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世界がイラン抑圧に失敗した今、次はどうなるのか。

首都テヘランで表紙にドナルド・トランプ米大統領の写真が掲載された新聞を見る男性。(AFP)
首都テヘランで表紙にドナルド・トランプ米大統領の写真が掲載された新聞を見る男性。(AFP)
29 Sep 2019 05:09:34 GMT9

ガラスの家に住んでいるなら石を投げてはいけない。イランは周辺国の石油施設を攻撃しても良いが、もし繰り返し攻撃を受けた国々が報復に踏み切れば、イランのインフラは甚大な被害を受けることになる。

イランについては、まるで恐怖と尊敬の対象となるような壮大な軍事力を持っているかのように、議論が誇張されることが多い。イランのリーダーも、このプロパガンダに見合った姿勢を見せている。ほぼ毎日のように彼らに立ち向かおうと考えている者に対し、「全面戦争」を仕掛けるという恐ろしい警告を言い渡している。

だが、イランがこれほど注目されるのは、法に則った文明国が考えもしないような戦略を使うからだ。つまり、世界経済に不可欠なインフラの攻撃、民兵組織を利用した平和な国家の都市に対するロケット発射、国際犯罪ネットワークを通した利益の獲得、そしてテロの支援などだ。民兵組織、サイバー戦争、爆破物を搭載したドローンなどは比較的安価で専門知識をそれほど必要としない。原子爆弾の開発に急ぐイランは、北朝鮮とパキスタンの悪質な集団から得た技術に頼っている。普通の国はその富を国民の生活基準向上に注ぐのだが、イランは外国に対する攻撃のため、資源を食い尽くして国民を飢えさせている。

周辺国は、最近のイランによるテロや妨害行為に対し、欧米諸国が措置を取るのをひたすら待った。トランプは、米国が石油不足による経済破綻の最大の被害者とはならないかのように、軽蔑的に「中東の石油は必要ない」と述べた。2018年、トランプがGCC加盟国に対し、米経済への被害を回避するため石油産出量を引き上げるよう求めた、ツイッター上の癇癪を思い出してほしい。ウクライナ疑惑では、周辺の敵対国が米国の同盟国に与える脅威が何であれ、自由主義国のリーダーがライバルを傷つけ、自身の個人的名声を高めることに盲目的に執着していることが明らかにされた。

欧米諸国は逆機能と分極化により、ますます麻痺が進んでいる。トランプに対する弾劾措置は、国際問題に取り組む余力を全て吸い取るだろう。共和党の介入主義は崩壊し、政権の外交政策機関は容赦なく削られた。7月まで7カ月の間、正式な防衛相が不在で、現在は国家安全保障担当補佐官が空席状態だ。民主党の大統領候補者は国内の問題のみに焦点を当て、本能的にイランとの対話に傾いている。一方、大統領の行動に関する捜査は今後何十年に渡る党派間の争いを煽るだろう。

英国の政治は、ブレグジットを巡り内省的で悲痛な対立に陥り、穏健派議員は主要両党から一掃された。メルケル首相引退後のドイツ政治は、乱雑で分断化されたものになると見られる。不安が広がるフランスでは、マクロン大統領が数少ない中道派として奮闘しているが、150億ドルの制裁緩和を提供してイランとの協議にトランプを引き込もうとした。

何十年にもわたる中道的な世論を経て、遠心力が欧米の政治を過激な方向へと分極化させている。(欧米諸国による手抜き外交の結果)崩壊が進む国からの大量移民は極右勢力を際限なく不満にさせる一方、上流階級に対する国民の信頼の破綻により、政治不安は続く。国際司法裁判所などの国連機関は何の威力も持たない過去の遺物だ。

欧米の孤立主義は、国際的法治、人権、テロ、気候変動、地域紛争、移民問題、エネルギー安全保障と重大なかかわりがあり、恐ろしく自滅的であると論じるのは簡単だ。だが、中道派の多国間主義者は、内向的で排外的な世界観を共通に持つ、広がる極左・極右の大衆主義者に囲まれた少数派であり、このような議論には誰も耳を傾けない。トランプは国連での演説でこう言った。「未来はグローバリストの手にはない。愛国者の手にある。」

そうなればアラブ世界は当分の間、放っておかれることになる。アラブ諸国は欧米の中核となる利益が破壊され、介入が必至となるほどの危機という手遅れの状況になるまで、欧米諸国から真剣で意欲的な政策決定は期待できない。一方その間、中国やインドなど石油に依存している国が自身の利益を守るためだけだとしても、関与を強化するかも知れない。都合よく地域での存在感を高めているロシアは、民兵組織やテロ要素を抑制するなど、より責任ある行動を求められる。

GCC加盟国はイランのレバノン、シリア、イラク、イエメンに対する覇権的野心に閉じ込められ、イランが支援する民兵組織や革命防衛隊によって好き放題に主権国家が攻撃されている。グローバルパワーが自分たちの責任を背負わない限り、アラブ諸国はイランの攻撃を阻止しなければならない。

これは、イランと同レベルのテロ戦略を使ったり、無期限の紛争に陥るというわけではない。そうすれば地域全体を炎に包み込むというイランの目的を達成するだけだ。だが、重要なインフラや民間人への攻撃に対する、意義のある抑止措置は必要だ。

イラクやレバノンなどの国をテヘランの致死的包囲網から引き離すため、強硬な外交手段が必要だ。今夏、イラク国内からロケット弾が発射されたことに対する国民の抗議を受け、憤慨したアブドゥルマハディ首相は民兵組織を一時的に抑制し、その結果イランは自国から攻撃せざるを得なくなった。これらは小さな一歩だが、イラク政府は今後、精力的に宗派系武装集団を決定的に抑制するため、精力的な激励が必要となる。

イランは傷ついているからこそ攻撃しているのだ。そのため、最大限の経済的圧力をかけるという戦略は帳消しにしてはならない。トランプが他のこと気を取られていたとしても、GCC諸国は中国とインドをイラン産石油への依存から引き離すことは可能だ。

イスラエルの攻撃的な拡張主義が70年にも及ぶ紛争を引き起こしたのと同じく、テヘランのアヤトラの長い影の下に平和が訪れることはない。外国の支援があってもなくても、アラブ諸国は結託し、地域の支配と破壊を目指す敵をどのような手段を使ってでも制圧しなければならない。

Baria Alamuddinは中東および英国で受賞歴を持つジャーナリスト兼ニュースキャスター。Media Services Syndicateの編集者で、多くの国家首脳らのインタビューを行っている。

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