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フーシ派による援助物資の戦闘員への横流しが紛争を支えている

国連世界食糧計画(WFP)の援助物資を運ぶ人達。イエメンのハッジャ州アスラムで撮影。(AP写真)
国連世界食糧計画(WFP)の援助物資を運ぶ人達。イエメンのハッジャ州アスラムで撮影。(AP写真)
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01 May 2020 10:05:14 GMT9

イエメン・サーワで今月、イランが支援する反政府武装組織フーシ派とサウジアラビアが支援するアブド・ラッボ・マンスール・ハーディー大統領の率いる政府に忠実な軍事部隊との戦闘が激化したが、この戦闘でフーシ派は武器や所持品を残したまま急きょ陣地を離れた。マリブの西約40キロにあるフーシ派軍事基地の1つでは、政府軍によって食糧袋がいくつも発見された。この中には小麦や油などが入っており、その外箱には国際援助団体のロゴが付いていた。どうやらフーシ派の指導者たちは、これらの援助物資を食料として戦闘員に支給していたようだ。

援助がフーシ派支配地域に入る場合、それがどんな種類の援助であれ、その行く先は確かとはいえない。監督の不注意、手ぬるい監視、そして汚職の蔓延といった理由により、これまでに何百万ドルという援助が消えてしまっているのだ。

脆弱なイエメン市民に割り当てられた援助物資をフーシ派が横流しするか盗むかして自分たちの戦闘員に配給していると聞いても、この段階ではもはや驚くには値しない。イエメン紛争中ずっと起こってきたことだからだ。誰にも答えない事実上の権力として、フーシ派は援助を自分たちの都合がいいように再分配して、自分たちの戦闘員に好き勝手に配給することができるのだ。だが問題は、こうしたフーシ派民兵の行為を完全に監視することができないために、今後もこうした不始末は続くということだ。

フーシ派戦闘員が置き去りにした食糧援助物資のビデオが人権活動家らの手で広く出回って以来、国連世界食糧計画(WFP)は、貧しい人々を対象とした援助を乱用しているとフーシ派を批判した。ビデオ内の物資の包装にWFPのロゴが見られたのだ。WFPとフーシ派との関係はこれまでも決してスムーズとはいえなかったが、WFPはついにフーシ派の不正行為について警告を発するまでになった。WFPのデイビッド・ビーズリー事務局長は昨年、国連安全保障理事会へのブリーフィングの中で、WFP は2018年後半に首都サナアやその他のフーシ派支配地域で「食料援助物資が間違った人々に送られ流用されているという重大な証拠」を見つけたと報告した。サナアの7か所のWFPセンターでは、受益者の最大60%が「支援を受け取らなかったと確認」し、イエメン北部のフーシ派の拠点サーダでは、回答者の33%が2019年4月に食料援助をまったく受け取っていなかったという。さらに、WFPの食料物資を積んだトラックは、一度ならず二度も軍の標的とされた。一度は砲撃によって、もう一度は地雷による攻撃だった。

残念なことに、援助物資が盗まれるということで、援助そのものが縮小されることになってしまった。WFPは今月、フーシ派支配地域に供給していた援助物資の量を半分に削減したと発表した。この決定は突然決まったことではない。WFPはフーシ派に対し、WFPの支援活動に対する抑圧を止めなければこうした措置に訴えると繰り返し警告していたのだ。

フーシ戦闘員はまた、世界保健機関(WHO)からも相当量の援助を受けている。筆者がフーシ派の拠点サーダに詳しいイエメン情報筋から直接聞いた話によると、民間人の医療ニーズに応えるため現地に送られたWHO所属の医師数人が、それとは気付かずに病気や負傷中のフーシ派戦闘員を治療したり手術していたという。どんな情勢においても、フーシ派はその指導者や戦闘員のニーズを最優先し、イエメン市民を優先順位の最下位として置き去りにしているのだ。

この2月、マーク・ローコック人道問題担当国連事務次長は、国連がフーシ派地域で直面している妨害について国連安全保障理事会に報告した。主要報告事項の中には援助物資に2%の税金を課したいというフーシ派の要望もあったが、国連はこれを完全に拒否した。ローコック事務次長は現在、イエメンの人道支援機関に課されている厳しく不公正な制限について再度の警告を行っており、最大の違反者として反政府武装組織フーシ派を名指しで非難している。

援助に関するフーシ派の行為が公に取り上げられることはめったにない。フーシ派は、イエメン国内において必要とされる援助や経済投資はすべて援助機関の責任であると考えている。さらにフーシ派は、地方財源や国際資源を自分たちの不正行為に流用している。教育や保健衛生、経済開発に使うはずの国費を奪い、それを「戦争供出」として自分たち自身に割り当てている。これらの要因がフーシ派を助けてきた。サービスの提供を主に他人の責任として押し付けたまま、戦闘の戦略に集中することができるのだから。

WFPとフーシ派との関係はこれまでも決してスムーズとはいえなかったが、WFPはついにフーシ派の不正行為について警告を発するまでになった。

ファティマ・アボ・アルアスラー

この問題には根本的な解決策が必要だ。マーティン・グリフィス国連事務総長イエメン担当特使は、ハディー政府とフーシ派反政府勢力間の新たな和平会談の準備をしているようだが、それがどんな合意であれ、セーフガードを組み込んで、あらゆる虐待からイエメン市民を保護する保証を取り付ける必要がある。そしてその虐待の定義には援助の盗難も含まれなければならない。

残念ながら、寄付者サイドからのより厳格な監視がなければ、そして人道支援がもっと適切に管理されなければ、援助物資の盗難問題が解決されることはない。フーシ派は、脆弱な人々が切望する援助物資をこれからも戦闘員に横流し続けるだろう。そしてフーシ派はこれを利用して、紛争においても今後の和平会談においても全体的な立場を強化することだろう。断固とした立場をもってこの強欲行為に終止符を打たなければ、脆弱なイエメン市民は今後も苦しみ続けることになるのだ。

 ファティマ・アボ・アルアスラーは、中東研究所(Middle East Institute)の不常勤研究員である。ツイッター:@YemeniFatima

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