の100日間は100か月ものように感じられたが、実際にはこの100日はウイルスが引き起こす病気「COVID-19」という不公平なほど強豪な敵を相手とした戦いの、前半の、しかもその最初の5分間にすぎないのだ。そして、どちらが生き残るかを競うこの試合が長く続けば続くほど、味方チームからより多くの怪我人が出るし、これ以上被害が出ないよう手を引くことも困難になる。

公式には世界中で150万人近くがこのウイルスに感染し、これにより85,000人以上が死亡した。国民に検査を実施している国が少なすぎることから、実際の数字はこれより高いと考えられる。

国際労働機関(ILO)では、このウイルスにより今後3か月で1億9,500万人が失業する可能性があるとみている。これに株式市場の崩壊や石油価格の崩壊が重なり、世界経済は回復に何年もかかると考えられる。

世界の半分以上がロックダウンの憂き目にあっている。これはいつ終わるのだろうか? 友達や家族に会えるようになるのはいつなのか? いくつかの研究によると、パンデミックが3月中旬にピークに達した国では夏の終わり頃には終息と推測しているが、実際のところ、それもあくまで推測の話だ。

ファイサル・J・アッバス

世界の新しい現実の社会的な副作用は、永遠とまではいかなくても、かなり長引くことになるだろう。治療法もワクチンも見つからないまま一日一日が過ぎてゆくだけだから悪影響は深刻化するばかりだし、その様子も把握し難いため、暮らしが正常に戻るのに必要な期間も長引いてしまうことになる。

100日前 ... 嫌な人との握手は拒否し、愛する人は抱きしめたものだ。新しい現実では、「逆は真なり」となるか。

100日前 ... 預けた荷物がなければ15分も経たずに空港を出ることも可能だった。だが今や、14日間隔離されなければ最終目的地に辿り着くことはできない。しかもそれは、旅行そのものが許可されていればの話だ。

100日前 ... マスクを付けた男がいたら、警察や警備員から怪しまれたものだ。だが今や、怪しまれるのはマスクをしていない人だ。医療用マスクは防弾チョッキであり、くしゃみをする人はテロリストではないかと疑われ、無差別に発砲するのではないかと恐れられる。

100日前 ... 人が礼拝の場に入るのを妨げたら、重大な人権損害だとみられただろう。だが今や、あらゆる信仰の聖職者が、自宅で祈るようにと信者に呼びかけている。

100日前 ... 「ビッグブラザー」によるデジタル追跡は疑いの目で見られ、家から出られないのは罰されるときだけだった。だが今や、保健当局が次のウイルスホットスポットを予測し、誰が感染者と接触したかを確認できるよう、誰もがありとあらゆる地球物理データを自発的に提供している。

これらすべてに対し、果たして解決策はあるのだろうか? あるのは確かだ。だが問題は解決策があるかどうかではなく、いつ解決されるかということだ。そして、世界がこの暗いトンネルから抜け出るまでにどれだけの命やお金、自由を犠牲にしなければならないのか、ということなのだ。

米国のベテラン外交官であるヘンリー・キッシンジャー氏がウォール・ストリート・ジャーナル紙への寄稿文でこの問題に取り組んでいる。米国の首脳陣に対し、この新型コロナウイルスとの戦いにおいて3つの領域で世界をリードするよう呼びかけた。まず、科学的な取り組みや能力にテコ入れし、医学的解決策を見つける。第二に、世界経済の傷を癒すために努力する。第三に、リベラルな世界秩序の原則を守り抜く。

これは当然のことながら「言うは易く行うは難し」だ。特に、政治が干渉し、世界のことは後回しにして自国を第一に考えようという誘惑に負ける国が多い場合は – それが顕著に表れたのが、WHOを「中国寄り」だとして批判する米国と中国間の口論であり、中国がウイルスに関する情報を隠蔽しているという中傷である。ましてや、ある国に向かう途中の医療機器を他の国が押収するなど、なおさらのことだ。

そんななか、世界の半分以上がロックダウンの憂き目にあっている。これはいつ終わるのだろうか? 友達や家族に会えるようになるのはいつなのか? いくつかの研究によると、パンデミックが3月中旬にピークに達した国では夏の終わり頃には終息と推測しているが、実際のところ、それもあくまで推測の話だ。

「サイエンス・ファクト(科学的な事実)」がないのなら、いつでもサイエンス・フィクションがある。現在我々が耐えぬいている出来事は、スティーブン・ソダーバーグ監督の映画『コンテイジョン』(2011年)に描かれた出来事に薄気味悪いほど似ている。ということは、世界がワクチンを発見し暮らしが正常に戻るまでには、少なくとも1年はかかるということだ!

  • ファイサル・J・アッバスはアラブニュースの編集長である。Twitter: @FaisalJAbbas
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